今日本の音楽状況は瀕死の状態を彷徨っている。すべては時代や科学技術の変化で、音楽家が唄い演奏し、レコード会社が製作し、町のレコード店が売り出すといった従来の形ではうまく行かなくなっている。そしてパソコンやSNSの進化でもうCDを買う消費行動が変化して、そしてCDは売れなくなった。という事は音楽に従事する多くの人が職を失う事になった。しかし違った見方をすると表現者が自由な発想で発信できる時代になったと本書は言う。その文化のあり方を解くため、新進気鋭のメディアジャーナリストと数々の名盤を世に送り出してきた音楽プロデューサーが徹底討論をしたのが本書だ。「最後は…それでも人は音楽を楽しむ…元々音楽に終わりはない…これまで以上に個を大切にした、個が責任を持った、そして生存を賭けたレーベルがどう生き残って行くのか、我々は期待を込めてその挑戦にエールを送りたい」と後書きにある。実に勉強になる珠玉の一冊だ。(平野悠)