こんな人生に意味などあるのだろうか? 臆病なほどに人の目ばかり気にし、考えながら生きてきたこの人生に。会社を辞め、孤独に疲れていた楢崎の前に現れた女、立花。そして、その女が消えた。彼女を追うと、そこには謎の宗教団体が……人の苦しみや孤独、そして蓋をしては逃げて認めたくない感情を真正面から書いてあります。帯にもありますが今の中村先生の全てが詰まった作品です。語感のリズム、言葉の選択など、一語一句を大切に噛みしめて読んで頂きたいです。あとがきが少し短く、ファンとしては少し寂しいですが、本編とあとがきで二度繰り返される言葉に救われます。読者に金銭的負担をかけたくないと570ページをこえる長編ですが上下巻にせず、1冊にして出版して下さる先生の優しさを知ると、本の厚みが愛おしいです。装幀も素敵ですので、ぜひお手に取って一読頂きたいです。読了後、中村作品を読破したくなると思います!(日野 / LOFT/PLUS ONE)