『孤独のグルメ』の原作者、久住昌之の名作エッセイ、『野武士のグルメ』。本作は『極道めし』等のグルメ漫画家として知られる土山しげるが、久住の原作を短編漫画化したものである。主人公は定年退職を迎えた初老の男、香住武。内容は「土山版・孤独のグルメ」と言えるが、『孤独〜』の主人公、井之頭五郎が「うおォン 俺はまるで人間火力発電所だ」等と宣いながら焼肉ライスを貪る大食漢であったのに対し、香住は年齢的な問題か、割とすぐ満腹になる、野武士とは程遠い人物である。収録作の一篇、『かっこ悪いスキヤキ』は表題だけで久住ファンなら思わずクスリとしてしまうが、本作も久住お得意の飲食店での一人客の葛藤をそのまま漫画にしたかのような心理描写の妙と、土山の思わず紙面にかぶりつきたくなるような瑞々しい食物の数々……。明日の晩メシは場末の中華料理屋で本作片手に、瓶ビールとタンメンのセットなんていかがでしょうか?(LOFT/PLUS ONE:マツマル)