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あかねさす 新古今恋物語 / 加藤千恵

2011.12.05   CULTURE | BOOK

河出書房新社 / 1365yen

 歌人であり、最近は小説家としても活躍する加藤千恵の新刊は、新古今和歌集を題材にして、そこに現代小説と自身の短歌を付けるという、非常に大胆なアイデアの「短歌+短編集」だ。
 例えば、在原業平の「出でて来しあとだにいまだ変らぬに誰が通ひ路と今はなるらむ」という歌は、デートの後のある男性が、恋人が浮気しているのではないかという疑いを否定しきれずに逡巡するというストーリー(短編)に解釈され、最後に「さっきまで俺に向けてた唇で今どんなふうに笑っているの」という著者の歌が付けられている。
 歌というのは千人いれば千の解釈ができるものだが、歌にこめられた「思いの変わらなさ」は、千年以上のはるかな時間を軽々と飛び越えるものだと著者は考えている。
 紫式部の歌を、高校生の主人公が中学校時代の仲良しグループと再会した時に感じた喪失感として物語にしているのは見事な解釈だ。選ばれた20首の和歌が、どんな物語と歌になっているか、古典が苦手な人でも充分に楽しめると思う。(加藤梅造)

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