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蜜の残り / 加藤千恵

2015.03.02   CULTURE | BOOK

角川書店 / 400yen

文庫: 174ページ

 どこにでもいる平凡な人達、しかし彼ら彼女らにはそれぞれの特殊な状況があり、複雑な問題があり、いくつかの選択肢がある。一見普通の人物による物語をユニークに描くことに定評がある加藤千恵による最新短編集はずばり「普通でない恋をする普通の女の子」がテーマだ。一言で「普通でない恋」といってもその<普通でない>程度はいろいろで、彼氏と家出の計画をたてる女子校生、バイセクシャルの同姓を愛する女性など他人にはなかなか言えない種類のものもあれば、27歳の遊び人と付き合う女子中学生、違法な商売に手を染める男との関係を続ける女性のように社会的に罪を問われかねない種類のものまで様々だ。彼女達は多少の不安やうしろめたさを感じながらも、今ある関係を優先する。恋愛とは本来そういうものだと無意識に確信しているかのように。本作がとりわけ“性“と“食“の描写に重きを置いているのは彼女達の生を称揚しているからなのだろう。(加藤梅造)

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