インターネットによってミュージシャンとリスナーの距離は格段に近くなり、レコード会社や流通を通さなくても「一人1レーベル」で音楽を発信して行ける時代。だが、それをどう活用すれば音楽で「お金儲け」ができるのか?とうことは実は本書では言及されていない。結局は「トライ&エラー」でやって行くしかない、数多くのレーベルの起ち上げに携わり、フリッパーズ・ギターのプロデュースと突然の解散を経験しながら音楽業界の内側を見てきた牧村憲一さんもそうやってきたように。音楽業界の権利関係とインターネットとの関わりを、その歴史から現在まで系統だてて解説してくれている本書は、USTREAMやtwitterを実際に使いこなしている現代のミュージシャンにこそ必携の教科書的一冊。そして、伝えるツールや方法論が変わっても、結局生き残って行くのは「音楽を信じる」気持ちを持ち続けた人間だということも教えてくれる。大学生活をバンド活動に捧げて卒業後早々に挫折した自分には耳の痛い話でもある。(阿佐ヶ谷ロフトA こだま)