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平野啓一郎(芥川賞受賞作家)と大島育宙(XXCLUB)が映画『オッペンハイマー』を熱弁!「原爆に対して僕たちが抱く疑問と非常にうまく重なっている」

2024.04.22

クリストファー・ノーラン監督最新作『オッペンハイマー』が、全国の劇場で大ヒット上映中だ。
 
第96回アカデミー賞®で《作品賞》《監督賞》を含む最多7部門受賞となった本作は、第二次世界大戦下、世界の運命を握った天才科学者J・ロバート・オッペンハイマーの栄光と没落の生涯を実話にもとづいて描く作品。2023年7月の全米公開を皮切りに、世界興収10億ドルに迫る世界的大ヒットを記録。実在の人物を描いた伝記映画としては歴代1位となっている。
 

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© Universal Pictures. All Rights Reserved.
 
クリストファー・ノーランが監督、脚本を務め、主演のキリアン・マーフィーほかエミリー・ブラント、マット・デイモン、ロバート・ダウニー・Jr.、フローレンス・ピュー、ジョシュ・ハートネット、ケイシー・アフレック、ラミ・マレック、ケネス・ブラナーらが出演。ノーランは、IMAX®65ミリと65ミリ・ラージフォーマット・フィルムカメラとを組み合わせた、最高解像度の撮影を実践。
また、本作のためだけに開発された65ミリカメラ用モノクロフィルムを用い、史上初となるIMAX®モノクロ・アナログ撮影を実現。IMAX®撮影による、天才科学者の頭脳と心を五感で感じさせる極限の没入体験を味わえる作品となっている。
 

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© Universal Pictures. All Rights Reserved.
 
3月29日に日本公開を迎えた『オッペンハイマー』は、IMAX®ではクリストファー・ノーラン監督作品史上週末最高記録、興行収入は今年公開の洋画唯一となる10億円を突破、4週連続で洋画ランキング1位となる大ヒットを記録。SNSでは絶賛の声があふれ、映画ファンだけではなく幅広い客層へと支持が広がっている。
ノーラン監督こだわりの映像をさまざまなフォーマットで鑑賞するリピーターも続出。先日、告知当日に定員に達して話題となったIMAX®、Dolby Cinema®、35mmフィルム版を1日で堪能する3フォーマット制覇バスツアーが開催された。
 
このたび、日本での大ヒットを記念し、4月19日、小説家の平野啓一郎、XXCLUB大島育宙をスペシャルゲストに迎え、『オッペンハイマー』公開記念トークイベントが行なわれた。

『オッペンハイマー』公開記念トークイベント概要

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■日時:4月19日(金)18:30の回  上映終了後
■会場:新宿バルト9  スクリーン8
■登壇者:平野啓一郎(小説家)、大島育宙(XXCLUB) ※敬称略
 
4月19日(金)、新宿バルト9にて『オッペンハイマー』公開記念トークイベントが行なわれた。
スペシャルゲストには、「現時点での最高傑作かもしれない。史実に基づきつつ、過去作の様々な主題が緻密に、重層的に構成されている」とXに投稿した芥川賞受賞作家の平野啓一郎(『マチネの終わりに』、『ある男』、『本心』)、日本公開前に『オッペンハイマー』を観るためオーストラリアを訪れ、「核実験の場面の恐怖と迫力だけでなく量子や宇宙のイメージと心理の過剰なカットバックは人間に興味が増してきたノーランの新境地」と語り、既に4回も鑑賞済みのXXCLUB大島育宙が登壇。二人は、クリストファー・ノーラン監督最新作『オッペンハイマー』をどう受けとめたのか、イベントレポートをお届けする。
 

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上映終了後、興奮冷めやらぬ観客から盛大な拍手で迎えられた二人。幅広い年代層の男女に『オッペンハイマー』の鑑賞回数を尋ねると、初鑑賞が最多ながら、2回目、3回目でも手があがり、中には4回、5回目という猛者も。
 
映画の感想を問われた平野は、『オッペンハイマー』は「現時点でのノーランの集大成。出世作の『メメント』以降、『バットマン』などで取り組んできた主題が作品のなかでトレースされている」と断言。「ノーランといえば時間についての彼の独自研究のようなことをみなさん思いつくと思います。映画は時間芸術なので始まりと終わりがあります。最後に結果があり、その起点となる原因や動機があり、その因果関係で時間芸術としての物語を成しています。ところがノーランは、『メメント』では結果に対して原因・動機に合理的な因果関係があるのかという疑いを、『インセプション』では、ある動機に基づいて行動するとき、その動機が内発的なものではなく外側から植え付けられたものではないかということを描きました。そのような因果関係に対する彼の懐疑が、『オッペンハイマー』では、原爆に対して僕たちが抱く疑問と非常にうまく重なっていました」
 

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続いて大島が、「トーンとしては、オッペンハイマーの罪をどれだけ贖罪しても償いきれない罪として描いている。平野さんがお話された原因と結果、時系列の操作という部分にもつながってきますが、作品が円環構造になっている。映画の最初の場面と最後の場面が重なるようになっていて、オッペンハイマーのアップで始まって終わる。オッペンハイマーという人物をこの罪から逃さないぞというような描き方」だと指摘した。
 

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原作も読み込んでいる二人は、原題の「アメリカン・プロメテウス」に触れ、平野が「ノーランはプロメテウスになぞらえるようなオッペンハイマー観を皮肉的な目線で見ている」と指摘、大島は「人間の生活に欠かせない火をもたらしたプロメテウスだが、原爆の開発をそれになぞらえるのは迂闊。そこにノーランが乗っかっているかいないかという視点は重要だがあまり語られていない」と応じた。
 
ノーランの全作品を観返したという平野は、「2000年代は敵を悪魔化して戦争を正当化するような言説があったが、『ダークナイト』トリロジーなどを観ていると、ノーランはアメコミのヒーローを使って“悪との戦い”というものを非常にまじめに考えていた監督。どれだけダメな社会に見えてもそれを全滅させてはいけない。バットマンという超法規的な存在が悪と戦うが、最終的には、バットマンがいることでジョーカーのような存在が出てくるから、市民社会が自立的に対処しなければいけないという終わり。そういった“必要悪としての正義”の描き方がある意味でオッペンハイマーにも反映されている。その意味ではノーランはオッペンハイマーに対して懐疑的なところがあるのではという印象を受けました」と、ノーランが描き続けてきたテーマに言及した。
 
イベントの結びには、もう一度観るとしたら注目ポイントはどこかという問いに、平野は「過去作を見ると、あの主題が『オッペンハイマー』に反映されているなという部分も多いので、特に『ダークナイト』トリロジーを観てからだと気が付くことが多いと思います」と強調、大島が「1回目の鑑賞では『なぜこんなに複雑に?』と感じられる方もいるかもしれないが、何度も観ると、丁寧なわかりやすい作り方であるということに気が付く作品。何度も観ることで時系列をシャッフルすることの意味がわかります。劇場でいろいろな形式で観ると感想が変わってくる作品かなと思います」と締めくくった。この後、白熱した二人のトークは、フォトセッション中も続いた。
 
最高画質のIMAX®で撮影された『オッペンハイマー』がもたらす極限の没入感を、ぜひ、映画館でお楽しみいただきたい。
 

商品情報

映画『オッペンハイマー』

監督・脚本・製作:クリストファー・ノーラン
製作:エマ・トーマス、チャールズ・ローヴェン
出演:キリアン・マーフィー、エミリー・ブラント、マット・デイモン、ロバート・ダウニー・Jr.、フローレンス・ピュー、ジョシュ・ハートネット、ケイシー・アフレック、ラミ・マレック、ケネス・ブラナー
原作:カイ・バード、マーティン・J・シャーウィン 「オッペンハイマー」(2006年ピュリッツァー賞受賞/ハヤカワ文庫)
2023年/アメリカ 配給:ビターズ・エンド  ユニバーサル映画 R15
© Universal Pictures. All Rights Reserved.
IMAX® is a registered trademark of IMAX Corporation.
Dolby Cinema® is a registered trademark of Dolby Laboratories.
全国の劇場で大ヒット上映中

【ストーリー】
第二次世界大戦下、アメリカで立ち上げられた極秘プロジェクト「マンハッタン計画」。これに参加したJ・ロバート・オッペンハイマーは優秀な科学者たちを率いて世界で初となる原子爆弾の開発に成功する。しかし原爆が実戦で投下されると、その惨状を聞いたオッペンハイマーは深く苦悩するようになる。冷戦、赤狩り―激動の時代の波に、オッペンハイマーはのまれてゆくのだった―。

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