“ライブからライブへとライブを繋ぎ、ライブに生きる”という意味合いがタイトルに込められている『LIVE to LIVE』。
2回目の開催となった今回は、出演の3バンドそれぞれが企画者の思いを汲み取りMCでも触れて語ることで、その思いがどんどん熱を帯び会場内に広がっていくのが目に見えて分かる夜だった。お目当てのバンドがいたという方でも、終わってみれば最後には胸アツな時間を新宿LOFTで過ごせたと確信している。それでは出演順に各バンドのライブとアンコールでのコラボレーションまでを振り返ってみよう。
ビレッジマンズストア
19時きっかりに暗転し、“はいはい、最高の火曜日が始まるぜー!”とフルスロットルのテンションでステージに登場したのは名古屋からやって来たビレッジマンズストア。「夢の中ではない」のスタートから“聞こえねーよ!”と客席を煽りまくる。“おいおい、集まってんじゃねーかよ!?”とボーカル・水野ギイが平日にもかかわらずフロア内に集まった多数のお客さんを見てちょっと本気で驚きつつ、“こんなにやかましい火曜日は初めてかもしれません!”とも。
立て続けに「People Get Lady」でモンキーダンス、「セブン」で手を挙げジャンプ、「逃げてくあの娘にゃ聴こえない」でヘドバン、1曲ごとの動きに会場内の一体感も1バンド目から最高潮! 圧倒的な轟音を響かせながら時にフロアにも飛び出しつつ繰り広げられるライブに、後方で見ていたおそらく他バンドがお目当てのお客さんも1人また1人と釣られるようについつい前へ。そんなこの日は出演3バンドのオリジナルカクテルを楽しむことができたのだが(終わってみれば売切御礼とのこと)、ビレッジマンズストアのオリジナルカクテルはその名も「鶴舞線」…“鶴舞線じゃ不戦敗だと耳障りだ”の歌詞がある「WENDY」にちなみ、地元・名古屋の地下鉄の路線カラーと同じ青色に染まったアルコール飲料。“そんなことまでしてくれるライブハウス、あるかい? 自分たちのことを考えてくれて嬉しい!”と語った上、“実は今日の3マンは「ヒーロー」がテーマらしくて。誰かの何かを少しでも動かせたのかな、と思うと、やってきて良かったなと思う。お前が必要な時に目の前に居られる存在、それがロックヒーロー。これからもオマエ目掛けてやっていくから、よろしく!”…確かに「ヒーロー」がこの日のテーマでもあった、というのは続くレポートで。
彼らのカラーでもある赤のライトがメインに照らす中ものすごい熱気に包まれ瞬く間に終了。今回の持ち時間は各バンド45分だが、まるで彼らのワンマンを見終わったかのような時間であった。
THEイナズマ戦隊
ビレッジマンズストアより先輩の通称・イナ戦。あの熱狂に続いてライブをするのは大変だろうと思ったのは全くの杞憂で、「GLORY DAY」でスタートするや自分たちの空気感に変えてしまうのはさすが。“ライブハウスにお越しの皆さま、ようこそ!”とボーカル・上中丈弥がキリッと一言、今日は大人の余裕で攻めるつもりか…? と思ったのも束の間、やはり(笑)喋る喋る。“今日は「ヒーロー」を集めた、いいイベントで。だけど俺らは(バンド名に)「戦隊」って付いてるから呼ばれたのかもしれんけど!”で笑わせ、ビレッジマンズストアのライブを受けて“俺らにはヘドバンできるような曲はないわ”と言いながら「愛らしいじゃない」で自らヘドバンをはじめ、イナ戦の曲で客席でもヘドバンが起こるのが最高!
今年4月でバンド結成から27年目を数えるそうだが、“自分たちでも27年もバンドを続けるとは思ってもいなかったし、バンドが続くのは当たり前のことじゃない”といったことを語った上で、“愛とありがとうは、ちゃんと伝えないと”のメッセージを放ち「33歳」へ。幼い頃に父を亡くした上中が書いている歌詞と、“愛とありがとうを伝えないと”のメッセージが相まって心にグッと突き刺さる。今日のこの日・こういうイベントができていることに対してありがとうと思ったし、ここにいられるということも当たり前のことではないのだと曲を聴きながらしみじみ思わされた。
“お父さんに(対して)歌っているけど、ズタボロでもいいから前に進んで死ぬまでムチャクチャ生きてやろうと思います!”と、あの場にいた誰もが感動している中で最後は180度一転し、“死ぬほどアホくさいエエ曲です!”とラスト曲の「Let's go NIPPON」へ。 “がんばれ がんばれ 負けるな友よ”といった歌い出しに初めて聴く曲でも全員の拳が上がっていた。メンバー全員で深く礼をしてステージを去り客電がつくと、“涙が止まらない”と言いながら完全に涙目の企画者がいたのはここだけの話。
忘れてモーテルズ
“ロフト、大っきいね! 俺たち今日は、ロフトが似合う男になるぜ!”とドラム&ボーカル・283(ツバサ)が叫び「リンダリンダリンダ」からスタート、その表情には溢れる笑顔。“ビレッジマンズストア! そして、THEイナズマ戦隊! なろうぜ、なろうぜ、俺たち!”と言ってから「カッコいいおっさん」へ、“あんたは十分カッコいいぜ おっさん”のサビを聴きながら、本当に良きこの日これまでのライブが走馬灯のように脳内を駆け巡る。横浜がホームという彼ら、2024年・東京での初ライブということで正月気分のように浮かれていくといったMCもありつつ、“今日のテーマは「ヒーロー」ということで。でも俺は、妖精寄りの存在かな?”というMCには大爆笑。“酒クズの街がたくさんある横浜で、酒の妖精がぶらぶら歩いてるかも”と語っていたが、ステージではメンバー3人見事なまでのバンドグルーブ、個人的に初見ながら音とトークのギャップにやられてしまう。
さて何度も出ている「ヒーロー」のワードだが、企画者曰く「心のヒーローバンド」が今回の密かなサブタイトルだったそうだ。“ステージから届けてくれる歌声や熱い言葉に励まされ、時に涙する、まさに心を救い上げてくれたヒーローバンドを集めたのが今回”とのことで、283がこの日を総括するように最後にこんなことを語っていた。“楽屋にね、企画者からの手紙が置かれてたの…(おそらくだが、企画者なりに自分の思いを文字でしたためた内容だったのだろう)。こんな俺たちでも、誰かのヒーロー。だから逃げちゃいけない、これからも良いライブをやるから。誰かのヒーローであり続けるために、絶対に負けねーから!” …この日一番の声を張り上げて283が宣言する。
ただ単にこの3マンが開催されても、面白い組み合わせだから見たいという方は多くいらっしゃるだろう。だが単なる3バンドが集まったライブ企画ではなく、企画者が企画に込めた自らの思いをきちんとバンドに伝え、出演者全員がその思いをしっかりと受け取って、その上でライブを展開してくれた。その熱量がしっかりと客席にも伝わって目頭が熱くなる思いだったし、思いを持って取り組んだ先にはこんなに素晴らしい景色をたくさんの方と共有できるのだなと感じた。今回はレポートを担当する者として文字で伝えるべく頑張ってはみたが、間違いなく身体を通してしか感じられないあの空気を今後『LIVE to LIVE』が開催される時にはぜひ、新宿LOFTで体感して欲しいと思っている。
忘れてモーテルズのライブが終わりメンバーが一度ステージを降りた直後、わたしはバーカウンターへ。忘れてモーテルズのオリジナルカクテル「我酒(わしゅ)れてモーテルズ」をオーダー、“他のバンドはヨーグルトリキュールやマンゴー風味でオシャレなのに、俺たちはキンミヤ(=焼酎)だよ! そんなに酒好きだと思われてんのか…って、大好きですけど!”と、MCで紹介していたカクテルには塩昆布も入って他の2バンドのオシャレ感と比べると確かに渋めなアルコールだが、塩昆布がいいアクセントで実にクセになる1杯だった。
そちらを片手に楽しむアンコール、忘れてモーテルズが最後の最後に“今日のヒーローたちにもう一度会いたくありませんかー?”と煽り、客席から大きな拍手が湧く中で2バンドのメンバー全員がステージへ。“本編で今からやる曲を演ってたよな? 楽屋がザワついてたで!”とイナ戦・上中が語る通り最後にもう一度、本日の出演者全員で「ナンシーウイスキー」。ステージ上も会場内も笑顔がいっぱいで、最後は親指と小指を立てジョッキに見立てるポーズで全員で乾杯。283の“うま〜い”のひと声にもこの日が最高だったことが表れていた。
3バンドのフロントマン3人が代表して前に出る形で、最後の最後は3人が手を取り頭を下げる。明日はまだ水曜の平日だけど、何ならこのままライブが続こうが二次会に突入しようがご一緒しますよ! と思うほどにこの日が続いてくれれば良いなと思えた時間だったし、出演バンドより歳上でいい歳なのに青くさいことを書くようだが、このライブを活力にまた次のライブまで生きていける…まさに『LIVE to LIVE』のタイトル通りに思えた夜だった。会場後方で見守っていた新宿LOFT店長が終わって一言、“忘れていたものを思い出させてくれるような感じだね”としみじみ語ったのがとても印象深い。思いを持って動くこと、そしてその思いをちゃんと伝えること。それは年齢うんぬんの話ではないよな、とこの日のイベントを通して襟を正すような思いで帰路についたのであった。[Text:高橋ちえ(@djchie)/ Photo:Seina Fujimura(@seina_fr)]
『LIVE to LIVE vol.2』セットリスト
【ビレッジマンズストア】
1. 夢の中ではない
2. ビレッジマンズ
3. People Get Lady
4. セブン
5. 逃げてくあの娘にゃ聴こえない
6. サーチライト
7. 帰れないふたり
8. WENDY
9. PINK
【THEイナズマ戦隊】
1. GLORY DAY
2. WABISABIの唄
3. 喜びの歌
4. 愛らしいじゃない
5. 今の俺にとっちゃお前が全て
6. My Generation
7. 33歳
8. Let's go NIPPON
【忘れてモーテルズ】
1. リンダリンダリンダ
2. 嗚呼、ミュータント
3. カッコいいおっさん
4. さよならの歌
5. 働け!!ろくでなし
6. 暁、夜明け前
7. 裸足の少年
8. ナンシーウイスキー
9. パレードが迎えにきたよ
en.1 僕らの世界
en.2 ナンシーウイスキー(コラボ)