日本アカデミー賞作品『新聞記者』や、官邸政治の闇を描いた『i-新聞記者ドキュメント-』など、世に訴える映画を手掛けてきたスターサンズと、邦画史上初となる現役総理大臣のドキュメンタリー『パンケーキを毒見する』の内山雄人監督&制作スタッフが、今まさに、満を持して“日本の真の影”に切り込む政治ドキュメンタリーを制作。『妖怪の孫』が本日3月17日(金)より新宿ピカデリーほか全国公開となる。
構想2年、安倍政治の総括とともに、決して大手メディアでは描くことができない、ニッポンの姿、そしてその根本にあるものをブラックユーモアや風刺絵本とともに紐解いていく。安倍元首相やその背景を改めて検証することで、今の自民党や岸田政権が果たしてどこに向かおうとしているのかを、見極めようとする作品となる。
本作の公開を記念して、公開前日となる3月16日(木)に新宿ピカデリーにて、旧統一教会問題などを取材し続けているジャーナリストの鈴木エイト、本作の企画プロデュースを担当、元経済産業省の官僚で現在は独立の立場で政策提言を続けている古賀茂明、そして本作のメガホンをとった内山雄人監督を迎えた、公開前夜祭舞台挨拶が行なわれた。
映画『妖怪の孫』公開前夜祭舞台挨拶
【日時】2023年3月16日(木)イベント/19:00~
【場所】新宿ピカデリー スクリーン3(新宿区新宿3-15-15)
【登壇者】鈴木エイト(ジャーナリスト)、古賀茂明(企画プロデューサー)、内山雄人監督
くしくもこの日はWBC準々決勝当日。ちょうど「侍ジャパン」がイタリア代表と対戦中という時間帯と重なったが、会場内には大勢の観客が来場。その様子を見た古賀が「WBCなんで誰も来ないかと思っていました」と安堵した表情を見せると、鈴木が「これが映画デビュー作となります。古賀さんに声をかけていただいて出演することになりました。僕は普段、テレビとかでも全然緊張しないんですが……今日も全然緊張してないです」と初の映画舞台挨拶ながらも、軽妙なトークで挨拶。さらに内山監督も「野球を観なくて良かったんですかと心配になるくらいですが、今日は来ていただけて良かったです」とホッとした様子を見せた。
菅元首相を題材としたドキュメンタリー映画『パンケーキを毒見する』のヒットにより、同作の河村光庸プロデューサーは「次は本丸(安倍元首相)だ」と意欲を見せたというが、昨年の6月11日に心不全のために急逝。それでも河村プロデューサーの遺志を継いで作業を進めていたという内山監督は、「簡単にやれるものではないですけど、やはり映画にする以上は証拠になる映像がなければ、ということでいろいろと二転三転したということです」と述懐。
そして本作で企画プロデューサーを務めている古賀は「河村さんとは以前から安倍さんを(テーマにしたドキュメンタリーを)やりたいという話をしていて。電話がかかってくるといつも2時間、3時間ずっと話し続けていたんです。でもあるとき河村さんと話した時に20分で終わったことがあって。そうしたら次の日に亡くなってしまったんです。ただ口癖のように『これをやらなかったら死んでも死にきれない』とおっしゃっていたので。だからその遺志を継がないといけない。自分ならお手伝いができるかなと思い、やらせていただきました」と本作に参加した経緯を説明。内山監督も「精神的支柱だった河村さんが亡くなったということで。古賀さんに遺志を継いでほしいと思いました。河村さんが亡くなる前日にもお話をしていたということなので、縁があるんじゃないかなと思いました」と付け加えた。
大きな社会問題となった、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)と政治家とのつながりにも果敢に攻め込んだ本作。その背景を解説するために、鈴木が出演している。その経緯について「この映画って、お願いした代議士には全部断られたんです。テレビに出ているような元官僚たちにも断られて。その断られ方は『パンケーキを毒見する』以上だった。だから古賀さんを通じてエイトさんに出ていただけることになって良かった」と語った内山監督。鈴木も「映画では、自民党の政治家に統一教会がどう関わってきたのかを説明したんですが、それをうまく拾ってうまくまとめていただいた。この映画を観れば、(旧統一教会と安倍さんに)どういう関係性がつむがれてきたのか、分かるようになるんで、この問題を知るためのガイドラインになると思いますね」と太鼓判。
本作のタイトルは安倍晋三元首相の祖父であり、「昭和の怪物」と呼ばれた岸信介元首相から来ている。内山監督が「直近にある統一教会の問題も、背景にある岸さんの時代から見ると全部つながってくる。これを見ると、直近の問題に対する答え合わせができるんじゃないかと思う」と自負すると、古賀も「映画には自分も知らないことがたくさんあって。安倍元首相の幼少期がどういう感じだったのかなども描かれていたし、(安倍元首相の地元)下関がどうなっていたのか、なども映し出されて面白いんですよね」とコメント。
現在は、放送法の政治的公平性に関して記された総務省の行政文書について、高市元総務大臣が「ねつ造だ」と反発をするなど、世間を騒がせているタイムリーな話題となっている。古賀は「ちょうど今、高市さんが騒がれていて。僕のところにも取材が来ていますけど、(本作に)この話が入っているというのは、(監督は)知っていたの? と驚いてしまうほどですが。こんなことになるなんて思いもよらなかったですね」と驚きを隠せない様子。鈴木も「自民党が(政府に批判的な番組を)すべてチェックしていると言っていましたが、統一教会もすべての番組をチェックしていると言っていた。そういう意味では自民党も統一教会も同じ事をしているんだなと思います」と言及した。
「大手メディアでできないことをやろう」というのが本作の命題だったという。内山監督も「安倍さんが亡くなったのになんでこんな映画をつくるんだと言う人もいますけど、ここでは皆さんの知らない安倍さんをお見せしようというのが狙いなので」とコメント。鈴木も「自分も事実を提示して、あとの判断は皆さんでどうぞというスタンスをとっていますが、これもそう。安倍さんを冒瀆(ぼうとく)するのではなく、事実を提示して、そこから判断をしてもらえたら」と語った。
いまだ多くの熱狂的な支持者がいる安倍元首相だけあって、本作に反発する人の声もあるという。「何かがあったらいけないということで、この日も警備を配置し、警察にも来ていただきました」と明かした内山監督は、「だから皆さんはホットな場所にいるんですよ」と冗談めかして付け加え、会場を沸かせた。
会場には大勢の観客が集結し、好調なスタートを切ったが、「劇場はボランティアではないので、やはり明日以降も来ていただいて、利益が出ないと上映はできない。ですからぜひお友だちに拡散してください」と呼びかけた古賀は、「(安倍元首相の地元の)山口県の映画館では上映できなさそうということで、仕方がないので、自主上映したいという声もあがっていますが、やはり皆さんの声で、うちの近くの映画館でやって、と声をあげていただけたら」とメッセージ。内山監督も「この映画は今、どうしても観てほしい映画。今の岸田さんがやろうとしていることが、岸さん、安倍さんにつながっていて。だからこそ今、見るべき映画だと思います。皆さんが観たいという声をあげてくれることで、少しずつ変わってくるかもしれない。少しずつ声を形にしていただけたら」と会場にメッセージを送った。
商品情報
映画『妖怪の孫』
企画:河村光庸
監督:内山雄人
企画プロデューサー:古賀茂明
ナレーター:古舘寛治
音楽:岩代太郎
アニメーション:べんぴねこ
2023年/日本映画/115分/カラー/ビスタ/ステレオ
製作:「妖怪の孫」製作委員会 制作:テレビマンユニオン 配給:スターサンズ ©2023「妖怪の孫」製作委員会
3月17日(金)より、新宿ピカデリー他、全国公開