12月8日、ジョン・レノンの命日に、映画『ジョン・レノン~音楽で世界を変えた男の真実~』が池袋シネマ・ロサにて封切られ、上映後に藤本国彦(ビートルズ研究家/本作字幕監修)をゲストに迎えたトーク・イベントが開催された(司会は俳優の南 圭介)。
藤本:デビュー前のビートルズを描いた映画はけっこうあり、関係者が証言するドキュメンタリーが多いのですが、その関係者が友だちの友だちの友だち──といった方が多い中、この映画は監督の思いもあり、より相応しい人の話を伺おうということで製作されています。ですから、今まで出てきたことがないような人、小学校や、クオリーバンク・スクール、リヴァプールの美学校の同級生の<ジョン・レノン観>が証言として出てきますし、今まで聞いたことのないようなエピソードも多く、刺激的でした。ジョンは1980年に40歳で亡くなってしまって、<愛と平和の人>というイメージが強いですけど、10代までは本当に不良といっていいヤンチャな人、でも内面は凄く繊細──というところが生々しく伝わってきます。若き日のジョン・レノンを描いたドキュメンタリーとしてはとても良くできた作品だと思います。
ジョンのヤンチャぶりが数多く語られ、それゆえ嘘のない、ジョンならさもありなんというエピソードが続出する。警戒心が強く好き嫌いが極端、しかし一度心を開くと長きに渡る友人となる。ビートルズとして成功した後も、『ロックン・ロール』のカヴァー写真を撮ったユルゲン・フォルマー、『リヴォルヴァー』のカヴァー・アートワークを手がけたクラウス・フォアマンなどとの交流は続く。
藤本:ジョンは頭は切れるが学校の勉強はしない。けれどもジョンの絵の才能を認めた先生など、<見る目のある人たち>がその才能を救ってきたと思います。
南:そういったいろいろな人たちとの出会い、生い立ちがけっこう長く描かれています。
藤本:監督がリヴァプールの人だというのもあって、他のドキュメンタリーと違い、その辺りがしっかり作られています。イングランドにおけるリヴァプールの位置付けや、虐げられた中をユーモアで乗り切った──という発言も含め、<リヴァプール/アイリッシュ>というジョンの生まれ持った、権威的なものに対する反逆心、思ったことを全部言ってしまうという明け透けな部分も描かれています。
南:そういったものがずっと貫かれているのもジョンの魅力だと思いますし、現代にも居て欲しい感じはあります。
藤本:ジョンの言葉は強いので、ジョン・レノンが生きていたら、この現代において間違いなくヨーコとショーンと一緒にメッセージを出していたでしょうね。「ギヴ・ピース・ア・チャンス」や「オール・ユー・ニード・イズ・ラヴ」といった人を惹きつける言葉を持ち合わせた人なので。
映画では、ジョン・レノンの幼い頃からの愛する大事な人たちとの別離や、それを乗り越えてきた彼の、その時々の様子も生々しい証言で描かれ、<ジョン・レノンの弱さと強さ>を窺い知ることができる。
藤本:これまで知らなかったエピソードや、文字で読んだだけの人のインタビューとかが次々出てきます。この作品もそうですが、今年はビートルズ関連のドキュメンタリーに優れたものが多く、先日公開された一人の青年がインドでビートルズと過ごした8日間を描いた『ミーティング・ザ・ビートルズ・イン・インド』や、ビートルズ来日公演にフォーカスした『ミスタームーンライト〜1966 ザ・ビートルズ武道館公演 みんなで見た夢〜』が年明けに公開されます。本当にビートルズは考古学の発掘のように、掘れば掘るほどいろいろなものが出てきます。先日の『リヴォルヴァー』でもリンゴのテーマ・ソングのような「イエロー・サブマリン」のジョン・レノン・ヴァージョンも出るなど発見があるので、長生きしなきゃな、と(笑)。今日は初日ですが、今日だけと言わず二回三回と観ていただきたいと思います。パンフレットも珍しい写真が載っていますので、ぜひ。
南:本日のゲストは藤本国彦さんでした。ありがとうございました。
藤本:ありがとうございました。
池袋シネマ・ロサでの『ジョン・レノン~音楽で世界を変えた男の真実~』の上映スケジュールの詳細はこちら。
12月17日(土)14時の回上映終了後にはピーター・バラカン(ブロードキャスター/本作字幕監修)をゲストにトーク・イベントが予定されている。