人間椅子が5thアルバム『踊る一寸法師』(1995年発表)の再発を記念して、2022年春に7カ所に及ぶ全国ツアー「『踊る一寸法師』再発記念ワンマンツアー」を決行。ファイナルのZepp DiverCity公演はコロナ禍のガイドラインに沿う形で行なわれ、無事にツアー千秋楽を迎えた。この日もソールド・アウトとなり、幅広い層の観客が詰めかけていた。
SE「新青年まえがき」が流れると、和嶋慎治(G/Vo)、ナカジマノブ(Dr/Vo)、鈴木研一(B/Vo)の順番にステージに姿を見せ、1曲目は「モスラ」でスタート。この曲は鈴木がボーカルを務めるミドルテンポのナンバーで、緑のライトも曲調の雰囲気を盛り上げる。また、和嶋による不可思議なギター・ソロも映えており、オープニング曲として予想以上のハマリ具合であった。続く「ギリギリ・ハイウエイ」では和嶋がボーカルを取り、テンポいいリフも相まってフィジカルを強烈に揺さぶってくる。途中、和嶋と鈴木が寄り添い、同じ動きで楽器を弾く場面もあり、SCORPIONSばりのフォーメーションでも会場を沸かせた。
「『踊る一寸法師』再発ツアーということで、当時の1曲目、2曲目の再現をしてみました。『モスラ』は25年ぶりに演奏しましたよ。次に聴けるのは25年後です」と鈴木が言うと、「なかなか手に入らなかった、あのプレミアムな『踊る一寸法師』が再発の運びとなりましたよ。今日は生配信(*海外 / 日本と有料生配信)をしております。無駄に盛り上がっていきましょう!」と和嶋は呼びかけ、昨年8月に出た最新22thアルバム『苦楽』のラスト曲「夜明け前」をプレイ。中盤、「ドンドンパン!」とQUEENの「We Will Rock You」ばりのドラムと共に「燃えろ 燃えろ 日の光」の歌詞が追いかけると、観客はハンドクラップで参加。ストーリー性豊かなドラマティックな曲展開といい、暗い世の中に希望の光を射し込む至福の名曲と言っていい。
「巌窟王」を挟んだ後、次は「どだればち」へ。全編津軽弁を用いた歌詞を鈴木が歌い、「あら、どしたぁ〜」と和嶋が合いの手コーラスを入れる。さらに祭りっぽいドラムや三味線ギターも効果てきめんだ。トレンドに左右されず、我が道を歩んできた人間椅子を象徴する土着型ハード・ロックに大勢の観客が酔いしれていた。演奏後、「ありえないくらいギター・ソロをやった」と和嶋は申し訳なさそうに告白。LED ZEPPELINのごとく即興演奏で尺が伸びるのは、ライブの醍醐味である。
そして、ダブルネックの12弦ギターに持ち替えると、「時間を止めた男」を披露。叙情的かつブルージーなギターで締め括る流れも秀逸であり、思わず聴き入ってしまうほど。「こんな近未来になったら嫌だなと思って作った曲」と和嶋が説明し、「泥の雨」に移る。雪崩を打つようなヘヴィさに耳を奪われ、これがまたインパクト絶大の楽曲で引き込まれた。
「瀆神」をやり終えると、「ちょっと休みながらやろう」と鈴木は切り出す。『踊る一寸法師』は、最短の7日間でレコーディングしたと当時を振り返っていた。そのMCを椅子に腰掛けて興味深く聞いている観客を見て、「DEEP PURPLEの1972年のコンサート、『LIVE IN JAPAN』みたい」と和嶋はコメント。
中盤に差し掛かり、ここで「踊る一寸法師」をプレイ。BLACK SABBATH譲りのおどろおどろしいヘヴィネスと、時折挟まれる高笑いが不気味さを誘う。陰鬱としたスロー・ナンバーに背筋がゾクソクするような興奮を覚えた。さらに「暗い日曜日」とダークな曲調が続く流れに、「暗い曲ばかりですねぇ」と和嶋が一言。それから再び『踊る一寸法師』リリース時を振り返り、人間椅子の中で唯一のインディーズ作品だったこともあり、「自由に歌詞を書ける!」と思ったそうだ。加えて、和嶋と鈴木の2人はあの頃はZeppクラスの会場に立つとは、夢にも思っていなかったとしみじみと語る場面もあった。
そして、「報われない人の気持ちを歌った曲」と告げ、「無情のスキャット」へ。激重リフが場内に轟くと、1、2階席とヘッドバンギングに励む観客で溢れ、「シャバダバディア〜♪」のパートではフロアから無数の拳が突き上がる。もはや不動のメタル・アンセムとして、ライブで聴くたびに楽曲が大きく成長を遂げているような聴き応えがあった。
「たくさんのみんなの前でやれるのは幸せだね! お客ちゃ〜ん!」とナカジマが煽ると、自らボーカルを務める「至上の唇」が炸裂。エネルギッシュな歌声と演奏で会場を明るく照らすと、本編は残り2曲となった。勇壮な高速リフにシビれる「幸福のねじ」、BUDGIEの日本語詞カヴァー「針の山」でクライマックスを迎える。
アンコールに応えると、「また暗い曲をやらせてもらいます」と鈴木。ベース始まりの「エイズルコトナキシロモノ」は淡々と進む味わい深い曲調だが、ギター・ソロで場面展開するアレンジも最高。次の「なまはげ」では三味線ギターが再び火を噴き、ナカジマによる銅鑼の乱れ打ちにも大興奮。今ツアーはWアンコールも用意されており、ラストはスピーディーなショート曲「ダイナマイト」でトドメのフィニッシュを決めた。
今回は『踊る一寸法師』再発記念を踏まえ、同アルバムから全10曲中8曲を披露。公演自体は計17曲、約2時間半に及ぶ濃密ワンマンとなった。人間椅子の場合は作品数に比例して、ライブで聴きたい名曲があまりにも多すぎる。その意味でもこうしたアルバム縛りの企画色の強いワンマン・ツアーは、今後も是非とも継続してほしいものだ。時空を超えて、今なお生々しいダーク&ヘヴィネスを突きつける人間椅子の楽曲の魅力を、とことん堪能した一夜であった。(ライター:荒金良介 / カメラマン:西槇太一)
Zepp DiverCity公演 セットリスト
01. モスラ
02. ギリギリ・ハイウエイ
03. 夜明け前
04. 巌窟王
05. どだればち
06. 時間を止めた男
07. 泥の雨
08. 瀆神
09. 踊る一寸法師
10. 暗い日曜日
11. 無情のスキャット
12. 至上の唇
13. 幸福のねじ
14. 針の山
EN1-01. エイズルコトナキシロモノ
EN1-02. なまはげ
EN2-01. ダイナマイト
全国TOUR「『踊る一寸法師』再発記念ワンマンツアー」@Zepp DiverCity公演 ライブ有料配信視聴
視聴可能期間:4月18日(月)19:00~4月24日(日)23:59まで
【日本国内にお住まいの方】
配信チケット販売期間:4月24日(日)21:00まで
配信チケット代:2,500円(税込)※別途システム利用料220円がかかります。
【海外にお住まいの方】
配信チケット販売期間:4月24日(日)21:00まで
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