2021年10月16日(土)、心斎橋ANIMA。sui suiの1st ワンマンライブが開催された。
本来このワンマンライブは、sui suiデビュー1周年記念として2020年6月に開催される予定だった。
しかし、コロナ禍での活動自粛とメンバーの脱退が重なりやむなく中止に。その後もメンバー加入と脱退による体制の変化で、なかなか実現ができないまま1年半が経った。そのなかで、2021年6月27日に同じく心斎橋ANIMAで開催されたsui sui2周年記念ライブで東名阪ツアーが発表された。ツアーファイナルはなんと念願のワンマンライブ。メンバーはもちろん、ファンも待ちわびた日だったのだ。
開演時間、ステージのスクリーンにOPムービーが流れると会場からは拍手が。ムービーの終わりとともに照明がステージを照らす。光の先にはメンバーが登場。
「愛閉中」のイントロで亜鞠和音が「ファーストワンマンライブ、まばたきすんなお前ら!」と煽ると、フロアいっぱいに両手が上がった。メンバーいちふわっとした雰囲気の亜鞠だが、ライブでの煽りは激しく情熱的。そのギャップは今日のワンマンライブに込められた想いをより強調していた。
立て続けに「感情開放戦線」「SYMPHONY SYMPATHY」「このまま」を披露。
「感情開放戦線」はMVも公開されているが、当時よりもメンバー全員の歌唱力が格段にあがっていてその迫力に圧倒される。ライブにかけた想いが溢れんばかりに絶唱するメンバー。コロナ禍ということもあり声が出せないフロアにはその分の熱量がうずまき、"現在しか僕らは興味ない"と歌われるこの曲で会場中の感情が開放されていくようだった。
鬼気迫るライブパートから一転、ここで本日の初MC。それぞれが自己紹介をし、猫戸彩凪がフロアを見渡して集まったファンに声をかける。「1回目のワンマンが中止になってから1年半越しのワンマンライブ、今日は来てくれてありがとうございます。最後までみんなで楽しみましょう!」大きな拍手とともに次の曲へ。
メンバーの吐露と決意で作られたポエトリーリーディング「夜明けフィルター」。大サビで猫戸が"同じ風景を見ながら泣きたい"と叫ぶと、照明が逆光になりフロアを埋め尽くしたファンの姿が照らされる。「側にあるもの」では、客席に懸命に想いを届けようとする4人の姿に感極まっているファンの姿が見えた。
"僕が笑うのはキミタチに出会ったからさ"と繰り返し投げかける「キミタチ」は、この日を待ち続けたメンバーの願いでもあるだろう。コロナ禍で活動が止まりワンマンライブも中止になったなか、メンバーとファンはきっとそれぞれ救いであったのだろうし、お互いがこの歌詞のように"キミタチ"同士だったはずだ。
4人が横に並びMCパートへ。猫戸が新曲について話そうとしたところで緊張からか言葉が止まってしまう。パフォーマンス中の堂々とした様子とは真逆の様子に、写楽ユーキが「いいよ、続き話して大丈夫だよ」と声をかける。続いて、月御葵已が「最初が激しいブロック、今のがちょっとしっとりブロック、そして次のブロックは…」と説明をはじめたところで言葉が飛んでしまう。そこでも写楽が「YouTubeで振り動画をね…」とサポート。にこにこと見守っていた亜鞠が「みなさんはsui suiのYouTubeをご覧になっていますでしょうか」と誘導する。
気を取り直し、ツアー中に振り付け動画を3本アップしたことを伝えると、写楽が「予習復習してきましたか?」と声をかける。メンバーは「復習?」と首をかしげていたが、月御が「このままみんなで一緒に踊りましょう!」と力技で進行。
パフォーマンスでもMCでも、メンバー同士がたびたび助け合い、信頼し、じゃれあう様子が見られた。お互いのこと、そしてグループのことが好きな気持ちを抑えきれないメンバーの様子に、ファンは嬉しそうに飛び跳ねたり、ステージに向けて指ハートを送っていた。
続いて月御いわく"一緒に踊るブロック"へ。「Let's get dance!!」では、写楽が歌っている途中に月御の振りに思わずぶつかってしまうハプニングが。お互いがびっくりして顔を見合わせ笑っている姿を、ファンは嬉しそうに見つめていた。そういった細かい瞬間ごとに、sui suiは人間力の高いグループだなと思わされる。
ワンマンライブを開催できる嬉しさがステージから客席へ、そして客席からステージへと伝染し続けるなか、sui suiのテーマソングでもある「S.U.I」。そして、亜鞠が「みんがいるからsui suiはステージに立てます!これからも一緒に最高の景色を見てください!」と感謝を伝えると本編ラスト「僕のすべて」が流れる。メンバーにとってsui suiは"僕のすべて"だろうし、ファンにとってもsui suiは"僕のすべて"なのだ。大きな拍手とふりあげた両手で気持ちを伝えようとするフロアを照明が再び照らす。無数の両手は眩しく、感動的だった。
4人は深々とお辞儀をして客席と一緒に記念撮影をしたのち、声をそろえて「以上、わたしたちsui suiでした!ありがとうございました!」と声をあげ、本編が終了。
メンバーが姿を消し、スクリーンにはこれまで見たことのない映像が。今回のツアーで初披露となった「ランナーズハイ」のMVだ。ファンが喜びでざわめくなか、映像の終わりとともにMVの衣装を着たメンバーが登場。スクリーンから飛び出てきたようなサプライズに会場は沸き、「ランナーズハイ」が披露された。
このとき、会場は7色のサイリウムで埋め尽くされていた。ファンがサプライズで用意したものだ。7色のカラーは、現メンバーカラーに脱退したメンバーのカラーも含まれている。これまでsui suiを作ってきた歴史の色だった。
猫戸が「『ランナーズハイ』のPVが公開されました。改めてワンマンライブに来てくれてありがとうございます」と挨拶をし、メンバーそれぞれが今日のライブについて話をはじめると会場は一気に静まり返った。
写楽は「東名阪ツアーありがとうございました!僕が入る前の話になるんですけど、決定していたワンマンが延期になっていたと聞きました。やっとsui suiとしてワンマンできるのがすごく嬉しいと思ったけれど、ぜんぶが急ピッチで進んできたし、ちゃんとうまくやれるか不安でした。だけど、このメンバーだったからここまで来られたし、トラブルがあってもこのメンバーだから続けられました。それは、みんな(ファン)のおかげでもあるので、今まで応援してくれた人も、最近好きになってくれた人も、みんな心の支えになっています。…愛しています!ありがとうございました」とフロアを見渡し、照れくさそうに頭を下げた。
亜鞠は「見に来てくださったみなさん、ライブハウスのみなさん、sui suiに関係をしてくれたみなさん、そしてメンバーのおかげでこのツアーを完走できました。本当にありがとうございます。アイドルを応援するのっていろんな気持ちになると思うんです。sui suiも一直線にワンマンを迎えられたわけじゃなくて、紆余曲折があって、体制も変わって、やっと今日を迎えることができました。ステージに立つときは、ライブを見に来てくれるみんなが毎日のしんどいことを忘れて、感動をして楽しい気持ちで帰れる空間になればいいなと思ってんですけど…うまくいくことばかりではありません。みんなもいろいろあるなかで、今日ここに来ると選んでくれて感謝の気持ちしかないです。初期メンバー彩凪ちゃんの『ワンマンライブを実現する』という夢を叶えられたことが嬉しいし、メンバーのやりたいことや夢はそのままわたしの夢になるので、これからも同じ方向を向いて頑張りたいと思います。今日は見届けてくれてありがとうございます」と微笑んだ。
月御は「来てくれてありがとうございます!まずはワンマンができてよかったと心から思っています。入る前からずっとsui suiを見ているファンの人はいろいろな想いがあると思います。途中からsui suiを知ってくれた人はとにかく楽しみにしてくれていたと思うし…いろんな気持ちがありますが、このステージに立ってお客さんの顔を見たら嬉しさがこみ上げてきて感動しました。加入してからいろんなことがありました。でも、なにかを乗り越えるたびに、『sui suiに入って良かったな、sui suiで良かったな』って思います。これからもsui suiとして走っていくのでよろしくおねがいします!」と元気で無邪気な笑顔を見せた。
猫戸は「来てくれてありがとうございます。sui suiを選んで入ってきてくれたメンバーや、スタッフさん、そしてみんなと今日を迎えられたことが夢みたいに嬉しいです」と声をつまらせた。「泣かへんって決めたのに…」とメンバーに助けを求める猫戸の肩を月御がポンポンと叩いて背中をなでると、会場からは応援の拍手が起こった。
「ワンマンライブの実現まで待たせてしまったし、ずっと前から応援してくれる人をいろんな感情にさせてしまいました。開催できて本当に嬉しいです。これからもsui suiのことをどうかよろしくお願いします」と震える声で伝え、その様子を見つめるメンバー3人に猫戸は「ありがとう、ありがとうね…」とお礼を言い続けていた。
4人が並び、改めて「以上、わたしたちsui suiでした」と挨拶。エンディングSEの「MYWAY」が流れファンは拍手で見送る。直後、スタンドマイクを持った4人がステージに再度登場。観客はどよめき、一瞬拍手すら止まった。
「MYWAY」は、2人体制でのsui sui再始動ライブ1曲目で初披露されてから、毎回ライブで歌ってきた曲。いわば、2人体制のsui suiを象徴するテーマソングのような存在だ。しかし、現メンバー体制になってからはライブでの披露は封印されエンディングSEとなっていた。4人が声を震わせながら歌う姿を見て、その場で立ちつくし泣いているファンも多かった。ツアーファナルで封印が解かれた「MYWAY」が、4人の曲として生まれ変わった瞬間だった。
途中でピースをする振り付けでは、メンバーはさっきまでのシリアスな表情から一転して満面の笑みを見せていた。「今、この瞬間がずっと続いてほしい」きっとあの場にいた誰もがそう思っていたことだろう。
しかし、サプライズはここで終わらなかった。
アンコールが終わりメンバーが舞台袖に去ったあと、エンディングムービーが流れた。そこでは、1st アルバムの発表、そしてリリースイベント、全メンバーの生誕祭、大阪&東京でのワンマンライブの決定など怒涛の告知が解禁となりファンは騒然。7色のサイリウムが揺れた。
ムービーのラスト、メンバーのアー写とsui suiのロゴが消えると「…and You!!」の文字が。そしてさきほど撮ったばかりの心斎橋animaでの集合写真がスクリーンいっぱいに表示された。マスク越しに抑えきれない驚きの声があがり、やがて大きな拍手へと変わった。
最後の最後までファンへの感謝を忘れないsui suiらしいエンディング。会場は熱気と期待に溢れていた。最強メンバーで2021年をかけぬけたsui sui。年末に控えたアルバム発売と、来年の怒涛のライブが楽しみでならない。(photo:ヤギタツノリ Text:成宮アイコ)