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トップレポート雑誌『ヘドバン』×映画『ロード・オブ・カオス』が奇跡のコラボレーション! 日本のエクストリーム・メタルバンド「SIGH」の川嶋未来、音楽ライターの増田勇一、ヘドバン編集長の梅沢直幸が語る作品世界!

雑誌『ヘドバン』×映画『ロード・オブ・カオス』が奇跡のコラボレーション! 日本のエクストリーム・メタルバンド「SIGH」の川嶋未来、音楽ライターの増田勇一、ヘドバン編集長の梅沢直幸が語る作品世界!

2021.03.29

3月26日(金)より劇場公開となった狂乱の青春映画『ロード・オブ・カオス』。ノルウェーに実在するバンド、Mayhem(メイヘム)に起きた出来事を描いているにもかかわらず、そのあまりの過激な描写により映倫から〈R18+〉の烙印を押され、SNSを中心にすでに話題沸騰となっている本作。公開初日から大勢のお客様が訪れ、なかにはコープスペイントをしたメタラーや、オリジナルTシャツや全身黒ずくめの装いの方々など、祝祭的な物々しい雰囲気のなか初日記念トークイベントが行なわれた。
 

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【実施場所】シネマート新宿
【実施日時】3月26日(金)18:30の回・上映後
【登壇者】川嶋未来(SIGH)、増田勇一(音楽ライター)、梅沢直幸(「ヘドバン」編集長)
 
増田:映画の冒頭にもある通り「真実と嘘と実際の出来事」に基づいて描かれた作品なので、今日はMayhem(メイヘム)と交流のあった川嶋未来さんに、一体どれくらいが真実で、どれくらいが脚色なのか等、いろいろと聞いていきたいなと思っています。
 
梅沢:たぶん日本で唯一ですよね、ユーロニモスと接触している方って。
 
増田:仮に他にいたとしても同じミュージシャンとしての目線で話している方はいないはずですね。この映画に描かれているいろいろな事柄、川嶋さんはどう観ましたか?
 
川嶋:本筋に関してはほぼノンフィクションだと思います。細かい脚色的なフィクションは要所要所にありますが。公開直後に「こんなの嘘だ」と関係者から声が上がったという話しもありましたけど、監督に話を聞くと相当念入りにリサーチを重ねていますよね。当時の関係者のほとんどと会っているし、警察の資料も入手して入念に読み込んでいます。ノンフィクション作品と捉えて観るべきと思いますね。
 
梅沢:海外で公開されてからいろいろな前評判を聞いていましたが、実際に観てみたら、当時のユーロニモスの部屋のポスターとか、細部へのこだわりが物凄い作品だなと思いました。
 
増田:死の直前に聴いていたレコードとか、刺された傷の数とか。
 

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川嶋:監督はユーロニモスの殺害現場の写真も入手していましたね。殺される1〜2日前に髪を切っていたという点も事実に基づいていますし、相当リアルに描かれていますよ。
 
梅沢:時間が経過したこともあって、この事件の話もどこか神話的な扱いになっていた部分がありますけど、それを今回の映画では事実に基づいて全て曝け出している。
 
増田:原作の『ロード・オブ・カオス 復刊 ブラック・メタルの血塗られた歴史』を読んで知ってはいた内容が、映像を伴ってすごくリアルに感じられましたよね。映像化されて逆にリアルさが失われることってあると思うんですけど、これは違う。
 
川嶋:ユーロニモスを一人の人間としてきちんと描いていますよね。
 

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増田:ブラック・メタルのシーンのみならず起こり得る話しだと思いますが、川嶋さん、どうですか?
 
川嶋:だからといって実際に教会を燃やすのはどうかと思うんですよね、一線を越えてしまっているというか。当時、グリシュナック(ヴァーグ)と手紙のやり取りをしていて「おれは教会を焼いたから、お前も日本の教会を焼け」と言ってきたことがありました。当時はインターネットもなかったし、それが本当のことかどうかも分からなかったんです。教会を焼いたこと自体より、教会を燃やして、それを自慢して、そんな人が逮捕されないなんて日本では信じがたいじゃないですか。かといって嘘だろとも言えないので「日本はキリスト教の信者があまり多くないので、教会自体が少ないんだよね」と返事しましたよ。
 
増田:映画の中にも出てきますが、僕も当時『KERRANG!』(イギリスのロック専門誌)を購読していて、あのヴァーグが表紙になった号も買いましたけど、ちょっと嫌でしたね。三面記事の拡大版に見えたというか、残虐性だけを拡大化したような内容だったじゃないですか。
 
川嶋:完全にゴシップですね。
 

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増田:それくらい話題になっているんだとは分かっても、逆にブラック・メタルがそういうものなんだと思われることに繋がったようにも思えて。でも、ユーロニモスが自分のレコードショップ「ヘルヴェテ」をオープンした時、それとは関係のない取材で僕も当時オスロに行っているんですけど、街にロックバンドの人たちがうろうろ歩いているとか、革ジャン長髪の人が歩いているとか、そういう雰囲気は全くなかったんです。もっとひっそりとしたシーンというか、こっそりと作られたアジトのようなものだったのでは。
 
川嶋:その『KERRANG!』で初めて表舞台に出たんですよね。映画の中でも『KERRANG!』から電話が掛かってきてユーロニモスがいたずらと思うシーンがありましたけど、それくらい衝撃的だった。当時ユーロニモスと電話した時に「次の『KERRANG!』はBurzum(バーズム)が表紙だ」と言われて、載ることはあっても表紙ということはないだろうと僕も思って、電話だし聞き間違いじゃないかと思って詳細を聞くと、やっぱり「表紙だ」って言うんですね。それでも本当かなあと思いながら、次の日から毎日タワーレコードに通ってチェックしました。それで入荷した『KERRANG!』を手に取ってびっくりしましたからね。
 

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梅沢:川嶋さんはジャンルとしての「ブラック・メタルとは何か」みたいな話はユーロニモスとしましたか?
 
川嶋:そうですね。ブラック・メタルという言葉は80年代から微妙にはあったんですよ。邪悪なスラッシュ・メタルを表していたような言葉だったと思います。それをユーロニモスが「対デスメタル」、アンチテーゼとしてブラック・メタルという言葉を定義したのが90年代初頭ですね。
 
増田:ユーロニモスはデス・メタルをとても馬鹿にしていましたよね。
 
川嶋:世界一激しくて過激な音楽だという認識だったデス・メタルに、ユーロニモスは「あんなものは過激でもなんでもない、ライフ・メタルだ」と言いました。そうしたら「ブラック・メタルのほうがカッコいい」と思う若者がたくさん出てきても何の不思議もないですよね。やっぱり彼は宣伝が上手かったんです。
 

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増田:ロックバンドにとって宣伝っていうとだいたいライヴということになるじゃないですか。でもライヴ活動ってほぼしていなかったんですよね。
 
川嶋:それはブラック・メタルの一つの伝統というのもあって、そもそもVENOM(ヴェノム)もほとんどライヴをやっていないですよね。表舞台だと初めてベルギーで2000人を前に演奏して全然出来ていなくて大変だったとか。Bathory(バソリー)も一回もやっていない。友達の誕生日パーティーでは一回演奏してるけど正式なライヴとしては一回もやってない。ブラック・メタルはライヴをやらないという一つの流れがあったのです。
 
増田:当時いろいろなニュースが日本にも届きましたけど、一番信じられなかったのが獄中レコーディング。獄中にいる人がそこでレコーディングができてしまうなんて、ちょっと信じがたいですよね。そういう話を聞くと、これまで起きたと事件もどの程度が本当なんだろうとは思いましたよね。
 
川嶋:ノルウェーの刑務所のシステムってなかなか異常ですよね。グリシュナック(ヴァーグ)はキーボードを持ってくるわ、トレーニングジムがあるから体はムキムキになっているわ、ちょっとその感覚は日本人の僕たちには分からないですよね。刑罰というのが罰ではなくて人格を更生するものだということなんでしょうけど。
 

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梅沢:ヴァーグの思想性のようなものは聞かれたことはありますか?
 
川嶋:いろいろな説がありますけど、子どもの頃に有色人種に虐められた経験があったとかで、すごく有色人種への偏見があります。だけど日本が大好きなんですよ。インタビューの中でも、有色人種を馬鹿にする発言をたくさんした後に、でも「ジャパンはグレイトだ」って最後に言ってみたり。
 
増田:そういえば川嶋さん、そのノルウェーの刑務所にも行ったことがあるんですよね。
 
川嶋:1994年、ユーロニモスが殺された次の年です。映画の中にも出てきますが、ヴァーグがユーロニモスを殺しに行くために運転をさせられていた男性がいますよね。その彼に会いに行きました。映画の中では描かれていませんが、彼は当時Mayhem(メイヘム)のセカンドギタリストをやっていたんです。その彼に「なぜグリシュナック(ヴァーグ)はユーロニモスを殺したのか」聞いたら「なんにもない」と。「ただ単に自分が一番悪いことを証明したかったんだ、ヘルヴェテの店員でもあったファウストがゲイの男性を殺害したことでリスペクトが集まっていたから、自分のほうがより邪悪だということを証明しないといけないからやったんだ」と、吐き捨てるように言っていたのが印象的でした。監督も言っていましたが、本当に今となっては分かりようがない。当人もハッキリしないんじゃないかな。お金のこととか、女性関係だったり、いろんなことが積み重なってこういう結末になってしまったんじゃないでしょうか。真実は分かりようがない。
 

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梅沢:僕が興味深いと思ったのは、彼らはいわゆる貧困層とかでもない、むしろ裕福な家庭で育っている人たちだという点です。
 
川嶋:決して虐待されたわけでもないし、お金に困っていたわけでもない。いわゆるミドルクラスですよね。ただ、ユーロニモス自身はお金はなくて、それでもお父さんの資金でレコードショップを開いたり、裕福な家庭だったのでしょう。ちなみにヴァーグはテロ活動をするのにお母さんが資金提供していたとかいう話も聞きましたけど。
 

商品情報

映画『ロード・オブ・カオス』

出演:ロリー・カルキン(ユーロニモス)、エモリー・コーエン(ヴァーグ)、ジャック・キルマー(デッド)、スカイ・フェレイラ(アンマリー)、ヴォルター・スカルスガルド(ファウスト)
監督・脚本:ジョナス・アカーランド(『SPUN / スパン』)
脚本:デニース・マグナソン(『孤島の王』)
原作:『ロード・オブ・カオス ブラック・メタルの血塗られた歴史』(著:マイケル・モイニハン、ディードリック・ソーデリンド)
音楽:シガー・ロス(『バニラ・スカイ』)
撮影:パー・M・エクバーグ(『ポーラー狙われた暗殺者』)
編集:リカード・クランツ

原題:LORDS OF CHAOS|2018年|イギリス・スウェーデン・ノルウェー合作
アメリカンビスタ|117分|R18+|字幕監修:川嶋未来(SIGH)|アドバイザー:増田勇一
配給・宣伝:AMGエンタテインメント、SPACE SHOWER FILMS
提供:AMGエンタテインメント

© 2018 Fox Vice Films Holdings, LLC and VICE Media LLC
2021年3月26日(金)よりシネマート新宿、シネマート心斎橋ほかにてロードショー! 以降順次公開!

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