3月14日(日)、ハイダンシークドロシーがデビューライブを行なった赤羽ReNY alphaを舞台に、2回目の単独公演「白黑有無-Xylochrome-」を昼夜2公演行なった。「Xylochrome黑」と付けた昼公演は、アコースティックなスタイルでハイダンシークドロシーの曲たちを演奏。夜公演として行なった「Xylochrome白」では、いつものバンドスタイルで実施。両公演とも有観客/配信ライブという形で、ワンマン公演を全国各地の人たちに届けてくれた。ここでは、「Xylochrome白」と名付けた夜公演の模様をお届けしたい。
物悲しくも。でも、勢いを持った3拍子の旋律が力強く音のタービンを回しだす。動きだしたメリーゴーランドの木馬の横へ寄り添うように、谷琢磨が美しく透明な歌声を高らかに響かせた。ライブの冒頭を飾ったのは「エルドラド」だ。哀しみを背負いながらも今を生きることを謳歌するように、メリーゴーランド(演奏)は力強く廻りだす。歌い奏でる彼らの背景には、リリック映像が映し出されていた。哀しみを心に隠しながら、演奏は次第に力を増してゆく。それは、朽ちた廃墟の中に潜んでいたメリーゴーランドが、生を感じ、ふたたび命を吹き返したようにも見えていた。
靖乃の駆けるビートを合図に、楽曲は一気に勢いを増す。荒ぶる情次2号のギターと熱く躍動するジンのベースが共に駆けだすのを合図に、楽曲は「トランプゲーム」へ。激しく駆ける演奏に触発され、谷琢磨の歌声も熱を帯びてゆく。沸き立つ気持ちをぶつけるように凛々しく歌う谷琢磨。彼自身の中に眠っていた雄々しい感情が、3人の熱した演奏に触発され奮い立つ。この日は椅子席での観覧。誰もが身体が騒ぐのを抑えきれず、椅子の上で大きく身体を揺さぶっていた。
谷琢磨の超絶ハイトーン声をバトンに、楽曲は「バラバラモノガタリ」へ。跳ねた演奏に乗せ、気持ちが一気に華やぎだす。輝きに向かって駆けだすような開放した演奏の上で、谷琢磨が躍るように歌いだす。彼の歌声に合わせ、一緒にステップを踏んではしゃぎたい。たとえ椅子に縛りつけられようと、心はけっして縛られることはない。彼らの華やぐ演奏に刺激を受け、何時しか心は青空を自由に飛び交っていた。なんて気持ちをワクワクと騒がせる素敵な楽曲だ。
心に温もりを届けた昼公演とは裏腹に、訪れた人たちや配信を通して観ている人たちを、夜公演で4人は華やいだ宴の中へと招き入れる。「みなさま、心泡立つ物語を」。次に奏でたのが、甘くメロウな「ストロベリーバブル」。ねっとり絡みつくような甘さが身体を浸食してゆく。糖分高めながら、今夜だけは思いきり嘗め尽くしたい。後ノリのビートに乗せ、優しく寄り添うようにせまる歌声と演奏が目の前へ壁ドンのようにグッとせまったとたんに、ドキッとした。そんな嬉しいときめきを、この歌へ触れている間中覚えていた。途中には、ジンの頭に居ついた猫(のかぶりもの)と谷琢磨が妖しい絡みを見せる場面も登場。洒落た遊び心も見せながら、甘くとろけるひとときをハイダンシークドロシーは届けてくれた。
ふたたび演奏は、テンポを上げだした。彼らが観客たちを連れだしたのは、闇がせまる物悲しい世界。谷琢磨の歌声へ導かれるように、三拍子のリズムに乗せ気持ちや身体をゆったりと揺らしながら、「ウタカタワルツ」が描きだす泡沫な物語へ、今は哀切な気持ちのまま寄り添っていたい。切なさへ心を痛めるように谷琢磨は歌う。その声に触れながら、同じよう心を疼かせていた。
情次2号のブルーズなギターの音色と谷琢磨の儚さを抱いた歌声が痛く絡みあう。泣き塗れる2人の歌声と演奏を、リズム隊がタイトな演奏で煽り立てる。とてもいなたい、どっぷりと哀愁に満ちた演奏だ。「モルフォ」を通し4人は、ハイダンシークドロシーが持つ闇の色を、見ている人たちの心に思いきり塗りたくっていった。
次に届けたのが、3月21日に発売するシングルにも収録した新曲の「心温」だ。大きなお立ち台へ並んで座った谷琢磨と情次2号は、互いに心を寄り添えるように優しい歌声と音色を響かせだす。歌声を通し、胸に残っている手の届かない人への想いを馳せるように。その温もりをギターの旋律を通して蘇らせるよう、2人は「心温」を想い出のページをめくるように奏でていた。2人の歌声と音色に誘われ、ジンのベースが美しいメロディーを奏で2人に寄り添いだす。3人の気持ちが昂るのを合図に、靖乃がドラムを叩き出す。何時しか楽曲は、躍動した表情を描きながら心を熱く火照らせていた。触れた人たちの気持ちを温かく、でもそっと湿らせてもゆく歌だ。何度もリピートしながら、この歌が導いてくれた愛しい人の想い出に、少し崩れた笑顔で浸り続けていたい。
「離れていても、心の奥深くで繋がっていたい」想いを記した「心温」に続き、ここで初披露したのが、間もなく発売になるシングルの表題歌「白黑有無」。気持ちを一瞬で青空まで連れだすような、心解き放つアップテンポの楽曲だ。弾む楽曲に触発された谷琢磨は、お立ち台の上に立ち、伸び伸びとした歌声を青空中ヘ広げるように歌っていた。すべてのネガティブな感情を消し去り、触れた人たちの心を輝きで包み込む。この曲が心に羽ばたく翼を与える。くしゃくしゃにした最高の笑顔に変えてゆく。何時しかフロア中の人たちも手を振り上げ、気持ちの翼を羽ばたかせていた。座っているのがもどかしい。本当なら飛び跳ねながら騒ぎたい。でもこの日は椅子に座りながら、気持ちだけは自由に、時を超えて羽ばたかせていた。
場面は、一転。哀愁を帯びた情次2号のギターの旋律へ寄り添うように、谷琢磨が濡れた切ない声を寄り添えながら「ブランコ」を歌いだす。ジンのベースが重い音で寄り添えば、靖乃のドラムが泣き濡れる感情を揺さぶりだす。サビではランタンを手にした谷琢磨がオペラヴォイスを用い、悲嘆に暮れた想いを響かせていた。今にも壊れそうな谷琢磨の感傷的な歌声に、気持ちはずっと痛みを覚えながら浸っていたかった。
心の闇を切り裂くように、情次2号のギターが激しい音を繰り出した。ふたたび躍動した物語を描きだそうと、ハイダンシークドロシーは「オモイデオルゴール」を演奏。彼らはマイナー調の荒ぶる楽曲を通し、観ている人たちをドープな世界へと連れだしていった。
続いて披露したのが、ハイダンシークドロシーの始まりを告げた「メーズ」。谷琢磨の闇を抱いた物悲しいオペラヴォイスがフロア中に響き渡る。そこへ跳ねた演奏が加わると同時に、観ている人たちを闇の宴へと招きだす。楽曲は、次第に熱を上げながらドラマチックな展開を作り出す。何時しかフロア中の人たちも身体を大きく揺さぶり、彼らの「遊びましょう」の声へ導かれるように宴へと加わり、心騒がせていた。
躍動した靖乃のドラムが気持ちを熱く騒がせる。熱狂した宴の中で壊れた人形と化し踊り狂えと誘いかけるように、ハイダンシークドロシーは2ndシングル曲「ページェント」を演奏。ハイダンシークドロシーが得意とするシャッフル系のドラマ曲に刺激を受け、身体が熱を帯びてゆく。いや、身体の火照りを抑えきれず、どんどん理性が溶け出していく。心を思いきり開放する極上の高揚曲だ。終盤に描いた緩急利かせたドラマチックな曲展開に触れるたび、騒ぐ気持ちが叫びを上げていた。
昂った気持ちを抑えるな。ハイダンシークドロシーは、「ヒトリランド」を通し、すべての束縛から心を開放するヒトリランドへやってきた人たちを、歓喜と興奮のアトラクション(楽曲)へ招き入れた。まるで緩さのないジェットコースターのように嬉しい刺激を与えながら、楽曲は走り続けてゆく。ランタンを手に歌う谷琢磨の姿が印象的だ。さぁ、このまま理性もルールも消し去り、ヒトリランドいう名のワンダーランドでピーターパンとウェンディになり心を自由に羽ばたかせろ!!
「想い出の場所が、今もずっとこの心に咲き続けています。これからも僕たちと一緒に花を咲かせ続けてください」。谷琢磨の言葉を合図にハイダンシークドロシーが届けたのが、「ヒナギク」だ。この曲に触れたとたん、身体中が華やぐ気持ちに染まりだす。彼らと一緒に子供の頃のような、汚れも、恐れも、哀しみさえも知らない無邪気な心に戻ってゆく。はしゃぎたくてたまらない。歓喜を呼び起こすなんてもんじゃない。この歌は、心を最高に無邪気な自分に塗りかえてゆく。何も怖さなど覚えることのない、好奇心に満ちて輝いていた童心に戻れる。騒ぐこの気持ち、もう抑えきれない!!
「これからも前へ進んでいける元気をいただけました。終焉の時を、どうか共に」。最後にハイダンシークドロシーは「アヴェ・マリア」を演奏。泥ついたノイズの様な演奏と澄み渡る美しい旋律が交錯してゆく演奏の上で、谷琢磨はすべての人たちの心の痛みや哀しみを癒すように、澄み渡るオペラヴォイスを響き渡らせていった。誰もが舞台上の彼らの姿を、祈りを捧げるように見つめていた。
心華やぐ気持ちを、もっともっと光の中で輝かせようと、アンコールで届けたのが「アオゾラ☆カーテンコール」。すへての束縛から心も身体も解き放ち、ウキウキとしたときめきを与えてゆく極上の開放パーティチューンに合わせ、フロア中の人たちが大きく左右に振る手を翼に変え、彼らの歌声や演奏を力にしてゆく。無邪気で無敵で純粋な自分に戻れる真っ青な空間へ向かって、誰もが羽ばたき続けていた。楽しいよね。ニヤニヤが止まらないよね。最高に幸せだよね。いいよね、本気で楽しいと心で叫べるこのひとときが。
配信はここで終了。最後に、会場へ足を運んだ人たちだけに向け、ハイダンシークドロシーはカバー曲の「月のワルツ」を演奏。ハイダンシークドロシーらしいというべきか、心地好く跳ねた少し華やぐ楽曲を通し、彼らは観ている人たちの気持ちをゆったりと揺らしてくれた。こういうサプライズがあるからこそ、現場に足を運ぶ楽しさを忘れたくない。
ハイダンシークドロシーは、3月21日に、最新シングル「白黑有無」をシングル発売する。彼らがここに綴った3編の物語も、ぜひ味わっていただきたい。
PHOTO: Lestat C&M Project TEXT:長澤智典
セットリスト
「エルドラド」
「トランプゲーム」
「バラバラモノガタリ」
「ストロベリーバブル」
「ウタカタワルツ」
「モルフォ」
「心温」
「白黑有無」
「ブランコ」
「オモイデオルゴール」
「メーズ」
「ページェント」
「ヒトリランド」
「ヒナギク」
「アヴェ・マリア」
-ENCORE-
「アオゾラ☆カーテンコール」
会場限定ENCORE
「月のワルツ」
Live Info.
4ヶ月連続配信2マン「正正」
04/18(日)with The Benjamin
05/16(日)Coming soon…
06/20(日)Coming soon…
07/18(日)Coming soon…
1st Anniversary Live「百花千紅」
09/18(土)南青山MANDALA
09/19(日)Music Lab.濱書房(ONLINE LIVE)