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ムーンライダーズ活動再開! 中野サンプラザ公演ライブレポート!

2020.11.02

来年、デビュー45周年を迎えるムーンライダーズのコンサートが10月31日(土)の“満月”の夜にリアルライブとオンラインの2本立てで行なわれた。
 
ムーンライダーズはデビュー35周年にあたる2011年11月、無期限の活動休止を発表。その後、メンバーのかしぶち哲郎の1周忌の2013年には一夜限りの復活。40周年の2016年、期間限定で“活動休止の休止”を宣言し、夏フェス出演とライブハウス・ツアーを経て再び“活動休止”。2020年8月にはアルバム『カメラ=万年筆』40周年を記念し突如、無観客ライブを開催してファンを驚かせた。
 
今回のコンサートは4年ぶりの“活動休止の休止”つまり“活動再開”だ。しかも会場となった中野サンプラザは、2011年12月17日に活動休止に入る最後のコンサート会場で、かしぶち哲郎がムーンライダーズと共に演奏した最後の場所だ。2016年の“活動休止の休止”期に“最後の饗宴”が行なわれた会場でもあり、ムーンライダーズ・ファンにとっては聖地。否が応でも期待は高まる。
 

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コンサートは新型ウイルス感染拡大を防ぐため、キャパシティの半分で実施。久しぶりとあってチケット抽選の倍率は高く、その狭き門をくぐり抜けた1100人が会場に着席。場内の話し声はほとんど聞こえない中、18時5分、緞帳がゆっくりとせりあがる。スクリーンには前回2016年ライブ時にファンによって撮影された「犬にインタビュー」での犬の着ぐるみを被ったメンバーの写真が次々に映し出される。舞台では大勢のクルーが慌ただしくステージ・セッティングの真っ最中。そんなことにはお構いなしにメンバーがゆっくりと登場。各々が所定の位置に着くと設営のさなか、おもむろに演奏を始め出す。トーキング・ヘッズの映画『ストップ・メイキング・センス』の冒頭シーンを彷彿させる演出だ。これにはオーディエンスもマスクの下でにやり。メンバーは広いステージの左右を目一杯使い、各々が充分なディスタンスを取って横一線に並ぶ。不自然なほどの、横に伸びての配置はもちろん感染症対策。どこか郷愁感漂うニューウェイヴ・サウンドの「スイマー」で幕を明けたコンサートは淡々と進行する。
 

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3曲めが終わると鈴木慶一から、大人数の前では、ほんとに久しぶりですとファンに向けて挨拶。「活動をまた始めました。これが最後の活動になるかも...」と集まったファンの不安を煽りつつ、「みんながいる限り、我々は生き残りますから」と生涯現役宣言(?!)をしてファンを安心させる。
 

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続けては白井良明がリードボーカルをとる長谷川きよしの「卒業」。この日、唯一のカバー曲。鈴木慶一によれば白井良明がこの曲を唄いたかったそう。本人も照れくさいのか、「仰げば尊し」や、サイモン&ガーファンクルの「卒業」の1フレーズを弾いて、すぐに演奏に入らない。
 
中盤は武川雅寛、鈴木博文のコーナー。ムーンライダーズは鈴木慶一がメイン・ボーカリストと見られがちが、実は他のメンバーもリード・ボーカルをとるのは珍しくない。「腐った林檎を食う水夫の歌」、「今すぐ君をぶっとばせ」では武川が、「駅は今、朝の中」では作者の鈴木博文がリード・ボーカルを担う。
 

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“活動休止の休止”こと“活動再開”最初のコンサートとなった、この日のセットリスト、大半は滅多に演奏されないレアな楽曲が並んだ。ムーンライダーズはいわゆるシングルヒット曲こそ少ないが、長い活動の中でファンに愛され親しまれてきた数々の人気曲はある。『MANIA MANIERA』(1982)なら「スカーレットの誓い」であり、『ANIMAL INDEX』(1985)なら「Frou Frou」、『DON'T TRUST OVER THIRTY』(1986)では「9月の海はクラゲの海」や「ボクハナク」と、コンサートの鉄板曲を上げれば枚挙にいとまがない。ただ、今回はメンバーが今やりたい曲、今だからこそ唄う曲という視点で選曲されたように見受けられる。アルバム『MODERN MUSIC』(1979)の「ヴァージニティ」はシングルのバージョンを披露した。鈴木博文は、この曲について『久しぶりにやって悲しいし、演ってて泣いちゃうそうになった』と語っていたほど。
 

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ファンはもちろん、こういったレア・ナンバーは嬉しい。とはいえ慣れ親しんできた曲も聴きたいというのもファン心理。そんなファンの葛藤の真ん中を射抜いて、一気に爆発したのが10曲めの「Kのトランク」だ。イントロが流れるやいなや、マスクを通じても、その興奮は会場中に充満している空気から伝わってくる。当時、難解すぎて発売中止になったと言われ、80年代を代表する怪盤とも呼ばれるアルバム『MANIA MANIERA』(1982)の収録曲だ。このアルバムの曲は全部好き! というファンも多く、同作品からは「工場と微笑」がこの後に演奏されている。この2曲、岡田徹は懐かしのガジェット、ショルダー・キーボードであえてのチープな音を出し、ますますファンからの喝采を浴びる。
 

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ここからは一挙にアップテンポのナンバーを畳み掛ける。大きな声を上げられない制約の中、会場にはオーディエンスの熱気が満たされる。ラストはファンの間で“ドントラ”と呼び親しまれる「DON'T TRUST ANYONE OVER 30」。30歳以上は信用するな! とメンバーが30歳を超えた1986年に発表された名曲。サビでは曲タイトルを連呼するが、1回歌うたびに30(THIRTY)が40、50と引き上げられ、最後は“"DON'T TRUST ANYONE OVER 70”で締める。今や彼らの平均年齢は(新加入のドラマー、夏秋文尚を除けば)68.2歳。立派な前期高齢者だ。つまり、この日のここまでを演奏していた(我々)70歳以上の人間は信用するな! と言ってるのだ。なんとも愛らしく、やんちゃな前期高齢者の人たちだ。これこそがムーンライダーズの魅力。
 
アンコール1曲めの「帰還~ただいま」では、再び武川がリードボーカルを受け持つ。間奏ではメンバーそれぞれが「ただいま!」と唄うパートがあるが、ここでは本編ラストで抜いた刀は鞘に収め、好々爺然と唄っている。惹きつけて、突き離し、再び惹きつける。これもまた、ムーンライダーズの魅力。その好々爺スタイルでニコニコと唄うのはデビュー曲の「スカンピン」。その渋さは会場いっぱいに染み渡る。
 

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万雷の拍手が鳴り止まない中、2回めのアンコールにメンバーが登場すると会場の客電は全灯。客席も総立ち。鈴木慶一は「こんなに拍手頂いて、長い間やっててよかった」と感無量。ビートルズのようなポップ・メロが全編を貫くスケールの大きいナンバー「はい!はい!はい!はい!」で2時間に渡る“活動休止の休止”明けのコンサートは終了。鈴木慶一の希望的観測によればだが、45周年の来年にはアルバムを作ってツアーも行なうそう。コンサートの中で、生涯現役宣言(と受け取っていいだろう)もあった。きっとやってくれるだろう、そんな気迫は充分に伝わった“満月”の一夜であった。
この日の公演の模様は、2021年2月にWOWOWで放送が予定されている。(PHOTO:Kentaro MINAMI)
 
【MOONRIDERS 2020年10月31日 中野サンプラザ / セットリスト】
※収録アルバムタイトル / リリース年度
01. スイマー(ヌーベル・バーグ / 1978)
02. ダイナマイトとクールガイ(A.O.R. / 1992)
03. ガラスの虹(最後の晩餐 / 1991)
04. 卒業(BYG - High School Basement 1 / 1995)
05. 悲しいしらせ(ANIMAL INDEX / 1985)
06. ヴァージニティ(シングルver)(sg / 1979, al"MODERN MUSIC" / 1979)
07. 腐った林檎を食う水夫の歌(MOON OVER the ROSEBUD / 2006)
08. 今すぐ君をぶっとばせ(sg"夏の日のオーガズム" / 1986)
09. 駅は今(ANIMAL INDEX / 1985)
10. Kのトランク(MANIA MANIERA / 1982)
11. 夢ギドラ85’(P.W Babies Paperback / 2005)
12. ニットキャップマン外伝(Bizarre Music For You / 1996)
13. ヤッホーヤッホーナンマイダ(P.W Babies Paperback / 2005)
14. 工場と微笑(MANIA MANIERA / 1982)
15. DON'T TRUST ANYONE OVER 30(DON'T TRUST OVER THIRTY / 1986)
<Encore01>
16. 帰還~ただいま(ムーンライダーズの夜 / 1995)
17. スカンピン(火の玉ボーイ / 1976)
<Encore02>
18. はい!はい!はい!はい!(最後の晩餐 / 1991)
出演:ムーンライダーズ(鈴木慶一 / 岡田徹 / 武川雅寛 / 鈴木博文 / 白井良明 / 夏秋文尚)

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