今や音楽ジャンルとしてだけでなく、周辺カルチャーなども、世代、国籍を超えてムーブメントとなって久しい “シティ・ポップ” を、当時を代表する5人のアーティストや、メーカー関係者、雑誌編集長をはじめ、Z世代のコレクターのインタビューなどを収録した書籍『シティ・ポップとラジカセ』が、3月31日(金)に株式会社徳間書店より発売された。
かつてカーステレオから流れる音楽の定番だったシティ・ポップ。
70~80年代に青春時代を送ったリアルタイム世代には懐かしいカセットテープが、当時を体感していない若い世代にも、「アナログ感がエモい」と受け、近年改めて脚光を浴びている。
このムーブメントにアーティストたちもカセットテープによる新譜を続々とリリース。
近年世界的に人気を博している「シティ・ポップ」を代表するアーティストのひとり、山下達郎は、昨年6月、11年ぶりにリリースしたオリジナル・アルバム『SOFTLY』をカセットテープでも発売。今春から、80年代初期の名盤『For You』などの過去作をカセットテープで再版するとの話も。
本書『シティ・ポップとラジカセ』では、そんなカセットテープが全盛を極めた70年代末から80年代にかけて、当時の若者から人気を集めた──あるいは生活の一部だった──「カセットテープ・カルチャー」を紹介するとともに、伊藤銀次による、元祖、シティ・ポップともいわれる山下達郎のバンド「シュガー・ベイブ」の裏話や、名曲「DOWN TOWN」の誕生秘話、佐野元春との邂逅。杉真理によるナイアガラ・トライアングル、竹内まりやとの出会い。稲垣潤一が明かす、秋元康のペンによる大ヒット曲「ドラマチック・レイン」の誕生経緯。EPOの「DOWN TOWN」カバーの経緯など、音楽ファン、シティ・ポップ・ファン垂涎の、関連アーティストたちのインタビューも収録。
さらに、かつて「4大カセットテープ・メーカー」と呼ばれたTDK、ソニー、マクセル、AXIAの中から、最も人気の高かったTDKと、後発ながらイメージ戦略でシェアを広げたAXIAのOBたちに当時の苦労話、裏話をインタビュー。
カバーでは、シティ・ポップカルチャーを代表するアーティストの一人、鈴木英人のイラストを起用。
各社のカセットを写真で紹介する「カセットテープ・ギャラリー」、当時の世代で知らぬ者はいない伝説の雑誌『FMステーション』の元編集長による回顧録などなど……読みどころ、見どころ満載の一冊だ。
アーティストたちが語ったシティ・ポップ
2023年現在、海外から飛び火した形ながら日本でも再評価され、ブームとなっている昭和のシティ・ポップ。
当のアーティストは、どのような想いを曲に込めていたのか。80年代に数多くのヒット曲を生んだ稲垣潤一をはじめ、杉真理、鈴木茂、伊藤銀次、EPOらが当時を語る。
カセットテープ・ギャラリー
カセットテープの全盛期、ブランクテープで圧倒的なシェアを誇っていたTDK、ソニー、マクセル。さらに後発ながら瞬く間にシェアを広げたAXIAを加えた4大ブランドの代表機種を紹介(文:懐かしのカセットテープ博物館館長 加藤邦裕)。
シティ・ポップ名盤選
シティ・ポップ初心者に向けて、シティ・ポップがなんたるかを知る上でまずは聴いておきたい名盤を20枚厳選紹介。
Z世代のカセットテープ・コレクター
この令和の時代に、昭和生まれの五十路記者が、平成ひと桁生まれのカセットマニアのお宅にお邪魔。
後にカセット業界を背負って立つかもしれない若者の話を聞いた。
ヴィンテージ・ラジカセ・ギャラリー
60年代末に誕生し、70年代になると市場のニーズに応えるべく様々な変化を遂げてきたラジカセ。
ここでは群雄割拠の70~80年代に各社がしのぎを削って作り、発売された名機の数々を通じて、その進化の様子を紹介。