昨年、 没後50年を迎えた三島由紀夫。 出世作となった「仮面の告白」が刊行された1949年、 24歳のときに発表した小説が、 同年の「朝日新聞」に掲載されていた。「恋文」と題されたこの作品は、 全集・単行本には未収録。 4月7日発売の「新潮」5月号は、 発掘小説として「恋文」を全文掲載をする。
2020年に没後50年を迎えた三島由紀夫の全集未収録作品が、 大阪大学の斎藤理生教授によって確認された。「恋文」と名付けられたこの掌篇は、 1949年10月30日付の「朝日新聞」大阪版および西部版に、 「400字小説」と題した特集中の一篇として掲載。 宴会に出た「支店長」が匿名の手紙を見つける場面から始まる「恋文」には、 掌篇ながら「占領下日本」が映し出されていると斎藤教授は意義付ける。
また、 ”三島は二ヶ月後に発表した評論「極く短かい小説の効用」で、 「長篇小説と等しい質量をもたない掌篇は無意味である」と述べている。 「掌篇小説は、 水の上に現れた氷山の一部分である」とも。 ”と、 三島にとっての掌篇の位置を本誌の「解説」に寄せている。
大蔵省を辞職し、 翌1949年7月に「仮面の告白」を発表したばかりの新進作家の掌篇は、 なぜ埋もれていたのか、 そして、 何が書かれているのか――。 「朝日新聞」4月6日付朝刊社会面で大きく取り上げられた発掘小説「恋文」の全文を、 斎藤理生さんの鮮やかな解説とともに読もう。