重松清『ビタミンF』(新潮文庫)が今月25日に50刷を突破、今年に入ってからすでに75,000部を増刷し、 累計発行部数は817,000部という超異例の快進撃を放っている。
2003年に新潮文庫から刊行された重松清氏の『ビタミンF』が今、 売れに売れている。短編七編が詰まった直木賞受賞作は同氏の代表作の一つではあったものの、 昨年末からたちまち人気が再燃。年明けも勢い止まず、 先日ついに単行本+文庫を合わせた 累計発行部数が80万部を突破しました 。 店舗での週間売上ランキングで『ビタミンF』が1位となる書店もあるほど。
2003年発売の文庫作品が2021年に急浮上。 そのきっかけは、 新潮社営業部員A(40歳・男性)の作った一枚の販促用パネルだった。
「入社当初、 20代の頃に『ビタミンF』を初めて読んだときは正直あまりピンと来なかったのですが、 40歳を迎えて改めて読むと、 涙が止まりませんでした。 それは主人公が今の私と同年代だからです。 仕事も家庭もピリッとせず、 何とも中途半端な年代。 コロナによる閉塞感も重なったのかもしれません。 今の自分と重なる部分ばかりで、 気が付くと山手線を一周して涙が頬を伝っていました。 この気持ちを誰かと共有したい!と思い立ち、 もう一度仕掛けることを提案したんです」(営業部員A)
昨年末、 5,000部の重版とともに作成したパネルには、 「涙腺キラー・重松清 最泣の一冊!」というコピー。 このコピーが多くの読者の関心を集め、 わずか数カ月で『ビタミンF』を大躍進させた。 17年前に刊行された本がこれほどの勢いで手に取られるのは、 極めて異例のことだ。