このところめんどくさい本ばかり読んでいるが、なんとも心安らぐ本に出会った。もう10年以上前に出版された12編に渡る短編集だ。世界一周船の図書館で見つけた。どの短編も心温まるというのは平凡だけど、おじさんはいいなと思ってしまう。随筆ではなく歳時記なのだ。直木賞を始め数々の文学賞に輝く人気作家なのだろう。女性ファンが多いのも頷ける。何か生き方について落ち込んだ時に読むといい。過ぎ去った青春の記憶がよみがえってくる。感動する。涙する。胸をうつ。こんな文章を書いてみたいと思う。こういう本と出会うと、人間っていいなと思う。重松さんと一杯飲みたいと思うのは私だけか。でもひねくれたやつなら「そんなサザエさんみたいな幸せそうな家庭なんかあるものか」って思うのかな。(平野悠)