朝日文庫『安倍三代』は、 ジャーナリストの青木理氏が、 安倍晋三氏と父方の系譜をたどるノンフィクションだ。 反戦の政治家として軍部と闘った父方の祖父・寛、 その跡を継ぎ若くして政治の道に入った父・晋太郎。 先達の人生に迫れば迫るほど、 浮き彫りになるのは「三代目・晋三」その人の空虚さだ。 安倍首相の辞任表明で、 本書が再び注目を集めている。
母方の祖父・岸信介を敬愛する安倍首相には、 語られない父方の系譜がある。 庶民目線の政治家で、 戦時中に反戦を唱えた祖父・寛。 その志を継ぎ、 リベラル保守の政治家として外相も務めた父・晋太郎。 綿密な周辺取材から浮かび上がる三代目・晋三の人間像とは――?
中島岳志氏「解説」 から
本書は、 安倍晋三のルーツを丹念に探り、 関係者への取材を重ねることで、 その思想の軽薄さを明示することに成功している。 (中略)関係者の生の声が記録されている点を含め、 本書の功績は大きい。 しかし問題は、 そんな「悲しいまでに凡庸」な人物が、 長年にわたって日本政治の頂点に君臨し、 この国の姿を変容させているという現実である。 この逆説をどう解くかは、 青木が世の中に投げかけた課題であろう。