Rooftop ルーフトップ

NEWS

トップニュースジャズピアニスト・センチメンタル岡田の【ピアノアレンジで歌ってみた】vol.2 - 町田康&佐藤タイジ「心のユニット」

ジャズピアニスト・センチメンタル岡田の【ピアノアレンジで歌ってみた】vol.2 - 町田康&佐藤タイジ「心のユニット」

2020.04.13

EXj6TSlx_400x400.jpg
 
ジャズピアニスト・作曲家・ラッパーの岡田啓佑ことセンチメンタル岡田が、ピアノアレンジで【歌ってみた】を配信中。本日「心のユニット」町田康&佐藤タイジが公開された。
 

第2回「心のユニット」町田康&佐藤タイジ

この曲は、「町田康&佐藤タイジ」の名義で2002年にリリースされました。
 
作詞が町田康さんで、作曲が佐藤タイジさんです。
 
町田康(1962〜)さんは今や芥川賞作家で、作家としての活動の方が有名かも知れませんが、その昔、「町田町蔵」の名で「INU」というパンクバンドのボーカリストをやっていました。
 
該バンドの名盤と言われている『メシ喰うな!』(1981)に収録された「おっさんとおばはん」という曲で彼は、「おまえのち○ぽに割り箸突っ込んでいてもうたろか阿保」という過激な歌詞を書いています。
 
それからおよそ20年後「心のユニット」では、同じ人物から「なにげない顔で 生き延びてしまおう ちからをぜんぶ出し切って 今を乗り切ろう」という言葉が紡ぎ出されます。
 
このギャップが私にはたまりません。
露悪的な人物の隠された優しさには、説得力が宿ります。
 
私はまた、ロックバンドのエレファントカシマシも好きなのですが、該バンドの、ほぼ全作詞を手がける宮本浩次さんにも同じようなものを感じます。
 
1993年のシングル「奴隷天国」では、「太陽の下 おぼろげなるまま 右往左往で あくびして○ね」と毒づきますが、3年後の1996年には「四月の風」ではうって変わって「明日も頑張ろう」と歌い上げます。
 
3年の間に一体何があったんだ?という感じですが、私はこれは、はじめから「明日も頑張ろう」と言いたかったけど、素直になれなくて、「あくびして○ね」と言ってしまったのだと解釈しています。
 
「あくびして○ね」の中に実は「明日も頑張ろう」が込められていて、歳月をかけて、宮本さんははじめて「明日も頑張ろう」と元々伝えたかったことをそのまま言えたのではないかと。
 
 
町田さんも同じで、「おまえのち○ぽに〜」などと、一様にポジティブにはとれない言い方はしていますが、音楽に込められたエナジーはポジティブなものでした(少なくとも私は『メシ食うな!』というアルバムに元気をもらっていました)。
 
そんな彼が歳月を経て「力をぜんぶ出し切って 今を乗り切ろう」と、素直な言葉で歌ったとき、説得力がないはずがない。
 
これが、両者が初期の作品から既に「力をぜんぶ出し切って 今を乗り切ろう」「明日も頑張ろう」と言っていたとしたら、印象が違います。
 
「最初ひねくれた言い方をしていて、時を経て素直になった」という物語も込みで私はこれらの曲を味わっているのです。
 
佐藤タイジ(1967〜)さんはロックバンド「THEATRE BROOK」のフロントマンです。佐藤タイジさんの紡ぐ優しいメロディが、新境地に至った町田康さんの歌詞世界をより一層引き立たせています。
 
まさに絶妙なコンビ。実はこの二人が出会った場所は、この記事を書かせていただいているRooftopの大元、ロフトグループさんが経営するライブハウス「新宿ロフト」だったそうです。(参考記事:BARKS「佐藤タイジ、町田康と結成したバンドについて語る」)
 
ということは、もし新宿ロフトがなければ、この曲は生まれていなかったし、私もこの文章を書いていませんでした。新宿ロフトありがとう!
 
新型コロナウィルスに喘ぐ昨今の世の中で、いったい「神様さえ破れかぶれ」なのかもしれませんが、「なにげない顔で生き延びてしまおう ちからを全部出しきっていまを乗り切ろう」。
(文:センチメンタル岡田)
 

関連リンク

このアーティストの関連記事
ロフトチャンネル
休刊のおしらせ
ロフトアーカイブス
復刻