サブステージからメインステージに上がっていくバンドが出てくるのが一番面白い
──メインステージの方はキャパが500人ぐらいということですが、これまで新宿ロフトで100~200人の動員でやってきた人達っていうのはどうなっちゃうのかなっていうのがあって。実際「今度のロフトは広すぎて俺達は出してもらえない」っていう声もあるんじゃないでしょうか。
原島:まず、広いからやらせてもらえないっていう発想自体がナンセンスだという気がするよね。そういうネガティブな発想で音楽をやってほしくないし。動員だけの部分で切り捨てられるっていう考えを持ってるとしたら、逆に、じゃあ自分達は動員の部分だけで出ていたのっていう気がするよね。それは今まで俺達は150人でOKだと思ってたってことだよね。でもそれはなしだよ。だから、そういうネガティブな発想の人達は出れないね。150の客をなんとかして200、300に増やしていこうという発想がないと。
──では、ブッキングする方から考えて、例えば動員が未知数の新人バンドを出そうとした場合、500人というキャパは非常にリスクが高いですよね。
原島:じゃあさあ、新しいロフトは動員の2人しかない若いバンドは絶対出れないってことだよね、動員っていう部分だけで考えると。それはそいつらが持ってる可能性までも否定することになるんだよ。でも、その可能性をみていくのが俺達だから。
大五:俺達はその役割をしないと。ただの貸しホールじゃないからね。
小林:人を集めるために自分たちがどれだけ努力するかってのも大切だよ。
原島:結果論として動員っていうのがあるけど、そのプロセスを俺達がまるで見てないってわけではなくて、例えば「あいつらっていつもビラ撒いてるよなあ」っていうのがあって、その音楽性も含めた上で、そのバンドがやってることを、こっち側も見ていかなくちゃいけないし、そういうのをわかった上でのジャッジをしていかないといけないと思う。
小林:やっぱりがんばってるバンドは自然と応援したくなるよ。それが伝われば。
──なるほど。でも新宿ロフトってやっぱりちょっと敷居が高いっていうイメージがあると思うんですよね。
原島:それは俺達がはずしていかないと。だから俺は、ラウンジのサブステージからメインステージに上がっていくバンドが出てくるのが一番面白いと思うよね。
「来てくれてありがとう」という感謝の気持ちを、今のロックシーンは忘れてるような気がする
──小林さんは今回初めて新しい店を作るわけですけど、どんな店にしようと思ってますか。
小林:そうだねえ。現場で一緒にものを作るんだっていう高い意識のチームを作りたいなっていうのがテーマとしてあるよね。それは、スタッフもPAもバンドも一緒に共有しながら生まれる尊い空間を作ろうという意識。そのテーマがドーンとあるよね。あとは、一人一人がいい意味でプライドを持って。ライブを作った人間にしかわからない充実感ってあるじゃない、ブッキングしてからライブをやってお疲れするまでの、あの醍醐味というか、それを分かち合える空間であればいいなと。それを具体的に、こういう場合はこうだという、そこにいなければわからない空気をどう読んでいくか、本当にお互いにみんながあって成り立っていくという意識を作っていかないといけないとすごく感じるね。だから本当にゼロからスタートしたい。
原島:一人一人が参画しているという意識をもてるスペースにしていかないとダメだろうね。毎日がルーティンで、働いてる人たちはただのバイトで、ただジュースを出せばいい、としか思ってないとしたら今度の新しいスタッフにはいらないだろうね。自分がそこに参画してるという意識があれば、そのライブで自分は何を得るのかということを意識できるだろうしね。
ご隠居:俺が27年間ライブハウスやってきて一番うれしかったのは、若い子が駅から走ってきて、握りしめていた百円玉がまだ温かいのね。そこで例えば、お金が足りなかったりしても、「いいよいいよ入んな」ってことをいつもやってたわけ。だから俺は受付やるのがすごい好きなの。だからお客さんに「来てくれてありがとう」という感謝の気持ちを、今のロックシーンは忘れてるような気がするのね。
原島:だからコミュニケーションの場面で、その場その場にいる人が自分の責任を持ってジャッジする機能を持たせてやるっていうのが必要で、誰かに聞かなきゃ分からないっていうんじゃなくて、その前に自分の判断でできることをやるっていう雰囲気を作っていかないと。例えば、アメリカのイースト・ウエスト・エアラインが急激に伸びたって話もそういうことじゃない。じいさん、ばあさんが2人できて、シルバーシートが満席だったけど、「ちょっと待って下さい」って言って見てみたら、レギュラーシートが空いてたから、自分の権限で、こちらへどうぞって案内する。そうしたら次もまたその航空会社を利用してくれたっていう。だからお客さんにまた来てもらえるようなサービスの考え方を一人一人がちゃんと持ってるかってことだよね。