新宿LOFTで年末に開催される『年末大感謝祭』。年末の恒例イベントに付随して、出演者を代表してのインタビューや出演者同士の対談もお届けするようになって久しい。午後から夜にかけて行なわれる長丁場のイベントになるので、LOFTホール内のベンチやBARスペースでブレイクタイムを取る際にはこのインタビューをお供にしてもらえたら、そんな意図もあったりする。ということで、今年の『年末大感謝祭』出演者の中から、宇宙団のボーカル&ギター・もちづきへのインタビューをお届けしよう。男女5人(そのうち男性が1人)で活動する宇宙団、そのバンド名はこれまでも見かけたことはあったのだが、インタビューに向けて音源を拝聴したところすっかりハマってしまった。さらにトークも快活で面白く、インタビュアーの極めて個人的な思いではあるが、年の瀬が迫る中で新しき良きバンドと出会えたことに感謝している。『年末大感謝祭』を通してあなたにも、素敵な音楽との出会いがあることを願って!(Interview:高橋ちえ)
男女ツインボーカルになった宇宙団。できる曲の幅が広がっている
──初めてのインタビューになるので、まずはバンドのご紹介からお願いします。
もちづき:5人組のニューウェーブポップバンドで、男女ツインボーカルのバンドですが女4・男1という男女構成比も面白いかなというバンドです。漢字3文字で宇宙団というちょっぴり変なバンド名ですけども、皆ただただ真面目な人たちで慎ましく音楽をやっております。音楽的にはキーボード、ギターやベース、ドラム……全員がグイグイ前に来るような(笑)、主張の強い、中毒性の高い楽曲をやっているバンドです。
──結成したのはいつ頃でしょうか?
もちづき:2014年頃なので結構(活動歴が)長いバンドですけど、この体制になってからは4年ですかね。その前まではガールズバンドで、全然また別の雰囲気でやってました。キーボード(関口マドレーヌ)と私は親同士が仲の良い幼馴染で、中学生の時に「一緒に音楽をやろう」って。それから高校生になって新宿JAMに通うようになったんですけど、新宿JAMでドラム(ツチ丸)と出会って、この3人が最初からのメンバーです。4年前に入った2人のメンバー(コンノ・Gt&Vo/高のしま・Ba)は前のバンドを辞めたタイミングでお誘いしたら入ってくれて、それで今の5人体制になりました。
──ガールズバンドでのスタートから今は男性のコンノさんが入られて、しかも男女ツインボーカルに。バンドとしては大きな変化を経ていますね。
もちづき:そうですね。昔はアイドルさんが出ていらっしゃるようなイベントにも出たりするようなガールズバンドでしたけど、女の子のベースだけは、吉野家かな? すき家かな? っていうぐらいの回転率で(一同笑)辞めていってしまって。それでベースをまた女の子で誘う時に、またガールズバンドで4人に戻るよりはもうちょっと新しいことをしたいという話になって。ギターを入れるとかツインボーカルにしてみようとか、そんな話から今のメンバーになりました。
──もちづきさんご自身は、男女ツインボーカルになった今のバンドをどう感じてますか?
もちづき:やっぱり新しいですし、1人で唄うのと2人で唄うのだと曲を作る幅が全然違ってきて、できる曲の幅も広がって。面白いですし、やって良かったなと思っています。
──そしてバンド内の男性はお1人という。
もちづき:逆ハーレムですね(一同笑)。私も、そして彼も逆ハーレムに違和感はないらしいです。(女子メンバーの)年齢が皆ほぼ同年代なんですけど、彼1人だけ離れてて7つ上なので「同い年だったらぶん殴ってた」って言われたこともあるはあります(笑)。お兄ちゃん的な感じでいてくれているのでうまくいってるのかもしれない(笑)ですし、ちょっと特殊だな、よくできてるなとも思うし、逆の立場で考えたらよく(バンドに)入ってくれたな(笑)と思いますね。
──でもその体制がもう何年も経っている、それが結果ですよね。
もちづき:そうですね。ここまでは続けてこられたので、本当に皆には感謝しないといけないなという気持ちです。
バンドが仲良くいられるために楽しく曲作りができたらいいな
──今春、新宿LOFTで開催された『LOFT HOPE JAM MARKET〜音楽と未来をつなぐ夜』で名前を見かけてはいましたが、今年リリースのアルバム『銀河トリップ』を拝聴したらめちゃめちゃハマってしまって。「銭湯」「カンフー指南」と2曲が続く流れも最高で。
もちづき:本当ですか、ありがとうございます。この2曲はPVにもなっててキャッチーで楽しくて、でもちょっと変なことをやっていて、宇宙団っぽい、らしい曲で私も好きな2曲です。イベントでたまにお子様やファミリーが見に来られたり小っちゃい子たちのイベントに出ると、意外と子どもたちが嬉しそうな顔をしていたり受けが良くて。童謡じゃないですけど、「銭湯」や「カンフー指南」にしてもちょっとふざけた、『みんなのうた』(NHK)みたいな感じで、そんな曲が宇宙団っぽいのかなと。
──「カンフー指南」の歌詞などは子どもが繰り返したりしそうで、インタビュー冒頭で“中毒性”と仰っていたのも分かりますね。かと思えばアルバムにはツインボーカルの良さが出ている「千夜」という曲もあったり。
もちづき:今回のアルバムは「旅」をテーマにした9曲入りのコンセプトアルバムで、「カンフー指南」は中国風だったり、「銭湯」ではインドやタイの雰囲気で民族楽器の音をいっぱい使って録ってみたり、人生の旅を唄う「千夜」みたいなドラマチックな曲もある。いろいろな曲を入れてみたけど全体で聴くとちゃんと1枚の作品になっているように作りました。アルバムのタイトルも『銀河トリップ』で、(歌詞入りの曲としては)「voyager」(旅人)という曲からスタートしています。
──そもそも楽曲はもちづきさんが書いておられます?
もちづき:作詞作曲は私です。私がまず大まかに7〜8割ぐらいのデモを作って、バンドのアレンジ的なところはメンバー皆でやるという感じです。今回のアルバム『銀河トリップ』は特にコンセプチュアルに作ったので、弾き語りで(デモを)作ってもあんまり伝わらなくて。写真を見せたり、AIに画像を書き出させて“こういう景色を想像して曲を作りました”みたいな共有の仕方をしたりしましたね。
──そういうAIの取り入れ方は面白いですね。それでレコーディングの時に例えば“ベースのラインはお任せ”みたいな感じで。
もちづき:そうですそうです。私はデモまで作ればもう満足であとは皆にお任せで「皆で変えてください」って言うんですけど、バンドで合わせてみるとバラバラになっちゃうこともあって、私が書いた曲なのにメンバーから「そういう曲じゃないと思う」って言われたり(笑)したこともあります。「カンフー指南」も1曲に半年ぐらい時間をかけちゃって……。「銭湯」もですけどなかなか難産でした。この2曲はアレンジの方向性がまとまらなくて一番時間のかかった2曲なので、思い入れも強い曲ですね。
──そんなアルバム最後の曲は「僕らは幸い、いまも旅の途中」、このフレーズも良きです。今年はアルバムのリリースあって充実した1年だったのでは?
もちづき:本当にそうでしたね。アルバムを出すということ、そしてアルバムを出して下北沢シャングリラでワンマンライブをやりましたけど、10年以上バンドをやってきて一番大きいキャパシティの場所でワンマンができて。(バンドを始めた)最初は勢いがあっても10年以上続けているとそれがなかなか続かないとかそもそもバンドが続かないこともある中で、今このタイミングでできたのは自分たちにとっては大きい出来事でしたね。バンドを長くやっていると、良い方向に進んでいる時もあればダラダラしちゃう時もあると思うんですけど、“皆でケツを叩きながらアルバムを作ってライブをする”、それをこの10年間ずっと止まらず続けることができたし、ワンマンが終わってからはまたここから、一からだなという気持ちです。
──来年はこんなことを考えているとかこんな1年にしたいということを、もう少し伺いましょうか。
もちづき:まだやっていない、新しいことって何だろう? って、特に音楽面で。また一からアルバム作りになるので、楽曲制作の上でまだやっていないことは何だろうとか、新しい強みは何だろうなというのをいま皆で研究をしているところです。なので来年は、新しい面、“ニュー宇宙団”を見せられるようになりたいなというのが今の気持ちですね。常に新しい風をバンド内に吹かせるためにも新しいことにチャレンジしていきたいなという気持ちでいるし、サウンド面で同じことをやりたくないんですね。焼き増しみたいな曲を何曲も作るんじゃなくて、ずっと新しいことをやっていたい。やっていないことをやり続けたいという気持ちなので、宇宙団の良いところを残しながらまだ見せられてない面も見つけてパワーアップしたところを見せたいな、という気持ちです。曲作りが皆すごく好きなので、バンドが良い状態で続けられるように、バンド総力戦でたくさん挑戦していきたいなと思います。

















