横山剣(クレイジーケンバンド)やタブレット純も熱烈支持する二人組エミとゲル。「昭和40年代の大衆音楽」の手法を微細に渡り現代に昇華、高評価だった前2作に続くオリジナル・アルバム3作目は「1969年に公開された映画『太陽の猫たち』のサウンドトラック・アルバム」というコンセプト。
ポップな歌謡ナンバーから、ガレージ系GS、グルーヴ民謡、初期ビートルズ風などなど、新たな書き下ろし曲を中心に、クセの強い音楽マニアも驚喜する「エッセンス/質感」と、昭和大好きな若者も虜にする「キャッチー/大衆性」をつめこんだサウンド・メイキングとキャラクターが、より濃厚に迫ってくるアルバムだ。
愛知県豊田市在住でスタジオも運営する松石ゲルと、名古屋在住のエミーリーのお二人にメール・インタビュー。(Text:井上正章)
GS、サイケデリック、R&Bがピークを迎えた1968年に特化
──エミとゲルのオリジナル・アルバム3作目は「'69年に公開された映画『太陽の猫たち』のためのオリジナル・サウンド・トラック」とのことですが、このコンセプトになった理由や経緯などを教えてください。
ゲル:前2作は「1965~1971年の間に発表された曲のベスト盤」というコンセプトなので、収録曲のサウンドや着想がバラバラでした。今回はアルバムとしての一貫性を持たせるため、また一番好きな時代でもある「GS(グループ・サウンズ)、サイケデリック、R&B」の三つが同時にピークを迎えた年(1968年)」に特化して制作してみようということで、このような構想にしました。69年公開なら68年制作であると。架空ですが、映画という「ヴィジュアル」との連動が、制作工程として新鮮で面白そうだな……というのもありました。あと単純に、私がこの年代の邦画およびその音楽の大ファン……というのもあります。
──CDのブックレットにはストーリーや登場人物の紹介等、今回も長文解説が掲載されていますが、映画の物語が先に出来てから、アルバム制作に入ったのでしょうか?
ゲル:映画のタイトルと公開の年号(1969年)だけ最初に決まっており、そこから創造を膨らませて作曲しました。ストーリーや登場人物は後付けです。
エミ:映画の中でも私は酒飲みなので、まるでドキュメントのような作品です。
──タイトル曲「太陽の猫たち」「サイケデリックNo.1」の2曲を繋げた映画の予告編を模した映像がYouTubeで公開されましたが、このまま映画の本編が存在するのではないか? と思わせます。
ゲル:出演の皆さん、映像に使われている名古屋のイベントの関係者の方々、動画制作担当者に大感謝です。ぜひ誰かに本編を作っていただきたいです!
エミ:アーノルド役はエミとゲルのバンドメンバーのNOAH君が演じています。
──カッコいいジャケット写真、エミさん以外の女性たちはどういう関係でしょうか?
ゲル:エミとゲルのライブに出演していただいているダンサー「パラレルシスターズ」をはじめ、その友人、音楽仲間……等、周辺の「カッコいい」皆さんに集まっていただきました。
──「太陽の猫たち」はモータウン的なビートです。デビュー以来、エミとゲルのサウンドの根底には常に60年代のR&Bがあると思うのですが、いかがでしょうか?
ゲル:まさにその通りです。エミとゲルは「日本ポップス界がアメリカのR&Bを受容し、やがて主流となっていく」そのプロセスを再現することがテーマの一つでもあり、60年代のR&Bの影響は外せません。「太陽の猫たち」は完全にこのモータウン的ドラムパターンありきで作曲し始めました。
──収録曲の中でも特に「トッペツニャーモン」はエレキ民謡調だったのは新鮮でした。エレキ民謡と言えば寺内タケシの影響は大きいのでしょうか?
ゲル:1960年代初期の日本ポップス界に「民謡、ラテン、ハワイアン、エレキ」が混然となったような不思議な音楽が多数存在しました。三橋美智也とか松尾和子あたりにもそのような楽曲が見受けられます。この曲はもともと今回のアルバム制作とは関係なく、そのイメージで作曲したのですが、やはり収録することとなり「1969年公開映画」というコンセプトに合わせ、寺内タケシ風のエレキじょんがらに編曲し直しました。
















