兄弟でバンドをやること
ヤスエ:バンドをやる上で一番大切にしてることってなんですか? 座右の銘みたいな。
五味:そんなん決めてやってる奴おる?
ヤスエ:いや、いないですよね(笑)。でも、すごいこだわりはやっぱ感じるんですよね、バンド活動において。その源点ってなんなんだろうなって。
五味:「これは格好いい、これは格好悪い」っていうのをその都度はっきりさせていくみたいなのを意識はしてますけどね。でも、それってその時々で、例えば時代とか、メンバーも変わったりするから。誰とやってるかとか、環境も変わったりするし、その時その時で変わるから、「これです」って分かりやすい一言で言うと難しいですけどね。でも、なんとなくその都度自分の感覚を信じて格好いいものを選ぶ。めんどくさくても格好いい方を選ぶっていうのをずっとやってる感じはしますけどね。
ヤスエ:もう1個ずっと聞いてみたかったことがあって。僕も実は音楽初めた頃、兄弟でバンドやってたんすよ。
五味:そうなん? どっち? 兄貴? 弟?
ヤスエ:僕兄貴で、弟とやってたんですよ。やっぱ兄弟としてと、バンドのメンバーとして結構、難しくもあり新鮮でもあったみたいなのが何年か続いた時期があって。
五味:なんでやめたん?
ヤスエ:根本がそんなに仲良くない。ベーシストがいないから弟がやってたんですよ。でも、仲良くないんだけれども、バンドの時は結構話して。音楽やるからそれがコミュニケーションだった時期があったんすけど、そこら辺てどうでした?
五味:でも俺、逆に弟としかほとんどバンドやったことないから、自分の身内じゃない人たちが集まってやる方が難しそうな気がしてるっていうか。家族だから「あうん」でいけるっていうか。「これこうやった?」「そう」って、なんとなく分かる感じとかがあって。曲とか作ってても「このギターあの感じで」「はいはいはい」みたいな。
ヤスエ:兄弟でやり始めたのって、いつからですか?
五味:あいつが中3ぐらいの時かな。高校で結成した学生バンドで、卒業イベントみたいなのをライブハウスに持ち込んで自分たちでやるっていうのを毎年、俺が行ってた高校の軽音好きな奴らがやってて。それで卒業する時に企画したイベントに、弟もギター始めてたから無理くり入れて。その時から仲良かったですよ。その時CDやから、CD共有して好きな音楽の話とかよくしてたし。
ヤスエ:じゃあ、もう自然な流れでそっからバンドが今に至るんですね。
五味:そうそうそう。だから、弟じゃない人とやる感じがもう分からない。それが特別なことかどうかも比べようがないっていう感じですね。
──ずっと仲良いんですか? 昔と今で変わってきた部分などありますか?
五味:あんま変わんないですね。逆に今のが仲良いかも。昔の方がもうちょっと曲のこととかでケンカしてた。リアルに親戚っていうか、ほんまに兄弟やから。もう盆正月とかも家族交えて集まったりするし、揉めていいことが1個もないっていうか。家もめちゃくちゃ近所なんで。ここからSHELTERぐらいの距離(※取材場所はSHELTERの斜向かい)。家から見えてる。子供らも一緒に学校行ったりしてるし。運動会見に行ったら弟もいて、一緒に場所取る。
ヤスエ:すごい。めっちゃ仲良い。
五味:一緒にそんだけおるんやったら仲良くしてた方が上手くいくんで。だから、別に意識して仲良くしようとしてるっていうよりは、自然に転がっていったっていう感じですけどね。やりたい音楽とかも、そもそも始まってるとこが似てるから見てる景色も近いというか。「それはないで」みたいなことはお互いあんまりない。だから逆にびっくりするようなもんが出てこないっていうデメリットなのか分かんないですけど、全然自分と趣味の違う奴と作って面白いものができるみたいな、そういうケミストリーはないかも。
ヤスエ:なるほど、なるほど。
五味:もう1人ドラムと3人でやってるけど、2人でやってる感覚に近いかもしれないです。俺と弟と、ドラムみたいな。もう1人の自分みたいな感じで。良くも悪くもですけどね。
「これ1枚目なんや」って(笑)
──ヤスエさんはいろんな方といろんなバンドで活動されている中で、大事にされていることはありますか?
ヤスエ:例えば、ちくわテイスティング協会とかだと、自分の自我を出さない。
五味:出さない? あれはフロントマンじゃないの?
ヤスエ:フロントマンじゃないんですよ。あえて出さないっていうスタイルでやってて。逆にソロの時は、他の人が入ることでケミストリーが出て、自分の想像しえない音がどっかに鳴ってるのを聴くのが好きなんですよね。だから今まで全然音源を出さなかった理由は、スタジオの録音を聴くのが好きだから。未だにiPhoneで録音した凄まじいスタジオ音源をひたすら自分で聴いてるんですよ。だから、意外とメンバーに対してこうしてほしいっていうのが前提になくて。一番こだわってるのは曲のメロディーとコード感。あとは上に乗せるものは一旦任せるっていうやり方でやってます。
五味:弾き語りで作って?
ヤスエ:弾き語りすらしないんですよ。データで送るとかじゃなくて声で送る。歌だけ。
五味:主旋律だけでってこと? それで分かるの?(笑)
ヤスエ::今のメンバーの飯田裕(SEBASTIAN X)、カメダタク(オワリカラ)、おいたん(及川晃治 / ex.東京カランコロン)は、めちゃめちゃ音楽理論みたいなのがよく分かってるんですよ、コードの感覚が。それでスタジオ入って、とりあえず声だけ送っといたものにその3人が、「これ、なんとかディミニッシュじゃない?」みたいな会話をして、そのコードを並べてって曲になってるって感じなんですよ。
五味:感覚で言って、向こうが理論立てて作り上げてく?
ヤスエ:そうです。だから弾き語りとかも勘で押さえてるんで、コード進行は同じなんだけど、1回し目と2回し目の押さえ方が違う。それも勘で押さえてるんで、響きでとっちゃってるんですよ。だから普通の人だったら同じ2回しをするところを、1回目のコードだけニュアンスがちょっと違う響きのをチョイスしたりっていうのは、実は結構やってます。それ以外のところはもう全部任して、鳴ったものは受け入れて整理するっていうのが他の人とやる時の楽しみで。だからメンバーを固定しないっていうやり方をあえて取ってるのかもしれない。
五味:ベースとドラムとギター以外の楽器も誰かがやってるの? ホーンとかオルガンとか、めっちゃいろいろ入ってる。
ヤスエ:そうですね。あとチェロとか、実際に演奏してる。逆に録ったけど入れないっていうのも結構あって。
五味:1stアルバム感が全然なかった(一同笑)。
ヤスエ:すごい熟練の(笑)。
五味:聴いたあとに見たら‟1stアルバム”って書いてあって、「これ1枚目なんや」って(笑)。
















