2時間くらいで出来た「出来損ないとレッテル」が今や代表曲に
──「出来損ないとレッテル」は、まさにそんな姿勢を代表するようなナンバーだと思いますが、この曲はどんなふうに出来たのですか?
KIRIA:最初は遊び心から、亀さんとワンコードで作ろうっていう話をして、じゃあ今から帰って作るわって、それから多分2時間ぐらいで出来ちゃったんです。結局ワンコードではないんですけど、亀さんが調整してくれて、それが今ではもう代表曲みたいになってますね。たぶん、亀さんとでなかったら、普段はやらない歌詞の書き方をしているんです。「クソみたいだ」っていうのも、思ってたけど書かないようにしてた言葉で。でも、ここなら書ける気がして、思いきって綴ってみたら、感情が一気に溢れ出して止まらなくなったんです。
──まさに、この2人の組み合わせが前提で出来た曲というか。最初にKIRIAさんが「自分の中の重い感情を歌だったら外に出せると思って音楽を始めた」と話してましたが、いつの間にか完璧主義的なこだわりのほうが大きくなってきて、出す機会を失って抱え込んでいたものが、とうとう出口を見つけたような感じなのでは?
KIRIA:そうですね。「出来損ない〜」は、おそらく最も言葉遣いが悪くて、それは多分ここでしかやらなかったことなので、亀のちのちKIRIAという場ありきの書き方ではありますね。なんか正直、ここまでこの曲が存在感を持つ子だとは思ってなくて……すごい勢いで出来たのもあるし、2時間ぐらいで出来て、歯に衣着せぬ感じで書いちゃってるので、嫌いな人もいるだろうなと考えてました。逆にこれが響く人たちが多いっていうことは、もしかしたら今こういう音楽を求めてる人が多いのかなと感じるし、ある種の救済になるといいなっていう気持ちもあるので、自分自身と対話するきっかけになってもらえたらという思いが、最近この曲を唄う時はより強くなってます。
亀:うん、世の不条理があまりにも多すぎて……介護ってとても重要な労働なのに、保育園とかも凄く重要なところなのに、そこで頑張っている人には全然それに見合ったお金が支払われていないとか、いろいろ。
KIRIA:まさに叶わない、赦せない思いが多すぎるっていうことは、めっちゃありますね。
亀:真面目な人間がバカを見るし。
KIRIA:ね。それに自分だけ出来損ないだなっていう思いも心の中にあるから、それも含め共鳴してもらえたのはめちゃくちゃ救いでした。え、これやりすぎだよ……みたいな反応もなかったし。
亀:私も作詞をすることがあるのですが、「出来損ない〜」の歌詞の内容は私が過去にずっと感じていて作った曲たちにテーマがとても似ていて。こんなにも同じ思いを抱えて、それを歌詞に、曲に昇華している人と出会えたのは本当に奇跡だと思っています。
「出来損ないとレッテル」のMusic Videoより
──やっぱり「出来損ないとレッテル」という曲に対する反応は、海外からのものも含めて熱いでしょうか。
KIRIA:そうですね、最初に1人で弾き語りしている動画をアップした時から思ってたより反響があった。思ってることをただ吐き出して、とりあえず同じ思いをしてる人たちに届けようと思って出してみたんですけど、それを亀さんがリツイートしてくれたら、普段届かないところまで届いたりして。こんなに共鳴する人がいるんだって、結構びっくりしました。ライブでも、この曲を優先して撮ってらっしゃる方は多いですし、海外の方では歌詞を頑張って理解しようとしてくれる方もいました。
亀:最近になって作った「誰も知らない」と「出来損ないとレッテル」は、ライブで撮影する人が多い。
──「出来損ない〜」が、いちばん最近に書かれた曲ですか?
KIRIA:いちばん新しいのは「誰も知らない」ですね。
亀:これもシングルにしたいぐらい。
──「誰も知らない」のアレンジも、めちゃくちゃエモくて、歌謡ロックなのかもしれないですけど、絶妙にオルタナティブですよね。
亀:そうなんですよ。お客さんも次ちょっと何が来るか、どんな曲が出てくるかっていうのが未知数で、面白がってくれてるんじゃないかなって。
──最初のデモの段階から、こんなにエモかったんでしょうか?
KIRIA:もともと私の作る曲自体、抑揚が激しいので、多分そういう意味でも、メロディライン的にもエモくなりやすいのかなと思う。もちろん、ギターが入ることによって、その世界観が補強されていく感じがあって、ギターが入ることで……その、亀さんのギターが、いつも、なんかちょっとやるせない感じなんですよね。感情の行き場がないような想いを音にしている印象があって、それがすごいハマった。てか、どの曲のギターもハマってるんですけど。それもあって、おかげで2人のデュオ演奏でも充分エモい感じになって、さらにバンドでやることによって、また別の良さが出てっていう。だからエモさの上乗せ、マシマシみたいな感じになっていった(笑)。
亀:この曲と「暁闇〜」は、ほぼほぼフレーズを決めてやりました。私、フレーズ覚えるの死ぬほど苦手なんですよ。だから、そのフレーズを確定させるまでめちゃくちゃ時間かかったっていう思い出があります。
Photo:弓削ヒズミ
──ありがとうございました。最後に、今後の活動ヴィジョンについて聞かせてください。
亀:実験的なことをどんどんやっていきたいので、例えばデモ段階の音源も、CD-Rとかで出していったりとかしていきたいです。それから、同じような想いを、悲しみを、悲鳴を抱えている人たちにもっと届けたいので、大きなフェスにも出演してみたいですね。そして、MVも積極的に作って、私たちの世界観をもっとたくさんの人に感じてもらいたいと思っています。