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INTERVIEW

トップインタビュークロダセイイチ(Genius P.J's)×内田春菊 - 創作活動におけるバイタリティを保つためのサバイブ術とは

創作活動におけるバイタリティを保つためのサバイブ術とは

2025.06.16

脳が身体を支配しているのではなくて、身体が脳が支配をしている!?

クロダ:いろいろなことを並行して活動するバイタリティってどこから出てくるんでしょうか。ドラマに出ているときもすごく生き生きされているように見えます。

内田:バイタリティなんてあるのかな? でも仕事がくればなんでもやりますよ。

クロダ:仕事を引き受けすぎて、もうやめたいと思ったことはありますか。

内田:やめたいと思ったことはないけれど、バンドをやっているときには、「もう死にたい」と思ったことはあります。当時パートナーだった人がわたしを追い詰めすぎたんです。熱が出ても病院に連れて行かないとか、わたしがコツコツ続けてきたことを一気にダメにしたり。わたしとしてはダメ男が好きなつもりはないんですけど、周りからはそう言われますね。娘からも、「お母さんはバカ専」と言われたので、「あなたは自分の父親のことも含めてそんなこと言ってるの?」って聞いたら、「うん」って(笑)。バイタリティと呼ぶかはわからないですが、この人と一緒にいたらだめだなとか、このまま長崎にいたらだめだなとか、自分のバンドをどうにかしないといけないとか、そのときそのときでは頑張っているのかなと思います。

クロダ:フットワークが軽いですよね。自分は肩の力を抜けないんです。「今日はもうなにも出てこないな……」という日が重なると不安でたまらなくなります。

内田:漫画も描き始めたら楽しいけれど、ネームを作るときは大変なのでその気持ちはわかります。そういうときはとにかく寝るのがいいらしいですよ。頭にインプットしたものって、睡眠がないと定着しないそうです。筒井康隆さんと蛭子能収さんがストーリーを考えるときのやり方が一緒らしいのですが、その方法がとにかく惰眠を貪る! 寝ている間にストーリーができるそうです。お二人の場合は特別かもしれないけれど。

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クロダ:自分はなかなか眠れないタイプなんですけど、おすすめの睡眠グッズを教えてほしいです。

内田:身体を動かすことかな。わたしは毎日ラジオ体操をやっています。北里大学病院の元医院長の渡邊医師が、脚本家の大石静さんの主治医なんですけど、3人で健康イベントをのトークをやったときに勧められたのがラジオ体操なんです。人間が日常生活では動かさない筋肉を、ラジオ体操の第一と第二をやると一通り動かせるそうです。朝起きたら、手を上にあげるだけでも身体の目覚めが全然違うらしいです。脳研究社の池谷裕二さんが言ってたのですが、「よしやるぞ!」というときには、顔だけで表情を作るのと、ガッツポーズなどの動きをつけるのとでは脳に与える影響が違うんですって。脳が身体を支配しているのではなくて、身体が脳が支配をしているらしいです。

クロダ:脳は指示をする側だけじゃなくて、ちゃんと影響も受けるんですね。じゃあ明日から……じゃなくて、今日帰ったらすぐラジオ体操をやります。

内田:ちゃんとやってくださいね! 普段、漫画を描いているとほとんど身体を動かさないからよく肩を悪くしていたのに、ラジオ体操をやってから丈夫になりました。でも実はいろいろ疑問点もあるんですよ。だってラジオ体操って、「次は腰の筋肉を動かします」って言うのに腰を全然動かさないんですよ。じゃあどうするかといえば上半身をぐるぐるまわすんですよ。盆踊りもそうだけど、日本人って腰を振らないですよね。海外の体操は腰をガンガン振るので、文化の違いも面白いです。

クロダ:そうですね。レゲエやR&Bって腰を動かすけれど、日本の阿波踊りや盆踊りは下半身は固定をして上半身を動かして踊りますよね。

内田:脳と身体の話で言うと、演技でも身体で演じる役者さんとセリフや声色で演じる役者さんがいるんだなって思います。映画『居酒屋ゆうれい2』のエンディングテーマの作詞をわたしが担当しているんですけど、主演の松坂慶子さんが幽霊のポーズをしたときにすごくいいなと思いました。少しの指の動きや振る舞いで見え方が全然違ってくるんです。わたしも役者をしていますが、続ければ続けるほど“リアリティ”って意味がないんだなと感じます。たとえば、キー! って感情的に怒っているときって、現実ではただただ一本調子に怒鳴りますけど、演技で一本調子だと飽きちゃうじゃないですか。だからときどき冷静に戻ったり、抑揚をつけたりしています。

出会った人が自分を変えていっていくれると信じている

クロダ:そうやっていろいろ試すなかで気付くことって楽しいですよね。

内田:依頼をしてくれる人がいるから喜んでやるのかもしれないです。漫画だって、自分から沸いて出たものではないんです。『南くんの恋人』は『孤独のグルメ』原作者の久住昌之さんに、「内田さんの絵は4コマ漫画サイズで小さい女の子を描いても映えるから、小さい女の子の漫画を描くのもいいんじゃない?」と言われて描き始めたのがきっかけです。

クロダ:自分も含めてですが、ものを作ることを続けている人って苦しみを抱えている場合が多いと思うんですけど、内田さんは創作のパワーがありますよね。もちろんつらいときもあったと思いますが、クリエイトすることがとにかく楽しいんだろうなという気がします。

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内田:漫画家でデビューをしたての頃は、次は描けなくなるのでは……と不安に思ったこともあるけれど、考えてもしょうがないし心配をしてもキリがないから。出会った人にそのつど影響をされて、多ジャンルでいろんなことをやっている人たちを尊敬して背中を追っていたらこうなりました。どんな作品でも、“作る”という行為は頭と体には良いらしいです。ただ、それを生活に結び付けなくちゃいけなくなって、お金をいただく仕事になるとハードルがあがるので難しいですよね。

クロダ:好きなことが仕事になってしまったときの葛藤ですよね。そのバランスはどう取っていますか。

内田:少しでも良いものを作ろうとして苦しんでしまうけれど、結局はどんなに頑張っても自分の中にあるものしか出てこない。その時々で出会った人や依頼をしてくれた人が自分の持ち味をアレンジして自分を変えていっていくれると信じているので、意外と無責任にやっています。きっと、それが楽しんでいるように見えるのかもしれないですね。

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