今年はトータルで何本ライブをしたのだろう...? 本人もスケジュール帳を見て指折り数えないと分からないのでは? と思うほど、ソロでの弾き語りからバンドでのライブまで、小さなイベントからライブハウスまで。いろいろなスタイルで、いろいろな場所でライブをしてきたのが"山さん"の愛称で親しまれる山岡トモタケ。新宿LOFT&下北沢SHELTERだけでも今年は相当ステージに上がっているし、ソロ名義でも歌いながら自身の名義を冠したバンド・山岡トモタケ&FLAMINGSは今まさに絶賛ツアー中で、年明け1月11日(土)に新宿LOFTでツアーファイナルを迎えるまで、年末まで駆け抜ける!
そんなわけで連日の予定に忙しく多少疲労気味でもおかしくないのだが、音楽で満たされる日々にむしろ心と身体が満たされているのかもしれない。インタビューに向き合う山さんはとてもはつらつと、いきいきとしていた。そんな山さんのこの1年を自身で振り返ってもらいながら、これからの展望まで大いに語っていただこう!(Interview:高橋ちえ)
バンドがどこまでも広がっていく感じで、ワクワクが止まらないんです
──今年も残すところ…という時期です。山さんの今年を振り返ってみましょうか。
山岡:去年は山岡トモタケ名義で初めてのツアーで全国60本を回ったうち、12本はバンドと回ったんですけど、そのツアーファイナルが今年に入って1月の下北沢SHELTER・ワンマンで。何よりソールドアウトしたのが嬉しいことでしたし、福岡のライブハウスの方や北海道で対バンしたバンドも集まってくれて。60本を通して出会った人も集まってくれたからソールドアウトしたんだなと、年明けにまずそれが嬉しかったなと思って。そしてその時に、「“山岡トモタケ&FLAMINGS”でバンドを続けます」と発表して。
──見ている側も感無量になってしまうような、素晴らしい熱気を感じられた日でした。
山岡:弾き語りからやってきた曲もバンドでやっている曲も織り交ぜながら、熱量が伝わるライブだったかな、とは思ってますね。
──そして5月には、新宿LOFTで大事なイベントがありました。
山岡:そうですね。WHITE ASHのギタリストとしてやってきましたけど、(WHITE ASHメンバーだった)のび太(Vo&Gt)と彩さん(Ba)のTHE LITTLE BLACKと一緒に、新宿LOFT移転25周年のお祝いをできる…音楽を続けてきて良かった、ってこんなに思えることはないような日だったなと思います。この日は実際、THE LITTLE BLACKとのツーマンは叶わなかったんですけど(補足:ツーマン前にTHE LITTLE BLACKが解散)、のび太ソロと一緒にステージに立てたこと、彩さんとも再会できてお酒を飲み交わせたこと。そしてWHITE ASHの時のお客さんが皆いい顔でクラップしたりしながら、山岡トモタケ&FLAMINGSの音楽を楽しんでくれていたこと。移転25周年のお祝いの1日に関われてすごく嬉しかったな、というのが本音です。
──解散(2017年)以来で、WHITE ASHのメンバーと顔を合わせて音を一緒に鳴らすというのは、山さんが音楽を続ける意味でも重要な日だった気がしますよね。
山岡:本当に、メチャクチャ大事でした。“のび太と再会できるように”っていうのも、音楽を続ける目標みたいなところにあったので。
──それを経て8月には、山岡トモタケ&FLAMINGSとしてのリリースがあって。
山岡:リリースって大変ですね(笑)。WHITE ASHがインディーの時はLOFTからリリースしていただいて当時のマネージャーさんが全部やってくれてましたし、山岡トモタケのソロとしてはCDを作ってライブを回って、7年ぐらい一人ではやってきたんですけど、バンドだと(メンバーの)レコーディングのスケジュールとか、デザインをどうするとか言いながらツアーも組み立てなきゃいけない。もちろんメンバーは助けてくれたんですけど、一人でまとめていくってこんなに大変なのか…と。いろんな人に怒られながら(笑)、吸収して学びながら、自分が今イメージしている一番良い音源ができたので。ありがたいなと思ってますね。
──4曲入りの1st EP『Glider』、どんな思いを持ってこのEPを作っていきましたか?
山岡:去年のツアー初日が千葉LOOKだったんですけど、店長さんが僕の弾き語りのライブを見て「伝えたいっていう気持ちが強すぎて、届いてないんだよ」って。それが僕の中では衝撃的な言葉で、ターニングポイントで。弾き語りを始めた頃は東日本大震災や福島に対しての気持ちがすごく大きかった、それを伝えたいという思い・悲しみや痛み、喜びだったりを、目の前のお客さんにいかに届けて共有するか、というのを考えるツアーでした。そして確かに僕の歌のスタートは福島ですけど、今、自分が大事なところはライブハウスなんだなと。ライブハウスに集まる人や、ライブハウスで頑張っている人に向けて曲を作りたい。そこから始まったのが『Glider』でした。なお且つ、自分が歌いに行った熊本であったり石川県の赤穂谷であったり、自分たちの大事な場所を守って頑張っている人たちも、ライブハウスもそうだけれど、本当に美しいなと思って。ライブハウスに向けて歌いつつも、それぞれの大事な場所を守っている人を応援できるような1枚になったら良いなというのがEPの芯で全曲、その芯は伝わるなと思っています。
──タイトルチューン「Glider」は、今の山さんのお話がそのまんま散りばめられているような歌詞ですよね。
山岡:本当にその通りで(笑)、伝えたいことが全部詰まっている曲ですね。
──そんな曲たちを持って現在リリースツアー中ですが、手応えはどうでしょう?
山岡:メチャクチャ楽しいです! バンドが楽しすぎてワクワクが止まらないです! 毎回、新しい発見もあってもちろん改善点もあるんですけど本当に、良いメンバーに恵まれたなと思っていて。ギターのマツムラ(タダトシ)さんはもともと新宿LOFTで働いていて今は町田(東京都)にあるライブハウス・The Play House(以下、プレイハウス)で働いてるんですけど、「LOFTでワンマンライブをやるのが夢だった」って話していて。そこに向かって一緒にツアーをやっている感じもすごく嬉しいなと思いつつ、メンバーの思いも高まりながらライブができてますね。
──ツアーと並行する形で、山さんは月に1回ほど新宿LOFTで弾き語りも定期的にやっている(『BAR THE LOFT×山岡トモタケ - One Loom -』)。ソロとバンドを同時にやっているからこそ感じるバンドの楽しさというのもあるのでは?
山岡:バンドは…一人でやっているよりも無限に広がる感じ(笑)と言うか、どこまでも広がる感じが止まらなくてワクワクするんでしょうね。今回のツアーで新潟に行ったんですけど、ドラムのルンバくんの実家が新潟で、凱旋ライブで。ルンバくんは最近まで東京でバンドをやっているのを家族に内緒にしていたんですけど、家族に打ち明けて初の新潟凱旋ライブだったんです。そんな親御さんが笑顔で、楽しそうにしてて。新潟は初めましての方も多かったんですけど、ツアーも13本目でお客さんの巻き込み方だったり、良いグルーヴも生まれてきて本当に最高なライブができました。そういう1本1本が繋がっていて、僕一人ではできないような届け方がある。ライブハウスの端っこまで、どこまで届けられるかな~というのをソロよりも無限に感じられますね。