KISSESが尻軽女になるかもしれない一夜
──野音のステージから見える景色は全方位の客席から囲まれる感じで、壮観なんでしょうね。
翔:そうですね。公園側はそんなに気にならないっていうか。僕らもワンマンは一度だけで、あとはイベントが数回なのでそんなに出てるわけじゃないんですけど。
──翔さんもSNSで盛んに後方支援していた、ロリータ18号の野音ワンマンが大盛況のうちに幕を閉じたのも記憶に新しいですが。
翔:大成功でしたね。嬉しかった。まあ、僕らはそのロリータ18号の2週間後に野音を控えてる身なので、人の応援してる場合じゃないって話ですけど(笑)。でもロリータ18号の野音は本当に素晴らしかったです。ライブも最高でした。
睦:凄いお客さんがいたよね。
翔:結果的に1,000人を超えたそうですから。当日券が400枚以上売れたみたいで。大槻ケンヂさんが「パンクスは当券で来る」とXで投稿してましたけど、良い言葉ですよね。でも実際のところ、ステージに立つ側からすると、伸び悩む前売ほど肝を冷やすものはないですけどね(笑)。ただロリータ18号の場合はクラウドファンディングが大成功してたんで、そこは安心材料でした。
──当日は極寒の野音なのかなと思えば、そうでもありませんでしたし。
翔:意外と大丈夫でしたね。奈歩(小木博明の妻/森山直太朗の姉)ちゃんがあったかい出汁を持ってきてて、それをみんなに配ってみんなで出汁割りを飲みながらあったまるのも良い光景でした(笑)。ちゃんと準備していけば冬の野音も大丈夫ですよ。
睦:そうだね。俺も腰まわりに毛布みたいな防寒具をしてたら全然平気だった。ただ何かしら用意しないと夜はちょっと寒いね。
翔:確かに。でも冬の野音もいいなと思いましたけどね。前回、ニューロティカの野音(2022年7月)を観に行ったときは、あまりの暑さで熱中症になっちゃったんですよ。近年の猛暑の中で、ああいう逃げ場のない会場でライブをやるのは観るほうもやるほうも深刻になってきましたよね。あの日はLOFTでの打ち上げにも参加したんですが、頭痛がとんでもないことになっちゃって。薬を買って飲んだら意識が朦朧として、財布を落として帰ったという散々な一日だったんです。だからむしろ冬の野音はいいんじゃないかっていう(笑)。
──双方、今回の野音対決はどんなカードを切って臨むつもりですか。
翔:僕はとにかくRATBONESが大好きで、ライブを観るたびにどんどん無敵になっていくのを感じるんです。この人たちに勝てる相手は一体どこにいるんだろうと思うし、僕はいま対戦を控えて相当ビビってます。これまでいろんなタイプの人たちと対バンしてきましたけど、絶対に向こうがやらないことやできないことをやることで辛うじて自分たちの持ち味を発揮してきたんですけど、RATBONESを前にするとほぼそれが見つからないことに気づいて。睦さんのやっていることを打ち崩すのはだいぶ難しいだろうということで、ウチはこのあいだ真剣なミーティングをしたんですよ(笑)。みんなで映像をいろいろ見て研究しようとしたんですけど、思わず夢中になって見てしまって。結局、どう抗っても勝ち目がないのでただ真面目にやるしかないってことになりました(笑)。
──ぐるっと一周して真面目にやるしかないと(笑)。
翔:そうなんです。ウチのファンの皆さんは確実にこの日、尻軽女になると思いますね(笑)。KISSESは良い意味で尻軽なんです。良いものは良いと受け入れる柔軟性と審美眼のある方々なので、確実にRATBONESに持ってかれるでしょうね。もはや寝取られるのを楽しむくらいの心境でいますよ(笑)。
睦:寝取られてくれたらそりゃ嬉しいけど、俺はほぼ氣志團のファンの前でやることになるんだろうなと思ってて。でもみんなの仲間に入れてもらうっていうのもヘンなんだけど、氣志團とKISSES(ファンのこと)の絆っていうのがある中で俺たちがお邪魔して「寝取られてもらえますかねぇ?」ってお願いするというか。「今晩どう? 体だけでいいから、心までは要らないから」って(笑)。俺たちとしては良ければ友達になってほしいっていうか、こんなバンドもいるんだけどどうかな? って感じかな。俺たちがたかだかオッサンやらババアの半ケツを見せたところで「ほぉ」とは思うだろうけど、日雇い(ファンのこと)になるほど尻軽でもねぇだろうと思って。
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──でも双方のファンが間違いなく魅了されるであろう絶好の対バンだと思いますけどね。
翔:KISSESの中には今回の対バンをめちゃくちゃ喜んでる人たちが多いし、初めてRATBONESを体験する人たちは度肝を抜かれると思います。僕ら自身も何しろ楽しみですし、野音でRATBONESを観れるなんて最高じゃないですか。自分たちも日雇いの皆さんに何か伝えられるものがあればいいなと思います。
睦:感謝しかないと思うよ。何なら日雇いどもは「RATBONESを野音に連れてきてくれてありがとう」くらいのことを思ってるはず。いやいや、今回はLOFTの周年企画だっつうの。なぜか勘違いしてる奴らがいっぱいいるからさ。俺の企画だと思って開催の発表が遅れたのが男らしいだとか、さんざん焦らして氣志團とやるのを発表するなんて凄いですね! なんて言われるんだけど、まだかまだかと発表を待たされ続けたのはこっちだよ! って(笑)。
──睦さんが「12月8日の野音も1月12日のキネマ倶楽部も同じラインにある。野音だけが特別ではなくいつものドサまわりの中にある」とXで投稿しながらも「でも野音だぜ(笑)」と書いていたのは、野音にはやはり特別な何かがあるからですよね?
睦:いや、氣志團という大きな宣伝効果があるから(笑)。手前どもがいくらハッシュタグを付けて宣伝しようが所詮はその辺の日雇い労働者の悪あがきなんで、今はXの投稿も全部「#氣志團」と付けさせてもらってます(笑)。氣志團と一緒にやって少しは盛り上がるかなというのが素人の考えで、俺らは12月8日までのシンデレラなんで。そのあいだにハッシュタグ使いまくりだから。何なら「#木更津」とかまで使っちゃおうかなと思って(笑)。
翔:いやいや、本気で頑張らなくちゃいけないのは僕らのほうで、『氣志團万博2024 〜シン・キシダンバンパク〜』が終わって次のツアー(全國ホールGIGツアー2025『シン・氣志團現象』)を発表したんですけど、みんなここで一瞬気を抜いたところだったんですよ。でも野音ってやっぱりデカい会場だし、LOFTの周年でRATBONESとやる意味合いも凄く大きい。最大で3,000人は入る所だから、今日も帰り道にチケットを手売りしようかなと思ってます(笑)。下北は人も多いし、パー券を無理やり売りさばく感覚で。でもホントに野音でやるのは念願だったんです。仲間内でいくらくじ引きしても全然ダメで諦めていたんですけど、こうしてLOFTさんのおかげでやれることになったのが凄い嬉しくて。
睦:年に何度も会うような間柄ではないけど、30年くらい前に縁があってこの辺で出会って、片や日本のエンターテイメントのトップを行くバンドにまで登り詰めてさ。そんな連中が身内にいたっていうのが面白いし、これだけ長くバンドをやっててそれくらいの存在が出てこないのも寂しいよね。それに今回は俺らも野音でやることになって、下北のそこら辺で飲んだくれてた奴らが揃って野音に出るなんて意外といいかもと思って。氣志團も俺たちもそこら辺で始まったバンドで、縁がないようであるって意味でもね。昨日も浜松のライブでSAのNAOKIさんに会って、野音でやるのを凄い喜んでくれてるの。ああ、なんか人に喜ばれることやってんだなとか思って。
──野音にはそういう鯉の滝登り的な物語性がありますよね。
翔:そうですね。いろんな伝説がありますし。
睦:俺は初めての野音だから伝説を残したいんだよ。でも仮に野音を出禁になったら、この先どこにも出られなくなるなと思って(笑)。最初は御輿を用意して客席を練り歩くのも考えたんだけど、いろいろ制約があるみたいでね。紙テープを投げると凶器になるか? とか、ダッチワイフがダイヴすると怪我人が出るか? とか安全についてメンバーと真剣に話し合ってる(笑)。でもまだ諦めちゃいないんで、LOFTの大塚(智昭)さんといろいろ企んでるところ。レンタル屋さんに杵と臼はもうお願いしてあるんだけどね。「餅米は3kgでいい。あとで楽屋で振る舞うから」とか言いながら(笑)。
──では最後に、当日野音へお越しになるお客さんに向けて一言ずついただけますか。
翔:防寒対策をしっかりして来てほしいですね。来てくれる人たちは絶対に後悔させませんし、まだお悩みの方は騙されたと思ってぜひ来てください。皆さんがこれまで生きてきた中で全く経験したことのない感動と興奮がこの日はずっと起こり続けるはずなので。手前味噌で恐縮ですが、この2024年を生きていてRATBONESと氣志團を知らないのは本当にもったいないので、この記事で少しでも興味を持った方はぜひお越しください。信頼と実績の二バンドですから(笑)。
睦:あと、宝塚ファンにもぜひ来てほしいね。宝塚と同等の感動を味わえると思うので。
翔:われわれセクシーアウトローバンド二組が織りなすレビューをぜひ。歌劇団の“歌劇”がちょっと違う字かもしれないけど(笑)。