「やるなら今しかない!」──バンドセットへの挑戦と7周年ワンマンライブの裏側
撮影:牧野健人
──それでは、今年の大きな山、7周年を迎えた東京キネマ俱楽部でのワンマンライブの話を聞かせてください。バンドセットは初めてだそうですが、それをやろうって決めたっていうのはどういう経緯だったんですか?
田中しろめ:去年末ぐらいに、来年やってみたいことで「バンドセットやりたい。もうそろそろいいんじゃないか。頼む、やらせてくれ」ってお願いしました。いつやるの? 7年も経つのにいつやるの? って。
廻環美:ずっと言ってたよね、バンドセット。
田中しろめ:言ってはいたけど、できるの? できないだろうって。
廻環美:今までは現実的でもなかったし。
田中しろめ:もうちょっと! いつになったらできるの!! って。
──期が熟した感みたいなのがしろめさんの中にあった?
田中しろめ:いや、そういうわけではないけど、でもやりたい!! ってね。とにかく。
──しろめさんがそうなったら大体通るっていう感じなんですか? 棘-おどろ-の中では。
一同:いやいやいや。
田中しろめ:そんなことない。ちゃんと自分たちにできるかどうかは考える。でも、バンドセットもできるのか? って言ったら絶対できる! と思って言ったわけじゃないけど。なんだろうなぁ。
廻環美:「そろそろ…バンドセット…(左右の人差し指で「一」の字にしている)みたいなのはありました。ちょっと動きだから難しいね。
──僕は初めてだと思ってなかったんですよ。初のバンドセットということで、大変なこともありましたよね。
猫田れん:リハーサルで、同じ曲なのにバンドセットになると違う感じに聞こえて難しかった。あれは知らない歌だったと思う。
木村おまる。:バンドセットは結構限られた時間での練習でした。長い時間かけてできなかったから、一点集中で棘-おどろ- の5人もバンドメンバーの方も「これで合わせよう」くらいの気持ちですごく集中してやりました。短期集中だったんですけど、それがワンマンに向けてみんなで頑張っている感じがあって楽しかったです。
廻環美:なんかちょっと青春みたいな感じでした。
木村おまる。:バンドメンバーという仲間も増えて、みんなで一つに向かって、みたいな。すごく楽しかったです。
月城ゆのん:私は、バンドアレンジならではの「Bang!Bang!」の間奏の煽り、コール&レスポンスのところ。
猫田れん:それは苦戦したところだよね。
廻環美:確かにあの日一番大変だった!
田中しろめ:本番は割となんとかなったけど、練習、リハーサルでは一回もちゃんとできなかったの。
月城ゆのん:答えはないんだけどなんか…。
田中しろめ:これはミスってるな、これはまずいやって(笑)。
廻環美:難しかった。棘-おどろ- は突発的なのがすごい苦手で、みんないつもいろいろ事前に決めておきたいタイプだから、今回アドリブでやってみようって言われて「無理っす!! お願いだから決めさせてください」って言って。
猫田れん:リハで唯一、そこだけめちゃめちゃ時間かかったね。
木村おまる。:実は、ここだけの話だよ。コール&レスポンスめっちゃ頑張りました(笑)。
月城ゆのん:「ヤーヤーレディゴー」を言ってもらいたい気持ちだけで、あんなに時間かけた。
廻環美:あそこめちゃくちゃ練習してるのちょっとダサいよね(笑)。
田中しろめ:なんか棘-おどろ- っぽいよね。 煽り方めちゃめちゃ練習したの(笑)。
木村おまる。:今後できるようになろうね、の課題でもあったね今回の「ヤーヤーレディゴー」。
──なるほどね。今回バンドも3人とも女性っていう、そういうふうにできたらいいなみたいなところもあったんでしょうか? 人選はどのように?
社長:ハジメチカ氏です。女性がいいってことだけで、めっちゃ探してくれました。
月城ゆのん:お客さんからも「この人がバンドセットライブで出てくれるんだ! まさかの!」みたいなコメントはいっぱいあったね! バンドセットだと男性だけとか、男性と女性が一緒やったりすることが多いから、今回のガールズバンドは本当に本当に青春だった。
木村おまる。:仲間感が強くて優しい方たちだった。
田中しろめ:普段自分たちが別のアイドルさんの曲を一曲覚えてやるだけでもめちゃくちゃ大変なのに、10なん曲も覚えて本当にすごい。すごすぎる。
木村おまる。:とても貴重な体験をさせていただきました。何度もできることじゃないね。
田中しろめ:頑張ればできるかもしれない。頑張ります。俺たちが頑張るしかない。
──ありがとうございます。今回バンド編成という初めての挑戦が一つあったと思うんですけど、普段の棘-おどろ- のライブの作り方は、セットリストだったり、ワンマンみたいな大きなところだと全体の演出とかはどのように決めるんでしょうか。
廻環美:普段はメンバーで決めているんですけど、今回のワンマンに向けてはいろいろと決めてもらった部分も多いです。
田中しろめ:セットリストが送られてきて、ふむふむ、ってして。この曲の終わりはこうする、ここのMCは誰が喋ってどうする、みたいなのをしろめちゃんが言うっていう感じです。
木村おまる。:セトリを見てしろめちゃんが誰がどこやる、って言うのは毎回だけど、最近はどうする? って聞かれたら、誰かが「最近やってないから私やるよ」みたいなことがライブ前ルーティンになっています。
──ステージの使い方とかはアドリブで自分たちでやってみようという感じだったのか、誰かからアドバイスがあったんですか?
田中しろめ:ここ行けるから行けとか、この曲のここ行けるから行こうとか。あとは、ゆのんちゃんは勝手に行けるから行ってみようとかはありました。
廻環美:私は「この曲のここ、かんちゃん行けるから行きな!!」って結構直前に言われて、「私無理です!!」って。
──行きな、っていうのはメンバーの中で?
木村おまる。:オイラが言った。かんちゃんここだよって。こんな直前に言うもんじゃないなって思いながら言った。
廻環美:で、本当にできない。すみません。無理です。って。
──それがすごい印象に残ってたんです。一曲ごとに見せ場があって。みんなで作っていったんですね。ありがとうございます。ライブ前は緊張されましたか?
廻環美:みんな緊張してて、しめちゃんが「大丈夫だよ」って言ってた。私は大丈夫だよって言われちゃうと「ああ、大丈夫か」みたいに安心しちゃうから、「私には大丈夫じゃないって言って」って言ったら「てめえは大丈夫じゃねえから」って。本当にそれがライブ出るその直前で、私はありがとうって(笑)。
田中しろめ:その動画が残ってるんだけど、めっちゃやばい顔、怖い顔して言ってた。
廻環美:私はそれで頑張ることができました。
月城ゆのん:全員から言われてたもんね。かんちゃんは大丈夫じゃないからねって。
──逆に「大丈夫」って言われるとどうなっちゃうんですか?
廻環美:めっちゃ調子乗って、間違えます。多分みんなが右行くとこで一人だけ左に行ったり、明らかに初めて見た人でも「あ、あのメガネの人間違えたな」ってわかるミスをしちゃうから、大丈夫じゃないって思わなきゃいけない。
木村おまる。:程よい緊張感があったほうがうまくいくタイプだよね。私も一緒のタイプだからめっちゃわかる。緊張してないと集中がどっかいっちゃって、ほわーってして間違えるんだよね。
月城ゆのん:おまるちゃんにも大丈夫って言っちゃダメだね。
田中しろめ:てめえら大丈夫じゃねえよ両方!!
──ゆのんさんはどうでしたか?
田中しろめ:ゆのんちゃんは終始泣いてた。
──確かに泣いてましたね。映像で見返しても、この人は多分泣いてるなと。
一同:(爆笑)
月城ゆのん:一生分泣いてました。やり遂げたぞ、の涙。この5人で7周年迎えられてよかったなっていう。
田中しろめ:すごい泣いてるから、どうしたのどうしたのって。怪我したとか、嫌なことされたくらいの「お゛ーーーん」っていう泣き方で悲しい泣き方だったからどうしたのかと思って。
月城ゆのん:スタッフさんとか、見に来てくれたアイドルさんが通る度に、本当にこんなにたくさんの方に愛されて支えられてるんだっていうのが出てきて、ライブが終わって楽屋にスタッフさんが入ってきて「お疲れっ」て言われた瞬間に「お゛ーーーん」って。もう嬉しい涙がずっと流れてました。
──ライブの前日まで路上に出て、チケット販売を頑張ってましたよね。それを実際買ってきてくれた方はわかりましたか?
月城ゆのん:初めての人も結構来てくれてたのはわかりました。
廻環美:あとは、お客さんの友達のお客さん、「あそこの現場よく行ってるやつらみんな友達だから、みんな連れてきたよ!」みたいな。ありがたかったよね。
木村おまる。:キネマ倶楽部は明るかったから、意外と全員の顔が見えて。あの時渋谷で会った人だ、本当に来てくれたんだねっていうのが本当に嬉しくて、一人一人の顔見ながら感謝してました。あとはやっぱり『xxxx』のお披露目。バンドセットでやって、アンコールでオケでもう一回やったの。
廻環美:バンドで最初に披露して、アンコールでもう1回やった時にもうお客さんが振りを覚えてたのが嬉しかった。
田中しろめ:ミックスも入ってたよね。すごいよね。
廻環美:適応能力がいい。
猫田れん:それだけキャッチーな曲な気がする。1回聴いたら覚えやすい曲で、しろめちゃんの振り付けも覚えやすいし真似しやすい。爆売れしますわ、この曲は。爆売れ、代表曲になる。結構マジでなるよね。予言者です。
──まとめとして、しろめさんに伺います。今までにワンマンもたくさんやられたと思うんですけど今回の7周年を迎えたワンマンというのは、どういうものでしたか?
田中しろめ:バンドセットできたのが嬉しかったことと、オケと両方やれてよかった。あとはなんだろう、最後にみんなに、8周年は気が早いけど8周年もその先も頑張るからって今の時点で言えたのはすごく良かったなと思います。棘-おどろ- は3年経つくらいまではいつ解散してもおかしくない状況だったから、そういうことが人前で、皆様に言えるようになったことはすごく良かったと思います。
廻環美:しろめちゃんの口から明確に「8周年」みたいなのを聞いたのは初めてだった気がする。
田中しろめ:そうですね、未来のことはあんまり。
廻環美:これからも一緒に、みたいな、曖昧な感じでふわっと言ってたことはあるけど。
田中しろめ:アイドルは何があるかわからないっていうのがあったけど、今なら言って良いのではと思いました。
──確かに今回はMCで一人ずつ喋る枠がなかったので、最後の言葉は僕も記憶に残っています。