連載10年を迎え多くのファンが待望していた『妖怪学校の先生はじめました!』がアニメ化。人間らしさと妖怪ならではの不思議さを兼ね備えたドタバタ劇の本作はどのようにアニメ化されているのか。原作者である田中まい氏に放送直前の今の思いを聞いた。
[interview:柏木 聡(LOFT/PLUS ONE)]
不思議な感覚でした
田中まい:あまり実感がわかなかったです。夢なんじゃないかという気持ちもありました。
――実感がわいたのはいつ頃ですか。
田中:アニメ化の連絡をいただいた1週間後に打ち合わせがあったんです。それはアニメについての打ち合わせではなく連載に関しての打ち合わせだったんですけど、その時にアニメ化についての諸注意や契約事項といったリアルな話があってこれは現実なんだと思いました。
――契約の話となるとリアルですね。
田中:現実味を帯びて急に緊張してきました。『妖はじ』は今まで私と担当編集者さんとで作っていましたが、アニメスタッフのみなさんがどんどん増えていったので不思議な感覚でした。スタッフのみなさんから『妖はじ』の話をふられ、当たり前ですが「読んでいただけてるんだ。」と感動しました。
――今はSNSで感想を見られますが、読者のみなさんと直接会って話すということはないですよね。
田中:今までは妖精などと一緒で読者のみなさんが実在するのか曖昧な気持ちもあったんです(笑)。
――連載が10年続く人気作を描かれていてもそうなんですか。
田中:実はそうなんです。
みなさん真剣に考えてくださっている
――小野勝巳監督やアニメスタッフのみなさんに会った際のお話を伺えますか。
田中:最初は凄く緊張しました。私は自分の意見を話すのが苦手なんですが『妖はじ』の連載を続けてこれたのは読者のみなさんに支えていただいたからなので、読者のみなさんのためにも伝えなければいけないことはしっかりと言わないといけないという意気込みで臨みました。話す前は私の希望を聞いてくださるのかドキドキしましたが、みなさんが私の希望を最大限反映しようとしてくださっていることが伝わってきました。
――頼もしい。打ち合わせではどういったお話をされたのですか。
田中:いろいろな話をしましたが、一例をあげると安倍晴明(あべはるあき)の性癖の表現についての話をしました。アニメ化にあたって変更せざるを得ない部分で、そのことは事前に伺っていたのですが実際にはどう変更するか気になっていました。
――漫画ではコメディに見えても、アニメで動いて音が付くと生々しくなってしまう部分ですね。原作では犬用コスチュームのセーラー服でも喜んでいて、晴明は制服自体が好きで中身に興味ないんですよね。
田中:中身に興味がないとはいえ女性が着ているものなので、変えざるをえない。その中でもどうするのがベストなのかをみなさん真剣に考えてくださっているのはありがたかったです。
――ほかにもアニメならではの表現はありましたか。
田中:普通ではない動きの部分です。
――普通とは違う動きというのは。
田中:例えば漫画の中の晴明に対するセリフに「なんだ、あの人間離れした動きは」といったものがあるんです。その動きが本当に人間離れしていて凄いと思いました。『妖はじ』はタイトルにもある通り妖怪たちが出てきます。妖怪の動きも漫画では描けなかった部分をアニメで表現されていて感動しました。
――『妖はじ』はコメディ要素が強い作品です。コメディはテンポが大事になりますが、そういった言葉で説明しづらい部分はどのように共有されたのですか。
田中:シナリオ打ち合わせの際に作品のテンポについてもお話しできる機会が取れたので、ニュアンスなどについても共有することが出来ました。その際にストーリーの整理に関しても相談できました。
――ストーリーの整理とは。
田中:30分のアニメでは漫画1話では尺が足りず、2~3話でアニメ1話を作っているんです。そうなると漫画では違う話数だったストーリーと繋がりを作らなければいけない事もありますし、逆にアニメの1話では余分になってしまい削らなければいけない事もあったんです。
――その取捨選択はなかなか大変な作業ですね。
田中:『妖はじ』はコメディ要素が強めですが、そんな中にも真面目なストーリーラインの伏線が含まれています。真面目な要素も『妖はじ』の大事な部分なので、そういった部分を残しながら『妖はじ』らしい明るいお話になるように頑張っていただけました。
――アニメならではの構成・表現もありましたが、そんななかでも漫画の空気感が取り入れられているのは素晴らしかったです。
田中:スタッフの皆さんの頑張りのおかげです。
キャラクターたちの生活を感じとれた
――キャストのみなさんの演技も重要な要素ですが、如何でしたか。
田中:主人公・安倍晴明役の逢坂良太さんをはじめ、素晴らしい演技をしていただけました。ガヤ部分でもみなさんには面白いアドリブをしていただけています。ただ面白いだけでなく、キャラクターのイメージを崩さない様に演技されているのには感動しました。担当編集者さんは「男子高校生の日常を観ているみたい。」とおっしゃられていました。
――分かります。
田中:はっちゃけすぎて、NGが出されていた方もいらっしゃるくらいで(笑)。
――素晴らしいです。アニメ化前から声のイメージは持たれていたのですか。
田中:具体的な声のイメージはなくて、あったのはこのキャラクターはこのキャラクターより声が高いくらいの大まかなイメージだけでした。ただ、ドラマCD化をしていたので、その時の声とイメージが離れないようにお願いしました。
――完成したアニメを観られてましたか。
田中:はい。アニメならではの要素もあって感動しました。
――アニメならではの部分とは。
田中:先ほどお話したガヤと近い部分ですが、奥にいるキャラクターたちの日常が流れているのがアニメ化・映像化ならではだと思いました。そういったところでキャラクターたちの生活を感じとれたのはとても嬉しかったです。