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INTERVIEW

トップインタビュー上西琢也(監督) ‐ オムニバス映画『GEMNIBUS vol.1』より『ゴジラVSメガロ』僕が観たかった要素を詰め込みました

僕が観たかった要素を詰め込みました

2024.06.26

YouTubeにて公開され国内外を問わず多くのゴジラ、怪獣ファンを熱狂させた『ゴジラVSメガロ』5.1chで劇場公開される。令和に新たな姿で私たちの前に現れた本作。短い作品ではあるがファンも納得の映像となっている。ゴジラ愛に溢れる監督・上西琢也に本作に込められた思いを話を聞いた。
[interview:柏木 聡(LOFT/PLUS ONE)]

ちゃんと伝わるんだと感激しました

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――上西琢也監督のゴジラ体験はどの作品になりますか。
 
上西琢也:いわゆる平成ゴジラと呼ばれている頃の90年代前半の作品を小学生のころに映画館で観ていました。
 
――やはり、そうだったんですね。私も同世代なので、近いものを観ていたんじゃないかと感じていました。
 
上西:子供のころは批判や疑問なく作品全てを受け止めていました。なので、ゴジラは好き嫌いを越えてる感じがあります。
 
――上西監督にとってのゴジラは原点となる作品の1つなんですね。
 
上西:そうですね。
 
――『ゴジラVSメガロ』は10分ほどの短い作品ではありますが、印象的なシーンが沢山ある映画です。例えば避難シーンでは人々が怪獣に慣れていて、「また怪獣警報でたね。」くらいのノリで歩いて移動していたのがリアルだなと感じました。
 
上西:『ゴジラVSメガロ』と『ゴジラVSガイガンレクス』は繋がっているんです。メガロが現れるまでの期間にもゴジラが暴れまわり、慣れてしまったという設定があるんです。日本人は少しの地震では落ち着いているというのに近いですね。
 
――そこが実際の人間心理に結びついていて、面白かったです。もちろんアクションシーンも見応えがありました。特にドロップキックをあれだけ格好よくリブートしていただけたのは嬉しかったです。観ていて「ありがとうございます。」となりました。
 
上西:そう言っていただけて嬉しいです(笑)。映画『ゴジラ対メガロ』(1973)で登場したドロップキックは絶対外せないなと思ったので、成り立たせるために手から熱線を出すシーンを入れました。
 
――観ていてその方法があったかと、痺れました。メガロがドリルで突撃するシーンも格好良かったです。
 
上西:メガロならドリルはやらないといけないですから。
 
――YouTubeでは海外の方からのコメント多く、それがキッカケで知ったのですがメガロは海外での人気が高い作品なんですね。
 
上西:レジェンダリーゴジラの影響もあると思いますが、映画『ゴジラ対メガロ』は海外のTVで何度も放送されていたみたいです。
 
――YouTubeのコメントは読まれましたか。
 
上西:はい。リアルタイム世代の方も喜んでいただけて嬉しかったです。自分が込めた意図を汲み取ってくださったコメントもたくさんあり、ちゃんと伝わるんだと感激しました。
 
――それだけ、気持ちの込められた作品ですから。前作『ゴジラVSガイガンレクス』もそうですがあんなに凄いものを無料で公開してはダメだと思います。ちゃんとお金を取らないと。
 
上西:ありがとうございます(笑)。まずは知っていただかないとという部分もあります。

ゴジラには逆境に立ってもらいました

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――メガロは海外ファンも多いということですが、そこを意識した部分はありましたか。
 
上西:海外の方も格好いいと思っていただけるよう、メガロのデザインには気を配りました。
 
――デザインが格好良いシーンだけでなく、角をもがれたりダメージ表現も素晴らしかったです。
 
上西:角があるともぎたくなりますから。VS作品は欠損や破壊が意外とあるんです。僕はあの死闘感が好きで、目に見えたダメージ表現をやりたくなってしまいました。
 
――ゴジラならではの様式美が沢山あるシリーズだと思っています。例えば、空を仰いでの咆哮・放射熱線・音楽でも素晴らしいメインテーマがあります。今回のように短い作品では上西監督がやりたいことと様式美を上手く組み合わせるのは大変ではなかったですか。
 
上西:大変ではなかったです。近年のゴジラもいい作品ばかりですが自分が観たいゴジラの要素が入っていなかったりするので、僕が観たかった要素を詰め込みました。大きな部分で言うと怪獣バトルがそうです。
 
――自分の中にあるゴジラ像をだす作業と、過去作をリスペクトして活かす部分のバランスはどのように取られたのですか。
 
上西:メガロのデザインをするときもそうですが、まずは73年『ゴジラ対メガロ』だと認識できる要素を入れるように意識しています。シートピア海底王国のシーンもそうですし、メガロが地面からでてくるシーン、手のドリルといった技などがそうです。特にメガロというキャラクターを変えないに気を付けました。別怪獣にしてしまうとそれは別怪獣にすればいいのではとなりますから。
 
――今作でこれが出来て良かったなと思う部分はありますか。
 
上西:新しい技を出せたことです。実は、放射熱線をどこから出せてもいいんじゃないかとは思っていたんです。前作『ゴジラVSガイガンレクス』でかなり暴れたので、そのままインフレしていくのは違うなと思っていました。なので今作ではまだダメージが残っていて、ガイガンレクスの時より弱っているという設定になっています。よく観ていただくわかりますが熱線が途切れていて、疲労から放射熱線が出せなくなっているという状況なんです。今回は殴り合いをしてほしかったので、ゴジラには逆境に立ってもらいました。
 
――その選択は正解だと思います。放射熱線も良いですが、それだけでは空中戦で終わってしまいメガロの良さが無くなってしまいますから。
 
上西:そうですね。
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LIVE INFOライブ情報

オムニバス映画『GEMNIBUS vol.1』
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6/28(金)よりTOHOシネマズ日比谷・TOHOシネマズ梅田にて2週間限定公開
 
1.『ゴジラVSメガロ』
タイトル:『ゴジラVSメガロ』
脚本・監督・VFX:上西琢也 撮影監督:柴田晃宏
編曲:半田 翼
出演:岡本弥歩/阿座上洋平
制作プロダクション:白組、東海制作
 
2.『knot』
脚本・監督:平瀬遼太郎
音楽:森いづみ
出演:三浦貴大 SUMIRE 柊木陽太 川原瑛都 杢代和人 田村健太郎 徳橋みのり 野波麻帆 金子ノブアキ 滝藤賢一
制作プロダクション:AOI Pro.
 
3.『ファーストライン』
脚本・監督:ちな
音楽:角野隼斗
出演:田村睦心/斎藤志郎
制作プロダクション:TOHO animation STUDIO
 
4.『フレイル』
脚本・監督:本木真武太
音楽:斎木達彦
出演:奥平大兼 / 莉子 今井柊斗 /大石吾朗
制作プロダクション:Virgin Earth
 
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