自身のルーツを辿る原点回帰的イベントであり、奥深さも滲み出るはず
──改めて、今回はアコースティックということで、これもプレイヤーとしてはルーツと言いますか、原点回帰で。
桜井:そうですね。どんな人も一度、アコースティックに舞い戻るじゃないですか? そもそもバンドを始める前に弾き語りとかから始まってるわけだし、自然な流れなんですね。ルーツというか原体験に戻るだけなので。
──このキャリアだからこそのアコースティックの味もあると思うんですよ。
桜井:うん。若い頃は、メロディに対してのコードがすごいベタな感じだったんですよ。いわゆるフォークなやり方ですよね。ただここまで長くやってると、コードに対してのメロディの乗り方が変わってくる。フォークな感じじゃなくなってくるんですよ。不思議なんですけど、昔の曲って今やると、自分で作ったのにも関わらず、コードが変わってるんですよ。
──どうしてそういうことが起こるんですか?
桜井:これ、メロディは一つでもコードって無限に乗せられることに気が付いたんでしょうね。曲をたくさん作っているうちにいろいろ覚えていって。昔はセブンスもナインスも知らないからベタなんですよ。
有村:そういうことね。自分の中でクセになってるコードとかもきっとあるよね。
桜井:いわゆるアンサンブルの中でやっているものを、アコースティックに落とし込んだ結果、気が付いたんですけどね。だからやっぱり面白いなと思いますね。
有村:知識がなかったからこそ面白いものができたりもするしね。プラだとメロは俺が作ったけどコードは正くんみたいなのもあるから、改めてギター一本で弾き直してみると“なるほど、こうなってたんだ”という気づきもある。
桜井:うちも気づきがあって。今回さ、30周年で「冬の日」を録り直したの。研次郎くんがいるからなんだけど、コードをこんなにオシャレにしてくれてたんだ、本当はこうなるのに…っていうことで、23年ぶりにダサいほうのコードをあえて使ったりして面白かった。
有村:バンドでやるのとアコースティックでやるのは全然違うからね。
桜井:コード感とかは顕著にわかりますよね、アコースティックに戻ると。あと私はギターだから譜割とか何も考えないで曲作っちゃてるんですよね。だから、アコースティックに立ち戻って、自分が歌ったときに初めてボーカルの気持ちがわかるっていう。この辺でブレスないとキツいよね。特にうちで言うと「ブルーフィルム」なんか、もうTOM★CATかよ!? っていうぐらいきついの。「冷たい雨」もなかなか。
有村:八分音符でブレス一個ってなかなかだけど、まあそこは秀仁くんだから歌えるんだろうね。
桜井:ナカちゃんの曲の場合はどうなの?
有村:ナカちゃんのは、たまにむずかしいよ(笑)。でも、作ってきた曲に応えたいじゃないですか。そういう気持ちなので基本的には頑張ります。どうしても無理ってときは言うかもしれないですね。
桜井:石井さんなら「“これは”無理」って言いますよ(笑)。
有村:自分で作る場合は基本的にギター一本で成立するものしかないので、そこの差を感じれる機会でもありますよね、アコースティックとか今回みたいなイベントは。
──先ほど青さんもおっしゃってたルーツを探るイベントとかって今ないよねっていうのもそうなんですが、こういうベーシックなイベントも貴重ですよね。削ぎ落すことでむしろ芳醇な味覚に出会えるという。
桜井:だからこういうイベントのときにこそルーツが匂い立つんじゃないですか。さっき言ってたじゃないですか、このイベントを選ぶのはコアなファンだって。コアなファンってルーツとかにまで興味を持ってくれてると思うんですね。だから今回は、双方のルーツみたいなバックグラウンドまで感じ取ってくれたら、それは嬉しいことだと思います。
有村:このイベントだけの楽しみもちゃんと提示したいとは思っていて。せいちゃんとも2人で会おうねってずっと言ってたんですよ。連絡返ってこなかったけど。
桜井:忙しいに決まってるじゃない。
有村:ははは。まぁでも、今からお客さんが喜んでくれるようなことを考えますよ。今からって言うか、この後、2人で飲みに行って。こういうイベントは僕的には毎年にやりたいなって思っているぐらいなので、その辺りも。
──今回成功したらその先も自ずと見えてくる、と。
桜井:普段ギターの人間が歌うという行為で、浮彫りになるものみたいな奥深さも滲み出るイベントになると思います。来てくれるお客さんはぜひ音楽を楽しんでください。顔で来る人はいないはずなので。
有村:わかんないよ~。
桜井:そういう慰めが一番いらないのよ!!
有村:いや、わからないですよ! ってことで(笑)。