fusenというバンドそのものが「変わる、変わる。」
──ツアーのお話が出ましたが、「変わる、変わる。」は最新曲のタイトルでもありますね。
林:リリース曲は全て僕が曲を作ってバンドアレンジは皆でやる形で作っていて、この曲もそうなんですけど、この曲は歌詞が出来上がってから「変わる、変わる。」のタイトルを付けましたね。去年から本当にいろんなことがあって…自分が地元から引っ越したこともそうですけど、友達が皆、東京とか遠い所に引っ越したりして地元に友達が全然いなくなっちゃったんです。それで、みんな大人になるということについていろいろと考えて…それぞれ自分の道を行ってるんだなと思ったりしたし、22歳ぐらいの年齢ってちょうど、お別れが出てくることが多いなと思って。家で家族がいる風景とかもだんだんなくなったりして、“これから大人になるんだな”っていう思いと、これからはこういうことの繰り返しで変わっていくんだなと思って、この歌詞を書きました。
──少ない音数の楽曲で、だからこそなのか、歌詞がすごく入ってきます。春先・旅立ちのシーズンに聴かれ続けていく楽曲になりそうな気がしますね。
林:ありがとうございます。音数に関しては、3ピースバンドなので音を入れすぎるのもどうかなと思うし、やっぱり歌・言葉が一番聴こえるように作っていますね。
上遠野:林の声は唯一無二なので、それを際立たせたいっていうのは曲(のアレンジ)を作っていても思いますね。
岡野:歌っていうのはやっぱりバンドとして一番重視したい部分ではあって、僕自身のドラムにしても歌がどう聴こえるかなっていうのを考えながら叩くようにしています。それと「変わる、変わる。」に関しては、上遠野がキーボードの音を入れたりしてね。
上遠野:小学校のときにピアノを習っていたのでそれを活かしてやってみました。
──鍵盤もそうですし、ギターの音もノスタルジックな雰囲気が感じられて。上の世代も気持ちがグッと引っ張られる一曲に仕上がっていますよね。
林:僕はもともと、お祖母ちゃんにギターを教えてもらったんですよ。お祖母ちゃんが出してくる楽譜やスコアがフォークソングが多くて、それを弾いてお祖母ちゃんと歌うっていうのをやっていて、そのせいで曲に(懐かしいような)匂いがするのかもしれないです。
──そうだったんですね、素敵なエピソード! ちなみに影響を受けた音楽やバンドなどもお一人ずつ教えてください。
林:中学に入ってからは、同級生に薦められたBump of Chickenが好きになって、今も好きですね。
上遠野:fusenに入る前の別なバンドにいたとき、最初はキーボードの予定だったんですけど“ベースがいない”ということになって(笑)。それで高1からベースを始めたので、そのときはゲスの極み乙女やRADWIMPSだったりをすごく聴いてましたね。
岡野:僕はビートルズが家の中でも車でも鳴っているような環境だったんです。ローリング・ストーンズやザ・フーとか、親の影響でほとんど洋楽のロックばっかり聴いてて、“そんなにロックを聴いてるなら音楽やりなよ!”って言われて。打楽器が好きだったし、小4からドラムを習い始めました。それで自分から聴いたバンドは邦楽だと、ASIAN KUNG-FU GENERATIONやサカナクションで、ライブ映像を見てますます“ドラムをやりたい!”っていう感じになっていきましたね。あとはチューリップとかも聴いたりしてました。
林:僕もお祖母ちゃんと一緒にガロをよく歌ってました。
どれだけ自由にライブをやれて、どれだけ自分たちを見せられるか
──昭和のフォークソングなどもルーツにはあるのですね。ではお話を戻して、現在進行中の東名阪3カ所のツアー、大阪・名古屋でのライブはいかがでしたか?
林:育ってもいないし行ったこともない場所で歌う、しかも新曲を聴いてもらうっていうのはメチャクチャすごいことだなって思って、“これから歌いに行くんだ!”って行く前から、そして移動の車の中でもワクワクしてました。いろんな方々にも褒めてもらえて、それが年齢が上の方も多くて。CDを会場で手に取ってくださった方もいたし、間違いなく届いてたんだろうなと思えて嬉しかったですね。
上遠野:初めてのツアーなので、ツアーってどんなものかも分からなくてちょっとした怖さもありつつ大阪と名古屋に行ったんですけど、僕は初日の大阪は後悔が残るライブになってしまったんですね。反省として、ちょっとした怖さから自信のなさが出ちゃったかな…って、客観的に見て思ってしまって。それで次の日の名古屋はその反省を活かしつつライブをやったら自分でも自信がつくような良いライブができたので、ライブの見せ方や聴かせ方というのを勉強できたツアーでもあるなと思ってますね。
岡野:まずは遠くに行くというだけでも気分が盛り上がりながらプラスアルファで、自分たちがしっかり見せたいものがあって行く。“大阪に行って美味しいものを食べよう”では済まない、遠征とかツアーの本来の気持ちってこうなんだろうなというのを感じました。それがこれから、たとえばアルバムが出来てアルバムを持ってツアーを回るっていう将来の話に繋がっていくんだなと思ったし、上遠野も言った通りで“自信を持つ”っていうのがすごく大事になるんだなと。僕も大阪では空気感に押されてしまったんです。でもそれを名古屋では“しっかり自信を持つ”っていう意識で臨めて、成長にも繋がったと思ってて。これが「変わる、変わる。」という曲を持っていった意味でもあり、自分の中で変わった部分なのかもしれないと思えました。
──そしていよいよワンマン公演でのツアーファイナルです。ファイナルに向けた意気込みなどをお一人ずつ聞かせてください。
林:できるだけ自由に、自分たちそのままの人間で自分たちがやりたいことをやって、それを見ていただけて“いいな”と思ってもらえるようなライブをしたいなと思ってます。対バンだと30分とかのセットリストになってしまうんですけど、今回は、自分たちの好きな曲をできるだけ長く、いつもとは違う曲順でもできたりするので、頑張りたいなと思ってます。
上遠野:林と同じように、まずは自由に。それが一番大きなところで、あとワンマンなのでライブの見せ方にしても長く、自由に披露できる日だなと思っていますし、「変わる、変わる。」のツアータイトルだからこそ、どれだけfusenが自由にライブをやって、どれだけ見せられるか。その上で、fusenはどれだけ変わったのかというものを見せられたらと思っています。
岡野:自主で、ワンマンでのライブというのが初めてなんです。経験したことがないですし、“ワンマンってどうなんですか?”っていろんな知り合いに聞きながら探求できていて、ワンマンってそれだけ特別だなと思ってますし、その特別なものをやるために練習に入って、またさらに特別なものにしていけるかというのを考えている今日この頃ですね。30分のセットリストには慣れてきているところがあるんですけど、ワンマンは初めてだからリハーサルも一つ一つ、すごく大事に時間を使えている実感があって。苦悩してます(笑)けど、楽しくリハに入って“この曲順にしたい”とか、意見がぶつかり合いながら話し合いができている。それは“こう聴かせたい”っていうお互いの譲れない意思があるからぶつかるわけで。そういうこともワンマンだからこそ出てくるなと思いながら、着々と今、頑張っているところです。
──“苦悩”という言葉が出ても、話す表情を見ていると楽しいほうが勝ってますよね。
岡野:そうですね。考えているときはどうしよう…ってなるんですけど、リハが終わった後は“あれ、良かったよなぁ”って思いながら電車に乗ってるので(笑)。
──そして今回、なんと初ワンマンでしたか。それは大事な1日ですね!
上遠野:はい、すごく大切な日です。
林:いつも来てくれてる方はもちろん来て欲しいですし、本当にたくさんの方に見に来て欲しいです。