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INTERVIEW

トップインタビュー映画『NO 選挙, NO LIFE』公開記念対談・畠山理仁×前田亜紀

50歳、取材歴25年、平均睡眠2時間、選挙に取り憑かれた絶滅危惧ライター畠山理仁の選挙密着取材に密着!

2023.11.16

「すべての候補者の主張を可能な限り平等に有権者に伝える」ことをモットーに、選挙の面白さを四半世紀に渡って伝え続けているフリーランスライター畠山理仁。その活動をまとめた著書『黙殺 報じられない"無頼系独立候補"たちの戦い』は第15回開高健ノンフィクション賞を受賞するなど高い評価を受けてきた。
そして、選挙映画の金字塔『なぜ君は総理大臣になれないのか』『香川1区』(大島新監督)や、選挙ロードムービー『センキョナンデス』(ダースレイダー&プチ鹿島監督)など一連の作品をプロデュースした前田亜紀がついに選挙ジャーナリズムの総本山、畠山理仁の「候補者全員取材」に密着した。
選挙に取り憑かれた畠山の情熱と苦悩、その肩越しに見えてくる民主主義の姿とは一体どんなものか? 監督と被写体の二人に対談をお願いした。(TEXT:加藤梅造)

選挙はみんなに開かれた土俵なんだから、出たい人はみんな出て勝負すればいい

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──前田さんから密着取材を申し込まれた時、最初どう思いました?

畠山 前田さんとは『なぜ君は総理大臣になれないのか』や『香川1区』の時から仕事でやりとりする関係でしたが、密着取材を依頼された時は数日悩みました。もし密着したら僕の嫌な部分をたくさん見せることになるので、絶対に嫌われるだろうなと。
 
前田 返事が全然来ないので半分あきらめてました。
 
畠山 でも、自分が今まで取材をしてきた時は、相手に「ちゃんと取材に答えて下さい」と言ってきたのに、自分が取材される側になったら断るのはおかしいな、カッコ悪いなと思ってお受けすることにしました。もう嫌われてもしょうがないと(笑)。
 
──前田さんは制作の動機として「畠山さんは『選挙ほど面白いものはない』と言うけど、本当にそうだとしたら私も見てみたい」と言ってますね。
 
畠山 それも今回引き受けた理由で、選挙の面白さを前田さんに撮ってもらいたいという気持ちが強かった。僕は選挙の面白さを十分知っていますが、それを第三者に伝えるには同じ現場に来てもらうのが一番いい。絶好の機会です。
 
前田 『なぜ君は総理大臣になれないのか』『香川1区』で選挙を映画にして、どちらもすごくヒットしたんですが、観に来ている人にある党派性みたいな感じもあって、もっと違う層にアプローチできないかと思っていたんです。それで、「選挙ほど面白いものはない」ということを体現して生きている畠山さんが見つめるものをシェアできたら、みんなもっと選挙に行くんじゃないかと。ただ、本当に選挙が面白いのか? それとも単に畠山さんが変わり者なだけなのか?という疑問はありました。
 
──実際、密着してみてどうでした?
 
前田 どっちかと聞かれたらやっぱり後者かなと(笑)。いや選挙も面白いんですよ。でもやっぱり畠山さんの唯一無二感というか、誰にも真似できない面白さがありました。
 
──それは僕も思いました。例えば、映画にも出てくる「トップガン政治の中川さん」の面白さって畠山さんのフィルターを通さないとなかなか気づかない。
 
前田 私が取材しても絶対に見えない世界が畠山さんの肩越しだと見えてくるんです。
 
──いわゆる泡沫候補を畠山さんは敬意を込めて「無頼系独立候補」と呼び、「候補者全員を取材できなければ記事にしない」というルールを自分に課してますね。
 
畠山 とにかくエネルギーが違うなって思います。既存の政党から立候補するのも大変ですが、何もない所から選挙に挑戦しようという人の人間力はすごい。中には突拍子もない主張もありますが、時々、これは大政党も取り入れるべきだと思うこともたくさんある。なぜなら彼・彼女らは、四六時中、政策のことを考えているからです。もちろん当たり外れもありますが、いろいろな可能性のボールを投げ続けている。百球投げた球の中に1つ金色のボールがあるかもしれない。いや、絶対あるだろうと思って日々候補者に会っています。
実際、会うとすごく元気をもらえるし、もしかして自分にもその可能性があるんじゃないかと思えるんです。無名の自分でも何かを発信することで誰かを勇気づけることができるかもしれないと。それが全員取材を続ける原動力ですね。
 
──独立系候補者のエネルギーは前田さんも感じました?
 
前田 畠山さんは常々、「候補者を現場で直接見て下さい」と言っていますが、それに対して私は懐疑的で、それこそテレビでもYouTubeでもいいじゃん、わざわざ行く意味あるのかなと思ってたんです。それが、今回、参議院選(東京選挙区)の34人の候補者全員に会った結果、自分の投票行動がそれまでと全く違っていたんです。今までは公示日に自分の投票しそうな候補者はだいたい絞ってましたが、今回は誰に投票するのかすごく迷って、しかも最終的には自分でも想定外だった人に投票したんです。それはすごく面白い経験でしたね。だからこの映画を見た人にもそういう自分の中の変化を感じてもらえるといいな。
 
──畠山さんが独立系候補者に対して「多額の借金をして、選挙に出て、みんなからバカにされてもずっと続けている姿は自分と似ている」と言っているのがとても腑に落ちました。
 
畠山 これだけ自由に生きている人たちがいることに勇気づけられます。僕は、有権者が「自分には力がない」と思ってしまうのがすごく残念なんですよ。有名じゃないことが悪いことみたいに思われがちだけど、そもそも政治は有名じゃない人のためにあるし、無名の一人一人が望む社会を作っていくのが政治です。民主主義のルールの中で選挙に出ている人たちは、僕らの代わりに立候補してくれている。
だから、その人に対する尊敬の念は無くしちゃいけない。当選できるのは立候補した人だけなんです。候補者をバカにする風潮が広まることで、本来立候補したい人があきらめてしまうことになるのは、社会にとって大きな損失だと思います。
選挙はみんなに開かれた土俵なんだから、出たい人はみんな出て勝負すればいい。堂々と立候補している人をバカにするのは絶対に間違っている。たとえその思想が危険だと思っても、有権者はその人に票を入れない、別の人に投票するという強い権限を持っている。有権者も試されているのだから、その権利を行使すべきです。それを言い続けるのが僕の仕事だと思っています。
 
前田 投票する人が主体だということなんですね。
 
畠山 そうです。主権者ですから。無名の候補を大事にしない人には、無名の自分が大事にされなくてもいいんですか、と問いたい。「どうせ俺なんて相手にしてもらえないんだ」ってあきらめちゃったら、政治って絶対よくならない。本来は誰もが「俺の意見を聞け」って言っていいはずなのに、そういう雰囲気になってないことはすごくよくないし、みんなのためにもならないと思います。僕にとっては、そのことを伝えるための方法が「候補者全員取材」なんです。
 
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LIVE INFOライブ情報

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ドキュメンタリー映画
『NO 選挙, NO LIFE』
2023年11月18日(土)よりポレポレ東中野ほか全国順次公開
出演:畠山理仁/監督:前田亜紀
プロデューサー:大島新/音楽:ベーソンズ
2023年製作/109分/G/日本
配給:ナカチカピクチャーズ
 
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(関連作品)
『劇場版 センキョナンデス』
監督:ダースレイダー、プチ鹿島
プロデューサー:大島新、前田亜紀
2023年11月30日 DVD発売
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