ズレながら進んでいるからこそ面白い
北:私が初めて春画というものに触れたのは中学生の時で、友達の家に行ったときに「これ見て、江戸時代のエロ本らしいよ」ってネットにあげられているものを見せられて。その時はこれは隠れてみるものだなと思いました。『春画先生』をやることになって改めて資料をいただいて見てみると、エッチなモノというよりは何故こんな表現をしているんだろうかといろんなことを考えさせられました。細かく見ていくとヒントが散りばめられえていて、その時の状況・情景がいろんなところに隠されているのが面白くて、美しいなという目線で見るようになりました。
――海外の裸婦像などとは違う文脈がありますよね。
北:そうですね。
――笑い絵とも呼ばれているだけあってどこかコミカルな部分もあり、昔の人達も面白いものとして見ていたんだなと思いました。日本だけでなく海外の人にも受けたのは、庶民文化だからこその自由さなんだろうなと。
北:ここまで春画に真正面から向き合った映画がなかったというのも意外ですよね。
――時代が追い付いたということなのかもしれないですね。
北:確かに。
――みんな愛情表現が独特じゃないですか。
北:そうですね。
――好きだという気持ちが勝つので、芳賀先生の独特の愛情表現を拒否せずに受け入れていく。本当に癖のある愛情表現ですが、その表現方法はすんなりと受け入れることが出来ましたか。
北:確かに豊かすぎる愛情表現ですが、その感情はみんな持っているものだと思います。実らない思いを何かで埋めるということを弓子は凄く大胆に表現しています。表現としては豊か過ぎるかもしれませんが、分からなくはないです。
――ある意味、究極の愛ですからね。
北:ですね。
――私なんかは辻村のような立場になったら、心が持たないです。あそこまで誰かに傾倒した経験がないですね。
北:みんな変なんです。ズレながら進んでいるからこそ面白いんだと思います。
――嫉妬なのかと思っていたら芳賀先生と弓子の仲をみんなそれぞれの方法で後押ししているお話でしたね。しかも、その後押しの仕方が独特という。
北:本当にそうですね(笑)。登場人物それぞれが全員幸せに向かって突っ走っている姿に噓がない。
――それだけ特異な人々でしたが楽しく観させていただきました。
北:有難うございます。
この変わったラブコメを観返したい
――これだけ不思議な作品を作られている方ですが塩田監督はどんな方ですか。
北:凄くピュアな方で少年のような方だなと思いました。
――内野さんはどんな方ですか。
北:内野さんは本当に素敵な方です。役との集中力の切り替えが凄く、お芝居に対する集中する力が凄いです。
――内野さんも猪突猛進でのめり込むタイプの方なのかもしれませんね。
北:そうだと思います。
――『春画先生』はそんな2人が出会ったからこそできた作品なんですね。
北:そうですね。
――完成した作品を観られて如何でしたか。
北:本当に面白かったです。コメディとしても成立している作品だと思います。それをコメディだと思って演じていない感じが良いですね。みんなが真剣に自分の幸せに向かって進んでいる、それが少しズレている。その姿が滑稽でいじらしいかったです。
――物語を知ったうえで観返すと違ってきますよね。
北:全部の見え方が変わりますよね。私もこの変わったラブコメをまた観返したいと思います。
――ラブコメか、その視点はなかった。新鮮です。
北:コメディ要素強めですから(笑)。
ST:鵜島ほのか
HM:南野景子
▼衣装クレジット
AOIWANAKA(白いキャミソール)
MARTE(黒のレースブラウス、緑のパンツ)
Jouete(イヤリング、イヤーカフ、リング、チョーカー)
seven twelve thirty(パンプス)
©2023「春画先生」製作委員会