8月22日(火)に開催される『LOFT RECOMMEND 2023〜ロックな宴編〜』は計4組の出演者がいるイベントで、10代の方にはドリンク代のみ¥1,000で入場可能な10代割も発売されており、ライブハウスが初めてという方から音にまみれ耳が肥えている方まで来てソンはない夜だ。そんなこの日に出演する1組がYOWLL(読み:ヨウル)。Brian the Sunの活動休止後、ソロプロジェクトを立ち上げ活動してきた森良太が今年に入ってスタートさせた3ピースバンドだ。スタートのきっかけやバンドについては早速、インタビューでじっくりとお読みいただくとして、ただ一言、森良太という才能の存在に世間はもっと気づくべきだと思っている。ということでこの日は、新宿ロフトに集合ですぞ!(interview:高橋ちえ)
“とにかくいっぱいライブをしたい” シンプルな思いに突き動かされ
──近況から伺うと、最近はどうされてましたか?
森:都会の暮らしが合わないなと感じて、大阪市内からちょっと田舎のほうへと引っ越しをしていて忙しくしてましたね。今は時間の流れもゆっくりで、スタジオに行くのも移動で2時間ぐらいかかる不便さはあるんですけど、移動中にCDを聴いたりするのが新鮮ですね。こういう時間ってなかったよなぁ、と思って。
──バンド・YOWLLとしてリリースした最新作『Cyanotype』は引っ越してからできた作品でしょうか?
森:これは引っ越す前です。けどマインドとして、曲とかジャケットの世界観みたいなものも緑が多いところに行きたい感じが(笑)出ている気がしますね。
──『Cyanotype』といい、5月リリースの『Alice in apathy』にしてもただ素晴らしくて、聴かれなくてはならない音源だと強く言いたいです。こうしてバンドとしてもソロとしても、生活を変えても音楽を続ける。森さんにとって即ち、音楽とはどんなものになるのでしょう?
森:ミュージシャンにとっては、自分を表現するための音楽を武器にしたり商品にしたり、音楽を道具にしていろいろとやっていると思うんですけど、自分にとっては音を出すことが普通のことになってしまっていて。やりたいことを片っ端から音楽でやっている、それだけのことですね。突き詰めれば本当にやりたいことなのかどうかも怪しくて、できることをただやっている、のかもしれないんですけど。わりと器用なほうではあるので物を作るとか、たとえば(他の仕事で)働くこともできちゃうと思うんです。でも音楽だけは別枠のところにあって、音楽にかける努力みたいなものはないに等しいんですよね(笑)。不思議なもので。
──アルバムのジャケットも森さんが手がけていたり、音楽以外で器用な部分があるのも分かります。ジャケットが猫のモチーフなのは?
森:YOWLLというバンド名の“YOWL”が「動物の呻(うめ)き声」という意味があって。呻き声って猫が威嚇するときの鳴き声っていう感じだな、猫っぽいな、って猫を描きました。でもバンド名に“L”がもう一つ付いてるのは、調べたら海外に“YOWL”っていうバンドがいたので、何かあったら困る(笑)と思って“YOWLL”にしました。
──ではそのバンドについてもお尋ねしていきましょう。結成の経緯から教えてください。
森:とにかくいっぱいライブをしたいなという思いがあったんですよ。ライブをしたい、という思いの元、実際にライブをするってなると30歳頃の年齢って一番ムズいんですよね。仕事をしてて生計を立てながら音楽をやっていたり、それこそ結婚して子どもができて自由に動けなかったりとか、まさしくクリティカル(=危機的、深刻)な年齢でミュージシャンが減っていくんですけど、中には音楽をやりたくてウズウズしてる人たち、俺と同じような思いをしてる人たちもいて。ベースの鈴村(英雄)くんは10代からの知り合いで森良太バンド編成でもお世話になってる仲良しやし、ドラムのアッシー(芦原崇大)はもともと、神戸でuremaっていうバンドをやってたんですけど、解散してからクラゲのように漂ってた(笑)ところを関西のライブハウスの方に“良いドラマーがいるよ!”って紹介してもらって。たまたま音楽に全振りしてる、“バンドやりたいけど、バンドがないねんな”って思ってた3人が出会って始まった感じですね。
──この3人で実際に動き始めたのは?
森:今年の頭から動く準備が始まって春頃からスタジオに入って曲を書いて、4月の終わり頃からライブを始めた感じです。
──長かったコロナ禍から、大きく新しいフェーズに移り変わるタイミングでの始動だったんですね。
森:まさにそうですね。森良太バンド編成をやっているときがコロナ禍の真っ只中で、ものすごく苦しく(ライブをしても)コスト的にもしんどい状況でやってたっていうのもあって。やっている音楽が自分でも素晴らしいと思ってても形になるまではかなり時間がかかることをやっていたし、(このまま)続けることは難しいかもしれないというのは肌で感じていて。だからもっとシンプルに、要素が少なくて自由になれることをやっていかないと、というのが念頭にあったんです。それでコロナが明けるのも見えてきて動けるなというときに、あんまり荷物を持たない形で、YOWLLのほうをすごく動かしたいぞ、って思って。