自分の経験が元になってできている
TOC:この曲はほかと違います。本当にネガ要素一切なしの男女のキュンキュンする楽曲です。学生時代の恋愛って秘密にしなければいけないところもあるじゃないですか。この曲はそんな快成の少年時代の恋愛模様を書いたんです。
――まさに十代の気持ちに戻る楽曲でした。
TOC:実はこの要素は原作には少ないんです。
――確かに薄目ですね。
TOC:脚本を見たりしても想像するには限界があったので、自分の中学生時代を思い出して書いた部分もあります。
――そこが良かったと思います。あまり、原作に忠実にと意識し過ぎてしまうと逆に薄くなってしまいますから。
TOC:本当にその通りだと思います。タイアップ作品だとしても楽曲は自分の経験が元になってできているんです。
――そういった部分が、観客と作品とを繋いでいる部分でもあると思っています。自分の想いものせて良いと思える。個性を全面に出す作品が悪いわけではないですが、観客と制作者の距離が出てしまうのは良い事ではないですから。
TOC:音楽もそうだと思います。聴き手を意識して作るものとそうじゃないものどちらもあっていいんですけど、聴いてくれる人が居ないと作る意味がないので、どちらかというと僕は聴き手を意識して作っています。
――その意識は何か経験があって持たれたのか、もとからそういう意識を持っていたのかどちらですか。
TOC:元々、大衆向けの音楽の方が好きだからなんだと思います。その部分とHIP HOPが混ざったという感覚です。若手で見向きもされない時代に、巻き込む力がないとダメだと考えていたのかもしれないですね。もちろんコダワリもありますが、僕はそこは柔軟だったと思います。
――その視点があるからこそ、音楽監修というお仕事に興味を持たれた部分もあるかもしれませんね。
TOC:本当にいいお仕事をいただけました。誰にも来る仕事ではないので、凄くいありがたかったです。感無量ですね。
彼女への応援歌という裏テーマになっているかもしれない
――完成した映画を観られていかがでしたか。
TOC:とても良かったと思います。分かりやすく、綺麗で、曲もいい(笑)。
――それはもちろんです。
TOC:特に多様性という意味で今このテーマは凄く重要だと思います。
――理想論だけで描かれていないのも良かったです。
TOC:現実も描かれていますね。
――いろいろな理由でその人の個性を受け入れられない人も居るのはしょうがないです。であれば、適度な距離をとることが大事です、受け入れないのはオカシイと押し付けるのもそれは暴力ですから。
TOC:その通りですね。
――快成も那智も相手のことを理解したうえでの行動でしたから。
TOC:快成にシッポ生えていますが、どちらかと言うとしんどいのは那智なんじゃないかという思いもあります。ちょっとだけですけどね。
――那智が物語の中心である部分が多いですから、そう感じるのかもしれないですね。
TOC:なので、楽曲も那智寄りの視点で書いています。
――そうだったんですね。
TOC:はい。
――キャストのみなさんと楽曲に関してお話しされたことはあったのですか。
TOC:那智役の大平采佳さんとは事務所が一緒なので「頑張ってね」という感じで少し話をしました。彼女は初出演・初主演の新人ですし、少し親的な目線もありますね。
――そこもお父さん目線なんですね。
TOC:こんなお父さんでいいのかな(笑)。
――いいお父さんです。
TOC:彼女への応援歌という裏テーマになっているかもしれないですね。
――そんなに父性満タンだったとは思いもしませんでした。
TOC:そういっていただけると嬉しいですね(笑)。これから舞台挨拶もあって、役者のみなさんとも会えるのでいろいろとお話聞きたいです。
――一番いい席で聞けますね。
TOC:そうですね。
――私もこうやっていい話をたくさん聞けて、改めて映画を観返したいと思いました。
TOC:何よりです。何卒宜しくお願い致します。
【音楽情報】Hilcrhymeが劇場⾳楽を担当し3 曲提供。
「走れ」
2023年秋 デジタル配信予定
©佐原ミズ/コアミックス ©2023 映画「尾かしら付き。」