WENDYはメンバー全員が世田谷区在住・18歳と19歳からなる4人組バンド。昨年、ファースト・シングル「Rock n Roll is Back」をリリースし、Spotifyでは国内外7つのプレイリストにイン。動画サイト等のコメント欄も海外からの書き込みが多く、話題が話題を呼び、昨夏の『SUMMER SONIC 2022』出演を経て今年5月は『METROCK 2023』(大阪)への出演が発表に。
大きなステージへの出演もさらに増える予感がする彼ら、今年はまずスタートからMarc Whimore(マーク・ウィットモア)をプロデューサーに迎え、レコーディングを敢行。Marcはジョン・バティステ『ウィー・アー』を手がけ昨年のグラミー賞でアルバム・オブ・ザ・イヤーを受賞した人物なのだが、きっかけはメンバー自身がインスタグラムでDMを送ったこと。興味を持ったMarcに音源を送るなどのやり取りを重ねる中、なんとMarcが来日、レコーディングで生まれた1曲「Pretty in pink」が4月26日に配信でリリースされる。さらにその2日後・4月28日(金)には新宿ロフトで『WENDY Showcase Live 2023』を行なうことが決定。
遡ってインタビュー担当のわたしが初めて彼らのライブを見たのは同じく新宿ロフトで2021年7月に開催した『Teen's Music Camp Supported by Eggs』。あの日から2年も経たない間のこれまでの彼らの動き然り、彼らが単独で新宿ロフトのステージに立つというのもとても感慨深い。"世田谷から世界へ"羽ばたくべくショーケースへの意気込みから近況、Marcとのレコーディングまでメンバー全員に大いに語ってもらった。(interview:高橋ちえ)
ライブをするかのように、ほぼ一発録りのレコーディング
──ちょうど、アナーキーのギタリスト・藤沼伸一さんが監督を務める映画『GOLDFISH』(主演:永瀬正敏)が全国公開中ですが、WENDYメンバーも出演されてましたね!
Skye(vo):あれが実は、バンドを結成して初めての仕事だったんですよ。だから実は俳優としてこの世界に入ってるんですよね、デビューとしては(一同笑)。
──なるほど(笑)、昨年は都内を中心にコンスタントにライブを重ねていましたが、今年は今のところライブ予定が少しスローな印象です。最近はどうされてました?
Skye:練習してます。メンバーの中でも話し合って昔はとにかくスタジオに入ったらひたすら曲をバーっとやってたんですけど、スタジオに入ってただ弾くだけなのも違うなと思って。スタジオに入らない日も次に入るときまでに曲を考えてくるなり個人でやれることをやって、バランス良くやってます。
Paul(g):今は週3日のペースでスタジオに入ってるんですけど、やっぱり自分の家で練習することがすごく増えましたね。個人的に自分が克服しなきゃいけない課題をしっかりやって、スタジオで集まったときにそれを出すっていう感じです。
Johnny(b):僕は家で曲や詞を書くことが多いです、それで集まったときに皆に聴かせて。
──Johnnyは会う度にルックスが変わって良い意味でいつも驚かせてくれますけど、いつの間に髪の毛を真っ黒にしたのですか?(笑)
Johnny:1年半ぐらいずっと金髪だったので、そろそろ落ち着きたいなと思いまして(笑)。黒は安定して落ち着けますね。
──そしてお待たせしました、ドラムに関しては家で練習というのも大変でしょう?
Sena(ds):家ではパッドで練習したりしてますけどうるさくなって大変なので、1人でスタジオに入って練習したりもしてます。動画で自分を録画してみたり、1人でいろいろと工夫しながらやってます。
──今年1月にレコーディングしている現場にお邪魔しましたが、あのレコーディングで音楽への向き合い方がさらに変わったような気がしたりします。レコーディングのときを振り返ってみましょうか。
Skye:Marcといろいろとやってみて、技術面も新しいことを学んだし精神的な面のレコーディングの整え方・曲をレコーディングするときに感情的な部分をどう入れ込むかっていうのを勉強させてもらった感じで。曲によって照明を変えたり、自分とメンバーの気持ちが入るまではレコーディングをしないで休憩したりとか。ほぼ一発録りなんですけど、自分たちが納得いく演奏ができるようなメンタルになるまではゆっくりと進めてくれたり。だから時間がかかっちゃってスタッフとかスタジオの方には迷惑をかけたんですけど(笑)、夜の10時に終わる約束がいっつも0時過ぎちゃって。Marcも熱心な人なので、休憩のときにも音楽のいろんな話もして。みっちり、7曲録りました。
──そのうちの1曲が、4月26日リリースの「Pretty in pink」になるわけですね。他メンバーはどうでした?
Paul:良い意味でレコーディングらしくないな、と。Skyeも言ってたように演奏以外でもフォローアップしてくれたり、(一発録りなのもあるし)緊張感があるんですけどMarcが気遣いをしてくれたり。そもそもMarc自身がかなり音楽好きで俺らの気持ちをよく分かった上での行動をしてくれたので、安心して臨むことができました。技術面では、あんまり日本ではやらないような…ボーカルが別録りとかでなく皆一緒だし、アンプの位置も斜めにしてちょっとドアを開けて演奏したりとか。俺的には“何だこれは!”っていう驚きがたくさんありました。
──「Pretty in pink」もWENDYらしくちゃんとギターソロを入れてますけど、一発録りでプレッシャー的にも大変だったでしょう?
Paul:メチャメチャ大変でした(笑)。ソロ前にかなり緊張しちゃうんですけど、そこもMarcがフォローアップしてくれて“よし、やるぞ!”みたいな感じで。いろいろと話していっぱいコミュニケーションも取って彼自身の音楽的な情熱も感じられてレコーディングができて楽しかったし、本当に時間があっという間でした。
Johnny:MarcはものすごくWENDYと相性が良かったなぁと思います。今回録った7曲以外の曲も一緒にやりたいなというぐらい、頭の柔らかさとか考えも広い人でした。曲のアレンジとか、俺たちだけで作ってたら思いつかない発想がいっぱいあってびっくりでしたね。
Skye:(未発表の)「Chasing a song」っていう曲に関してはちょっと苦戦してたんです。レコーディングに入る前に、俺たちが作ったデモをMarcのアレンジだったらこうなるっていうのをMarc自身がデモにしてくれて。部分的にカットされたりテンポを変えたりしてくれたんですけど、テンポに関しては自分たちのデモの倍の速さになってて人間が弾けないような速さで(一同笑)、レコーディングでMarcが自分で弾いてくれて何回か合わせてテンポを掴んで速さも決めて、ちゃんと人間が弾けるような(笑)。Marcは新鮮な耳で俺らの曲を聴いてくれてるので新鮮なアイディアが出てくる感じで、それを取り入れながら、気に入らないものは“要らない”って言って。
──気に入らないところはちゃんと伝えたりもしつつ?
Skye:例えば、Marcのデモではカットされてたところを“俺はここを残したほうが良いと思う”って言ったり、いろいろありました。でもお互いちゃんと分かり合って、平和にやれましたね。
──バンドとしてやりたいことはちゃんと通しているのですね。
Skye:そうですね、バンドを始めてからは自分たちのやりたいことはちゃんと通すっていう、そこは最初っからそうでしたね。やりたくないことをやらない、でもやらなきゃいけないときもあるのでそういうときはちゃんと話をして、それでもやっぱりやりたくなければやらない、って。
Paul:今回に関しては、Marc自身も俺ら自身も正直に向き合った感じですね、真の音楽好きとして。
──“真の音楽好きとして”っていうのが良いですね。そして英語でコミュニケーションを取りながらレコーディングというのも良き経験になりましたよね。
Sena:俺はまだあんまり話せなくて、Marcと話すときには“Skye、ちょっと来て!”って呼んで(笑)、でしたけど、まずとにかく楽しかったです。ドラム的には全員の目が合いながら演奏するっていうのもこれまであまりなかったし、目が合うっていうのは気持ち良くて。
Skye:タイミングが合うからでしょ?(笑)
Sena:そうそう。Marcのセッティングが家みたいで居心地良かったし、チューニングの仕方が全然違うので、スネアの音も全然違ったし。
──ライブでもドラムはメンバーの後ろだからメンバーの顔も見えなければ、一般的なレコーディングだとドラムだけ別で録ったりすることも多いですものね。
Sena:そうなんですよ、1人で叩いて誰もいなくて結構寂しいんですよ(笑)。これからもレコーディングではこうしたいですね。
Skye:ロックバンドってライブが勝負だけど、それをちゃんとリリースした曲でも伝えられるようになりたいなと。「Pretty in pink」も聴いてたら“ライブにいるような感じがする”って思ってもらえると思うんですよ。Marcとも話してたんですけど、最近の曲は綺麗にハマってるんですよ。でも例えば、ニルヴァーナでもカート(・コバーン)のボーカル以外の楽器を聴くと全部が完璧なわけではない、けどカートの“ウォーッ”っていう生々しさ。WENDYの曲も生々しいというか、人間味が聴こえるっていうのはすごくあると思ってて。
Paul:パソコンを使って音楽もできるけど、バンドは人間じゃないとできないからね。
Skye:ちゃんと人間にしか出せない音っていうのを、ちゃんと表していると思います。
──昨年リリースした楽曲たちと「Pretty in pink」を聴き比べると明らかな違いが分かります。こうなるとMarcとレコーディングした他の楽曲も聴きたくなります!
Skye:目標ですけど、今年中にはアルバムとして…出せたら良いなっていうのはありますね。誰も聴いたことがないようなものを作れたら良いなっていう、ジャンルとかも関係なく“このアルバムはWENDYのアルバム”っていうものを。