『CHILDREN』という言葉をアルバムタイトルに選んだ理由
──そういった状況下で生まれた今回の『CHILDREN』って、また“チルドレン”っていうタイトルが今までのWALTZMOREの作品のタイトルとか、ちょっとこれまでのWALTZMOREの日常と非日常の狭間の世界観よりも入口としては日常を連想させるのに繋がりやすいなって印象として受けました。ただやっぱりWALTZMOREだなって思うのが、子どもたちっていう明確な言葉に思えるのに、実際考えてみるととても抽象的な言葉だなと、それを今回のタイトルにつけるのはやっぱり罪だなって思いました(笑)。
こうのいけ:確かに(笑)。
──WALTZMOREとして活動して間もなく4周年を迎えるタイミングで、みんな大人になった、だからこそイメージ的に“アダルト”とか付けるほうが流れ的にはハマるのかなと思ったのですが、このタイミングであえて“チルドレン”って言葉を選んだ理由ってどういうことなのでしょう?
こうのいけ:純粋に今までで一番ピュアな気持ちで曲を作ったから“チルドレン”って言葉になったのかな思います。僕が考えるアーティストの創作の源って幼い好奇心が30代、40代になってもなおどこかにずっと在り続けられるから生み出し続けられるんじゃないかなと思っていて。創作する上で僕自身の中にあり続ける子どもの部分に今回よりちゃんと向き合って生まれたのが『CHILDREN』です。向き合って、今まで自分が生み出した作品を見返してみると、ずっと誰かに見られている自分というのを気にして作っていたように今の僕には見えて、カッコがつかなくても振り絞って歌ってたときの自分を思い出す立ち返りのきっかけになって、自分が幼い頃に聴いたロックの原体験みたいなのも込められたと思うし、歌詞とか見てもらうと気取ってない言葉を綴ることができたというか。そこを含めて自分たちが幼い子どもになったという意味を込めて、今だからこそ『CHILDREN』という言葉をタイトルに選びました。今回の『CHILDREN』のコンセプト的には僕らの自主レーベル“FLOWERCHILD.”という名前から因んだのもあるんですけど、【子どもたちが旅をしている中で出会った人たちの歌】といった裏テーマがあって、一枚のアルバムの中にいろんな登場人物がいるオムニバスのような作品にしたいなという意味も込められています。
──改めてそういう背景を聞くと、より『CHILDREN』っていうタイトルはすごく深くて、今のWALTZMOREにぴったりなタイトルだなって感じます。さっきも言いましたけど“CHILDREN”って答えではなくて、“CHILDREN”という言葉から答えに辿り着く手引きの意味合いがすごくいいですね。
こうのいけ:今の音楽って簡潔で、意味が一つで伝わりやすいものが求められている時代に移り変わってる気がするんですけど、僕が好きな詩だったり言葉って答えが一つじゃないんですよね。だから僕は聴いてくれた人がそこから「この人は何を考えているんだろう?」って探りたくなるような曲や、作品をこれからも作っていきたいなって思っています。
──こうのいけくんが今言ってくれたように今の時代の音楽って生まれたものが答えで、良いのか悪いのかはさて置き、かつ辿り着くまでの道程もとても近くで見られる時代になったので、今回の『CHILDREN』を初め、WALTZMOREの作品って想像させて、自分の中で芽生えたクエスチョンをライブで答え合わせしに行く。やっぱりWALTZMOREって本当にライブバンドだなって改めて思いました。
こうのいけ:嬉しいですね、ありがとうございます。
──あくまで個人的な感想にはなるのですが、これまでのこうのいけくんの言葉とか見えている世界とか、日常の描き方って曇った空に手を伸ばして散らばった光を掴んで手に残る光から語りかけてくれる音楽や言葉って印象だったのですが、今回の『CHILDREN』はすごく実体がはっきりとあって、そこに向けて手を伸ばして掴んで、ただそれはやっぱり答えではなくて、その先のストーリーを自分で描くのツールというか、「まだこんなことができるのか…!」って思って正直びっくりしました(笑)。
こうのいけ:「エモーショナルだね」って言葉をかけていただくことがとても多くなったなっていう感覚はあります。正直、もう2023年に使わなくなった言葉じゃないですか(笑)。でもすごく言われることが増えました。ここからは推測ですけど、“エモーショナル”って言葉を当時のロックやライブハウスに通っていた人たちが好きになってくれてるのかなって思いました。“美しい”とか“透明感”とか“儚い”とかは昔から言ってもらってえてきていたんですけど、でも付随して“力強い”とか“エモーショナル”とか言葉をかけられることが増えて、とても嬉しいですね。
バンドとして挑戦的な意味合いが強い東名阪のファイナルシリーズ
──WALTZMOREってこれまでのバンドのイメージだけで言うと、クールで汗水一つこぼさないようなバンドってイメージでしたよね。
こうのいけ:僕今27歳なんですけど、この歳になってそういう言葉をかけられるようになって、「普通、逆じゃない?」って思いますけどね(笑)。
──確かに(笑)。そんな現役バリバリのWALTZMOREが今回この『CHILDREN』を掲げて絶賛全国ツアー中(3月1日段階)で、数本回ってみて何か感じたものはありましたか?
こうのいけ:地方ってなるとどうしても都心でのライブみたいにお客さんの数だけ見てしまうと難しい場所ではあるんですが、30分とか35分のステージに向けて何倍もの時間と労力をかけて行くことって、やっぱりこちらとしても全然違うんですよね。しかも今回のツアーは全国各地で僕が好きなバンドや仲良いバンドに出演してもらえることって、少し前だとあり得ないことだったのでその点も今回のツアーはこれまでと違うなっていう感覚がすごく強いです。あとは『CHILDREN』を生み出して今のWALTZMOREなら大丈夫っていう確固たる自信があります。今までのツアーだとどこかで「大丈夫かな?」って思う部分も正直あったんですけど、今回は「今のWALTZMOREなら絶対大丈夫」ってメンバーの共通意識として掲げて回れている部分がこれまでと明確に違うところです。これは僕個人の意見ですが、今回ツアーで出演を決めたくれたバンドさんたちみんな即決で出演快諾してくれて、ツアーで一緒に対バンしてくれるバンドさんを始め、「今のWALTZMOREだったら何かやってくれそう」って思ってもらえてるのかなって勝手に思ってます。ただ『CHILDREN』の新曲たちがめちゃくちゃ難しくて、これはなかなか手強いなっていう段階です(笑)。
──WALTZMOREとしてこれから先、5年後、10年後、どんな音楽をやっていきたいですか?
こうのいけ:直近としてやりたいなと思っていることは、僕1995年生まれなんですけど、物心つき始める1998年〜1999年ぐらいで、そこから音楽というものを認識し始めて2000年ぐらいにTVとかから流れてたROCKとかJ-POPのリアルなノスタルジーを自分らの音楽からリバイバルしていきたいなってなんとなく思ってます。僕のやりたいことって日々ストライクゾーンを外していってる感じはするんですけど、でも続けていけばきっとこの先何かが起こる気がするっていう自信がなぜかあるので、僕のやりたいことには忠実にやっておこうって。だから5年後、10年後の自分が何をやりたがっているのかが見えないのが正直なところです。
──逆にそれってすごく良いことですね、理由はよくわからないけどなんだかこのバンドならやってくれそうって見てると思えるようになりましたし、でもその“理由はよくわからないけど”って一個一個の理由と結果の積み重ねだと思います。
こうのいけ:ガムシャラに、焦らずやっていきたいと思います。
──東名阪のファイナルシリーズも対バンも解禁されましたね!
こうのいけ:今回のファイナルシリーズは4月12日(水)名古屋がpostman、4月13日(木)大阪がclimbgrow、ファイナルの4月29日(土)の東京がアメノイロ。とそれぞれツーマンなんですが、この3組は僕がリスナーとしての原点、バンドを始めてから、そしてバンドを続けてきた今の自分の歴史を辿りつつ、音楽的にリスペクトしている存在をツーマンで呼ばせてもらいました。名古屋と大阪に関してはこれまでWALTZMOREでツーマンライブの経験もないですし、3組とも対バンの回数も多いわけではないので、WALTZMOREとして挑戦的な意味合いが強いです。ただ絶対成功するだろうなっていう謎の自信があります(笑)。どんな音楽でもバンドでもいつかは必ず終わりが来ると思うんですけど、まずは今WALTZMOREを好きでいてくれている人たちにどんな終わりが来るのかを見届けてほしいですね。そういう意味でやっぱりバンド活動って旅だなと。その旅路に一緒に加わるような気持ちで、これからも応援してほしいです。
──これからもたくさんの人にWALTZMOREの音楽で、誰かの物語を彩り続けてください。今日は本当にありがとうございました!