"毒を呑み、愛をうたう"── ジャンルの境界を自由奔放に浮遊する先鋭的なサウンドプロダクションと、圧倒的なライブパフォーマンスで数々のドラマを起こしリスナーを惹きつけてきたChroniCloopが、初の全国流通盤フルアルバム『Joyous』を2023年3月8日にリリースする。アルバムの1曲目を飾る「JOY」は瀬崎裕太(Vo/Gt)が兼ねてから親交があり、憧れの存在であったコヤマヒデカズ(CIVILIAN)をゲストボーカルとして招き、作品が生み出された。
そして3月12日(日)にFlowrers LOFTで行なわれるChroniCloopの自主企画『Full Album Release SPECIAL 2Man Live「Joyous」』ではCIVILIANとのツーマンも決定しており、「JOY」の誕生の経緯から、秘話など今回2バンドのボーカル対談を行なった。(interview:横溝英梨 / LOFT PROJECT)
ChroniCloopの「JOY」にコヤマがゲストボーカルとして参加
──まず今回、3月8日にChroniCloopの初となる全国流通盤『Joyous』発売に向けて、昨年11月25日から4カ月連続配信リリースという活発的な動きをされていたかと思うんですけど、そのうちの1曲「JOY」で今回ゲストボーカルとしてコヤマさんとコラボという形になったわけですが、あらためてどういった流れからコラボの実現に繋がったのかをお聞かせいただけますか。
瀬崎:遡ると、僕が中学生の頃コヤマさん、というかナノウというボカロPとしての出会いから始まるんですけど。その頃からずっと聴いてて、調べたらバンドをやってると出てきて、「あ、バンドもやってるんだ」ってなって。その後、高校生になってずっと聴いてる中でライブを見に行こうと思って、これコヤマさんが覚えてるかわからないんだけど、新宿Marbleの周年イベントか何かで、その当時Lyu:Lyuは「潔癖不感症」っていう曲を出したばっかで。そのライブで初めて本人に会うんだけど、自分の中で衝撃的だったのが、物販に行って俺が「ナノウさん」って呼んだときに振り返った人がいて、それがコヤマさんで、自分の中でずっと好きだった「ナノウさん」がそこにいて、「ナノウさん」って呼んで振り返る人はこの人しかいないんだよなっていうのが衝撃的で。
コヤマ:あははは。
瀬崎:その後に、タワーレコードで1日店員みたいなイベントをやってたの、「潔癖不感症」のときに。それにも行ってサインもらって。で、そこからちょっと空くんだけど、俺たちがサンプラザの地下にあるスタジオでレコーディングとか当時してたんだけど、そしたらLyu:Lyuもここでしてるよって話になって、「そうなんだ」ってのが一個あって、自分の中でこう繋がったところがあったんだけど。その頃、Lyu:Lyuの最後のほうだったと思うんですよね。で、Lyu:LyuがCIVILIANになって、自分たちがたまたまツアーで水戸SONICでライブだったときに、調べたらCIVILIANが水戸ライトハウスでライブやってて、「うわ、隣にいるじゃん!」てなって(笑)。その前に弾き語りもお願いして一緒にやらせてもらったことがあったのでTwitterは相互フォローになってたんだけど、CD渡しに会いに行きたいなと思ってダメもとでDMしたらコヤマさんから返事が来て、渡しに行ってLINEも交換することになって、というのでそこからいっぱい連絡取るようになって、ライブ見に行ったり飲みに行ったり、今に繋がってる感じですね。
──コヤマさんはそのDMが来たときどういう心境でしたか?(笑)
コヤマ:単純にその、自分たちもライブがある中でわざわざDMを送ってくれてっていうこと自体が単純にありがたいなと思ったのと、自分が音楽を始めてから、あんまりこうバンドとしてもホームと呼べるライブハウスがなかったり、直接のバンドの先輩とか後輩がそんなにいない状態でずっと活動していて、根無草なバンドだなとずっと思っていたので、そうやって自分たちの曲だったり、ナノウとして作っている曲に影響されたり「好き」って言ってくれるアーティストとかがいつの間にか生まれてたということが単純に嬉しかったので。なのでDMが来たときもシンプルに嬉しかったという感じでした。
瀬崎:嬉しいな。しかもその、ライトハウスの楽屋に行ったときに、コヤマさんスプラトゥーンやってて。
一同:(笑)
瀬崎:自分もゲームめっちゃやるから、それもなんか「あ、ゲームやってる!」みたいな感じでザワザワして(笑)。
コヤマ:あははは!
ChroniCloop
──そんな出会いから交流が始まり、結構ご連絡は取り合っているって聞きましたが、第一印象と比べお互いに今はどんな関係性、どんな仲なんですか?
瀬崎:僕はもう変わらないというか、本当にずっと夢みたいというか。画面越しにずっと見ていた追いかけてた人だったから、一緒にやるとかこう対談があるとかっていうのはもう本当に昔の自分に自慢できるような感じだし。普通に連絡も取るけど、気持ちはあんま変わってないかなっていう。
──コヤマさんは逆にどうでしょう?
コヤマ:僕も初めてDMをもらって会ったときから印象はずっと変わってないというか、なんていうのかな、相変わらず自分のバンドをチェックしてくれてたりとかっていうのもすごく嬉しいですし、今回こうやってお話いただけたりしたのも、もともと自分がやってる音楽に対する好きな気持ちがあったからこそ多分お話をもらえたんだろうなというのもあるので。もちろん人間としてというか友達として飲みに行ったりというのはありますけど、それと同時にミュージシャンとしても、変わらず好きだなって思ってもらえるような音楽をこれからもやっていきたいなって思えるような感じですね、僕にとっては。
──素敵な関係性ですね。
瀬崎:こういう話をするの、新鮮な感じですね。
コヤマ:あははは。
瀬崎の青春が詰まったコヤマの歌声
──ミュージシャン同士としてずっと繋がってきたからこその、この良きタイミングで私も会わせていただいて、ありがとうございます(笑)。
コヤマ:いやいや。
──お互いの人としてや歌い手、書き手としての魅力、同業者同士としてのお互いの魅力って何だと思いますか?
瀬崎:コヤマさんは声がいいんですよ、唯一無二というか。俺は学生時代に聴きすぎて、自分の声のイメージが「コヤマさんみたいに歌いたい」みたいな、ああいう声で歌いたいという憧れがすごいあって。好きっていうのもあるし、羨ましいみたいな、そう思うくらいの声で。弾き語りのアルバムとかも聴き漁ってるんだけど、今聴いても「あぁ、この人の声がいいんだよなぁ」みたいな、グッとくる。それがコヤマさんの魅力。曲もそうだし、でも曲だけじゃなくて、コヤマさんが歌ってるからいいみたいな、そういうのをすごくいつも感じて聴いてます。
──なるほど。コヤマさんは逆に瀬崎君の魅力的なところはどうですか?
コヤマ:曲を作っている、音楽をやっている人間として、そのときそのときで「今これがやりたい」っていうものを素直にやってるなという印象があって。個人的には、そういう自分の時期とか心境によってアウトプットするものが変わっていく人のほうが僕は好きなので、自分の好みだったりハマってるものだったりというのを素直に出してるなという、すごくいい印象を持ってますね。
──お互いのお話を聞いていると、(それぞれの楽曲の)聴き方や見方も変わる気がしますね。ありがとうございます。そんなお二人が今回コラボということで、「JOY」という曲を瀬崎君がつくって、その曲をコヤマさんと(一緒にやりたい)っていう流れで間違ってないですか?
瀬崎:はい。
──コヤマさんが「JOY」という曲を受け取って、感じたこととかはありますか?
コヤマ:あぁ〜そうですね、こうやって歌詞もメロディもすべて用意してもらった状態で、ゲストとして歌を歌わせてもらう経験って自分の活動の中では本当に数えるくらいしかないので。なので、人が作った歌を歌うことの楽しさと難しさみたいなものを受け取ったときに同時に感じたというか。自分にはない発想のメロディだったり歌詞の言葉選びだったりというのを、自分が歌うときにどうやってそれを消化していこうかなっていうのを考えるのが楽しくもあり、結構難しいところもあったなぁという感じですね。単純に曲自体はすごくかっこよくて、聴いた瞬間に「あ、これは面白そうだな」って思いました。
瀬崎:嬉しい! すごい嬉しい。
「JOY feat.コヤマヒデカズ(CIVILIAN)」レコーディング時のショット
──今回面白いなと思ったのが、「一緒に作った」ではなくてゲストボーカルとしてコヤマさんが参加されてるということで、(既に)ある作品を一緒に色付けていくという工程が斬新で、ある曲がコヤマさんの色になって、でも瀬崎君の色でっていうのが、すごくいい調和感があって素敵な作品だなと私は思うんですけど。実際に歌録りの段階で、それぞれが持ち合わせたイメージを重ねるとなったときに、印象的だった出来事はあったりしますか?
瀬崎:僕はもう完全に、まずそもそも自分がつくったメロディをコヤマさんが歌ってるっていうのがめちゃくちゃ震えた、当日(笑)。コヤマさんの声が鳴るっていうイメージはもちろん作ってる段階であったんだけど、やっぱりどうなるんだろうっていうのがすごいあって。だし、依頼の仕方も敢えて「歌い方が変わってもいいかな」というのを自分がすごく思ってたというか、コヤマさんがいるっていうだけで自分の中では大きいことだったし、むしろコヤマさんらしさが出るなら尚更いいなってすごく思ってたので。だからレコーディングの現場では、現場でも言ったんだけど、自分の青春が詰まった声というか、今まで聴いてきて自分が好きだなって思うところがいっぱい詰め込まれてるような気がして、忘れられないような日になったなぁって今でも思う、衝撃的でした。
──コヤマさんはどうでした?
コヤマ:そうですね、うまく歌えるかな〜と思いながら現場に行って(笑)。もちろん練習とかはしてどういうふうに歌おうかっていうのはなんとなくは考えていたんですけど。実際その場に立って一回自分の思う通りにやってみようと思って、で違ってたら違うって言ってくれるだろうし、とりあえず思うようにやってみようと思ってやりましたね。