ロフトは私たちがライブをリスタートできたハコ
──その後もわりと混在してたよね? 音楽性的には。
倉品:そうですね。まだシティ・ポップだって振り切れてはなくて。
延本:演奏しててもフレイヴァーとしてAORとかは意識してましたけどね。もともと「いい曲を演っていきたい」てのはロックバンド時代から一貫したテーマではあったんですけど。
──ロックバンド時代(笑)。いいね、それ。
延本:あはは(笑)。ロックバンド時代から弾き語り形式だろうと自分たちにとっていいメロディってのにはこだわっていこうってテーマは変わらずあったんですよ。で、ちょうどタイミング的にはコロナ前ですかね。日本のシティ・ポップが世界的にブレイクしてたのは逆に知らなかったんですけど。
──あ、そうなんだ。
延本:私たちは常々聴いてた音楽だったんで。だから思いつきで「シティ・ポップっぽいことやってみたいな」って思ったんですよ。で、やってみたら時代の動き的にもハマって。だからラッキーだったなあと。
──逆に聞きたいのが君たちにとってのシティ・ポップってどのへんなの? おそらく人によって世代によって捉え方が様々なジャンルだと思うんだよね。
倉品:あー、ですよね。僕らにとっては山下達郎さん、角松敏生さんといった80年代中盤に最先端とされていた当時のJ-POPですね。小さい頃から馴染み深い音楽でもあるので、僕らにとってはこのへんの音楽性がシティ・ポップなんですよ。わりと現行のバンドさんたちで「シティ・ポップ」にカテゴライズされてる方々ってルーツがR&Bだったりしますよね? ダンスミュージックとしてのシティ・ポップというか。
──和モノDJの流れでのムーブメントって側面もありますからね。
延本:私たちってそのへんちょっと違うかもしれないなー。
倉品:そういう意味ではシティ・ポップのシーンでもちょっと浮いてるかもね(笑)。
──いいじゃないですか(笑)。悪い浮き方じゃなければオッケーでしょう。年頭にリリースされたニューアルバム(『swing in the dark』)聴かせていただきましたけど、夏の歌あるじゃないですか(「missing summer」)。あの曲にバンドのスタンスが詰まってるなあって思いましたね。1984〜87年ぐらいの当時の日本の音楽シーンでのシティ・ポップなスタイルというか。70年代末期とか80年代初頭じゃないんですよね。そこがこのひとたちの個性なのかなと思って。
倉品:それはもうまさに狙った線ですね。
──あとアルバム聴いてて思ったのは松任谷由実さんの『パールピアス』とか『孔雀』、『VOYAGER』あたりの世界観を思い出したりして。安部恭弘さんとか南佳孝さんのそれこそ80年代初期のアルバムにも通じる匂いというか。
倉品:嬉しいですね。特に南さんのアルバムは昨年めちゃくちゃ聴いてたんで。もともとニューミュージック寄りというか、チューリップに影響受けてるところもあるんで。メロディがしっかりあるっていうのが僕にとっての「いい音楽」の基準だったりするところがあるので。だからでしょうね、特に80年代初期のシティ・ポップと呼ばれる音楽ってメロディや歌詞が真ん中にある気がするので。そういうところから影響を受けたのはあるでしょうね。
──ちなみにその時期の一番好きなソングライターって誰なんですか?
倉品:80年代でいうと林哲司さんですね。
延本:私も林さんなんですよ。中森明菜さんの曲を聴いて「いいな、これ」って思ったら林さんだったし。初期の竹内まりやさんの曲を聴いても林さんの提供楽曲を好きになることが多くて。「2人のバカンス」って曲がほんとに大好きで。あと杏里さんもね、林さんの曲が一番好きだし。カラオケで林哲司しばりで歌うぐらい好きなんですよ。
倉品:僕でいうと杉山清貴&オメガトライブかな。めちゃくちゃ好きなんで。
──杉山さん時代のオメガトライブのシングル曲は全部林さんですからね。
倉品:もうちょっと前の時代ですと、チューリップの財津和夫さんなんですけどね。
──ようやく自分たちのルーツと時代の流れとが上手くリンクしたってことですよね。
倉品:そうなんですよね。だから今年の1月にアルバムを出して、それを聴いてくれたロフトのブッキングの方から久々に連絡いただいたのはほんとに嬉しくて。3月から隔月でロフトに出演させていただく流れもできましたし。
──その流れの集大成が12月26日の共催イベントになるってことですもんね。
倉品:もともと2016年に『ニュー歌謡祭』っていう歌ものバンドを集めたイベントをやっていたので。それ以来、久々に大きなイベントをやってみようかなと。今年ロフトでご一緒させていただいた皆さんを中心にって感じです。
延本:コロナで2年ぐらいまともなライブができない期間が続いてたんですけど、その間にお世話になってたライブハウスがお店を畳んでしまったりしていて。で、いざライブがしたいって思っても「どうしたらいいんだろう?」って感じになっちゃってて。もうほんとにロフトぐらいしか残ってなかったんですよね、私たちが出演したことがあるライブハウスで繋がってるのは。下北沢Garageも閉めちゃってるし。
倉品:そう。僕らが昔お世話になったハコで健在なのはロフトくらいしかなかったので。
延本:そういう意味ではロフトの樋口さんから久々に連絡いただいて嬉しかったし、再会でもあったので感謝しかないんですよ。私たちがライブをリスタートできたハコでもありますしね。感謝の意味も込めてのイベントなんです。