ファンに対する信頼が強い
酒井:そういう部分ももちろんあると思います。
――ファンを大事にするという面でプライベートを出さないという判断をされる方もいるじゃないですか。
酒井:そうですね。それは全然悪い事ではないですからね。
――でも彼女たちは「20代半ばくらいで結婚して子供もいてと考えていたんですよね。」と普通に話されていて、そういう普通の女の子の部分もあるんだなと感じました。芸能界は特殊な世界、むしろ特殊でいることを強いられる世界ですが、そんな中で普通の感覚が消えていないだけでなく隠していない・隠す必要がないというのも凄いですね。
酒井:彼女たち自身のファンに対する信頼が強いからだと思います。アイドルはどうしても疑似恋愛の対象である側面は否定できないと思いますが、ももクロはその部分が薄いと思います。男性ファンも親戚のような目線で彼女たちの成長を応援している人が多いと感じていて、自分の彼女にしたいというよりずっと応援していたいというメンタルの人が多いんじゃないかなと思っています。そういった形で自分たちが受け入れてもらっていることを彼女たちも自覚しているので、素直になれるというのが一番の理由なんじゃないかなと感じています。
――信頼関係の密度・距離感がいいということですよね。ファンとの距離だけでなく、ももクロに関わっているみなさんのチームとしての強さも素晴らしいですね。ビジネスパートナーとして信頼関係を持つということが悪い事ではないですが、ももクロのチームは家族のような信頼関係を築いているようにも見えました。プロの面でもプライベートの面でもどちらもいいバランスのチームなんだなと感じました。
酒井:それが四人の力なんだと思います。関わっているスタッフの皆さんも応援してあげたいという気持ちにさせるんでしょうね。
――だから、スタッフやファンも含めてチームとなっているんですね。
酒井:そうかもしれないですね。
――作中で川上アキラさんが「ももクロはロードムービー」とおっしゃられていたのが印象的でした。
酒井:「長尺の」とおっしゃってましたね。
――長尺というより歴史ですよね。
酒井:この映画もロードムービーのなかの2021年の1シーンのようなものですから。
――そうですね。この映画は2021年を撮ったものですけど、いつ撮ったとしても同じ感想を持てるんだろうなと思っています。この映画の中でも見せている素の表情もいい意味で意外性はないですから。
酒井:本当に裏表がないですから。
――本番ということで気を引き締めることはあっても、観ている姿はずっと正面なんだなと思いました。
酒井:そうそう。まさにその通りです。
――そうなんだろうと思っていた答えを確認させていただいた映画でした。
酒井:そういっていただけて良かったです。
――本作では「彼女たちは果たしてどこにいくのか?」と未来に思いを馳せていますが。
酒井:歩んできた道のりを振り返るのではなく、現在とこれからに視点を向けたドキュメンタリーにしたかったんです。
――酒井監督はこれからどうなっていくと考えられていますか。
酒井:想像できないですね。今のままでいてくれるのかもしれないですし、予想を超えてくれるかもしれない。
――どこに辿り着いても、ももクロなんでしょうね。
酒井:そうだと思います。先ほどおっしゃられていた通り、「変わらないことは変わり続けること」でしょうから変わり続けた結果、変わらないももクロになるんじゃないかと思います。ファンの方はこの作品を観て彼女たちを応援してきたことは間違いじゃなかったと感じていただけると思います。それほどファンじゃないという人たちにはこんな娘たちがいるんだということを発見してもらいたいですね。
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