イメージを共有できるかが大事
――作品の方向性を決める曲ですね。大島さんは「作曲家は職人」ということをおっしゃられていますが、その言葉の意味を改めて感じています。映像音楽は映像と一緒にあることが当たり前なので、曲だけの時・映像だけの時よりも相乗効果を生むものなので、喧嘩をしないようお互いの良さを壊さないように意識されているんだなということが改めて分かりました。
大島:音楽を抑えて台詞を聞かせないといけないシーンもありますが、ここは音楽で聞かせようという部分も必要です。そうしないと、映像の緩急がなくなるとともに音楽の印象もなくなってしまうんです。それではただのBGMになるので、音楽が観終えて記憶に残ることも大事なんです。なので、この音楽だけは映像を無視しても書くぞという曲もあります。
――実際にメインテーマのパンフルートの音は耳に残っています。
大島:実はメインテーマのパンフルートは狙ったわけではなく、監督に聴いてもらうためのスケッチ・デモに近いものだったんです。メインテーマのイメージを伝えるには楽器がいいだろうと考えたときにパンフルートだと伝わるだろうと思って最初は選んだんです。
――最初からパンフルートの曲ではなかったんですね。
大島:やっているうちに一番合うんじゃないかと思い、パンフルートの曲になりました。海外の方にお願いすることも考えましたが、日本の80年代の情景を理解していただける方ということで岩田英憲さんにお願いしました。
――奏者としても当時の空気感を知っている方というニュアンスが必要になってくるんですね。
大島:いろんな国の方と仕事をしますが、作品に合う一番近い演奏をしてくださる方はそれぞれに違うんです。そこは技術というよりイメージを共有できるかが大事になります。特にソロとなるとコミュニケーションが大事になってくるので、そうなるとこの作品では日本のミュージシャンの方が良かったということです。
――そこは実体験があるかどうかで変わってくる部分ですね。
大島:そうですね。
――本作では久田と竹本(健次)は二人とも大人になって夢を叶えています。子供のころからの夢を持ち続けるというのも本作の素敵なメッセージの一つだと思っています。大島さんも好きなことを続けられて夢を叶えられていますが、夢を追い続けることの面白さについても伺えますか。
大島:私は3歳から音楽が好きで今も好きでありがたいことに好きなことを仕事にできていますが、実は子供のころは作曲が嫌いだったんです(笑)。
――そうだったんですか。
大島:ですが、3歳のころから音楽は変わらず好きでいます。好きなことを続けられるというのは幸せだなと思っています。好きなことがあれば辛いことがあっても前に進む力をもらえるので、皆さんも好きなことを持ち続けて生きていければいいなと思っています。
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