素直に入ってくるぐらいカラッと描かれているのが魅力
――最後の別れもさわやかなので、それが観終えた後の気持ちの良さにも繋がっていました。
有里:それが、いまおか監督の力なんだと思います。脚本を最初に読んだ時は引きずってふさぎ込んでしまうんじゃないかと思っていたのですが、完成して観るとカラッと描かれていて素敵だなと思いました。
古瀬:切ないラストではあるんですけど、さわやかな風を吹かせて終わるのがいいですよね。
――そうですね。あのラストから四人で演奏するEDに繋がっていくのも良かったです。
有里:EDの演奏するシーンですけど。あれは、リリコの妄想なんです。四人でいることが凄く心地よくて、四人でバンドができたらなということを思った妄想なんです。
古瀬:だから、あのEDも実は切ないんですよ。
――観方が変わりますね。
有里:ですよね。
――実は四人の中で一番女々しいのはタイチなんですよね。別れたあともリリコに思いを馳せていて。
有里:リリコはもう先に進んでいるけど、タイチはしばらく引きずりそうですよね。
古瀬:あの後がどうなるかは想像が膨らみますよね。タイチは凄く優しい人だと思うので、幸せになってほしいですね。
――四人とも相手のことを正面から受け止めていますから、優しいんですよね。
有里:四人とも寂しさを持っていて、受け止めてくれる存在を求めているんです。そういう満たされていない部分が合致したから一緒にいれたのかもしれないですね。
古瀬:共感や肯定とかを凄く求めているんだと思います。マナミで言うとルミと共感する部分もありましたし、リリコとは違った角度でシンパシーを感じあえたから急速に仲良くなったりしたのかなと思います。
――そうやって四人が交流していく姿とロードムービーというスタイルがあっていたのかもしれないですね。同じ思いを抱え、解消したいという姿が重なっていて、お話を伺ってさらに奥が深いいい作品なんだなと感じています。
有里:素直に入ってくるぐらいカラッと描かれているのが魅力の一つだと思います。
――物語としては大人の青春をさわやかに描いているので、素直に観返せる作品ですね。改めて観返したいなと感じています。
古瀬:世界から見たら凄くちっぽけなこと、何でもないようなことを何でもない事のように描いている映画です。サラッとしたように感じるかもしれませんが、深堀して楽しんでいただける部分もあるので、ぜひいろんなことを感じながら見ていただきたいです。
――観返すことで四人それぞれの視点でどうだったのかというのも楽しめますね。
有里:不器用な男女の姿が描かれているので、きっと四人のうちの誰かに共感できる部分があると思います。生きづらさもある世の中ですが、生きづらさを感じている人に一人じゃないんだと感じてほしいです。
古瀬:私たち四人も帰った後に新たな思いや道があったように、『甲州街道』を観ることで何かを受け取っていただき、みなさんの背中を押せればと思っています。
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