7月17日(日)に新宿LOFTと新宿ACBで開催されるイベント『DOTHEUNITE2022』。コロナ禍で2年ぶりの開催となる今回は、開催を待ちに待っていた若手から中堅までの今勢いのある英詩のメロディックパンクバンドが勢揃いの豪華ラインナップである。
そんな『DOTHEUNITE2022』の主催者であり、STEP UP RECORDS代表、バンドマン(FUCK YOU HEROES、TOYBEATS)、ACBで外注ブッキング制作と多くの顔を持つRYOSUKE氏に、イベントの開催経緯や、コロナ禍での心境に加え、今の若手バンドやACBの魅力について話を聞いた。(interview:柳沢英則 / 新宿LOFT店長)
高く飛ぶために一度しゃがんでみるのも悪くない
──7月17日に新宿LOFTと新宿ACBで往来イベント『DOTHEUNITE2022』が開催されますが、このイベントの始まりや開催の経緯をお教えていただけますか。
RYOSUKE:もともと『BAYSIDE CRASH』っていう晴海埠頭の野外でやってたイベントがあって、それが関東のほうのメロディックパンクの登竜門みたいな感じになってたんです。当時は自分もそのイベントのブッキングを手伝ってて。で、みんなけっこうそこを目指してバンドを頑張ってたんですけど、晴海が震災の地盤沈下やオリンピックなどで使えなくなって、イベント自体もやらなくなっちゃって。結局、東京でそういうパンク、メロディックのこれからのバンドの晴れ舞台的なところがなくなっちゃったんですよね。そんな東京が停滞してる中、名古屋ではRAD系列のライブハウスを運営しつつレーベルもしてる綿谷(RAD CREATION)が『FREEDOM NAGOYA』ってイベントを始めたり、大阪はBRONZEを運営しつつレーベルもやってる渡辺(THE NINETH APOLLO)が『odd number festival』を始めてて。んで、自分が新宿ACBに15年ぶり(?)にブッキングで戻るタイミングで、東京でもライブハウスから先まで道が繋がってるイベントをやろうと思って僕が『BAYSIDE CRASH』を引き継ぐことになって、2018年にSTUDIO COASTで『DOTHEMOSH』っていう名前で始めたのが最初ですね。
──そうだったんですね。引き継いでから、RYOSUKEさんの中でどんなイベントにしていこうとかありましたか?
RYOSUKE:僕世代のバンドのお客さんってこういうライブの時にダイブしたりモッシュしたり、そういうのが当たり前だったんですけど、いつからかそういったダイブとか危険行為をやめてくれっていう人のほうが多くなっちゃってるように感じてて。治安のとても良い感じというか。なんか汗かいて楽しんでるのがおじさんばかりになってしまうのは悲しいなーと(笑)。結局はFUCK YOU HEROESのフロアの感じが好きなので。なのでヤンチャキッズ推奨イベントってことで始めたんですよね。まあ『BAYSIDE CRASH』もそういう感じだったのであの空気を引き継ぎつつ。ってこのお題、今のご時世インタビューで載せるのすげーギリギリの感じですよね…(笑)。
──(笑)時代とともにライブでの規制って多くなってきましたもんね。2018年に『DOTHEMOSH』が始まって、STUDIO COASTのフェスだけでなく各地でイベントツアーなども行なってたと思いますが、2020年にコロナが流行ってイベントが続々と中止になったりして、今回のイベントはコロナ後初の開催ですが、どういった思いで開催に至ったんですか。
RYOSUKE:コロナになってイベントの趣旨的にもそんな中で無理にやるイベントでもないかなと思っていたんですけど、ここ数年ACBで定期的に開催してくれている『現場主義』っていう若手を集めたイベントを手伝っている中で、この息苦しい2年の間でも頑張ってる若いバンドがいて。で、世の中がこんな感じなので歌モノやHIPHOPばかり勢いが出て、英詩のメロディックの出ていく場所がなくなってきてる気がしたので、今回の面子はそこにこだわりつつ、これからのバンドが目指す先の一つの目標としても苦肉の策でしたが、今年は『DOTHEUNITE』っていう名前に変えて開催しよっかなって。なので敢えてちゃんと規制をした上でですけど、凄く高く飛ぶために今回は一度しゃがんでみるのも悪くないかなみたいな感じで。
──若いバンドにとって目指す先があるって大事なことですもんね。僕もすごくそう思いますし、そういったイベントを今回LOFTで開催できるのが嬉しいです。ただ、やはりイベントにしてもライブハウスにしてもバンドにしても、コロナで大きく状況が変わりましたよね。RYOSUKEさん自身、ACBのイベント制作・ブッキングをしていて、コロナ禍の中でライブハウスは大きく変化していかなければならない状況が続いていたと思いますが、この2年半はどのような思いで制作に取り組んでいましたか?
RYOSUKE:なんとなく「コロナとか関係ないじゃん!」って思ってる自分もどこかにいるんですけどね。でも…これはACBっていうよりは僕のレーベルにいるTHE FOREVER YOUNGの話になっちゃうんですけど。彼らのライブは通常モッシュ・ダイブのわちゃわちゃ系だったりするんですけど、たとえばフロアに100人いて、「関係ないじゃん!」って言って通常通り暴れている80人と、そういう気持ちじゃない20人がいたとしたら、THE FOREVER YOUNGはメンバー的に、この20人も取り込まないとライブは成立しないって考え方で活動しているバンドなので、今はこの20人のほうの気持ちを汲んだライブの仕方をしていて。そうじゃないライブを求めるお客さんは「もともとそういうバンドじゃないじゃん!」って来なくなる人もけっこういたりするんですけど。でもだからこそ今は彼らがもともと持っている良いメロディを良い熱量でしっかり届けること大事なのかなと。フロアがわちゃわちゃしてるの込みでしかイケてないバンドではないので。なので変化を受け入れた中で、動かずともどういうふうに感動してもらえる良いステージにしていこうかってことに集中して今は今で彼らは楽しんでライブをやっている感じですね。だから飛び道具に助けられてたFUCK YOU HEROESはあんまりやってないです(笑)。
正解、不正解がない中で変化を受け入れながら目指すもの
──(笑)僕もハードコアとかメロコアのイベントやりますけど、やっぱりなかなか難しいのかなっていうのは強いですよね、このコロナで。
RYOSUKE:正直もう正解、不正解はなくて、これは自分なりの考えってだけなんですけど、僕は今は世の中全体が大流行していた時期ではなくなってきていると思うので、それこそさっき言ったそこの場所にいる100人中の80人賛成、20人反対、の20人がいなくて100人が100%だったらいいと思ってて。チケットを買う時点で選ぶことができると思うので。これはFUCK YOU HEROESの話なんですけど、世の中的にも落ち着いてきていたし、なんならその日は名古屋市の新規感染者は0人だったみたいですけど、去年末に名古屋のライブハウスでマスクはしてくださいってルールはあるんですけど、事前に通常通りのライブをしますって打ち出して。一応、簡易の抗原キッドを僕らが用意して、当日お客さんも僕らもハコのスタッフも入場時に抗原検査をしてその場で陰性だった人だけ入れる、っていうライブをやったときは、キャパMAXが80人だったんですけど、80人が80人みんな同じ気持ちで来ているから、暴れたい人は暴れてるし、見たい人は見てるし、叫びたい人は叫んでるしっていういわゆる普通のライブをして。だから暴れている人に対して「なんで暴れてるんだ?!」っていう感じでもないし、声を出して「わー!!」って言ってても「声出さないでよ!」って言う人もいなくって。その場にいない人の意見は一旦無視ですが(笑)。やっぱそのときが気持ち良かったので、こういう世の中の風潮の中でも関係なくやりたいんだったら事前にアナウンスしてからやるかなって気持ちはあります。だからすごい『DOTHEUNITE』は困ってるんですよ(笑)。あくまでもそういう行為は今回は控えてくださいとは告知してますけど。ワンマンならまだしも18バンド出るんで、お客さんの意見の振り幅もとてもあると思うので。なので、そこもコロナ前のライブハウスの貼り紙同様「危険行為は禁止」ということで。
──確かに、本当に悩ましいところですね…。でも今回の『DOTHEUNITE』の開催って、お客さんはすごく楽しみに待っていたと思うんです。だから、そこの気持ちはみんな一緒だと思うし、もちろん若いバンドが目指すイベントってことでも、バンドも開催を待っていたと思いますし。ところで、『DOTHEUNITE』は若手バンドの登竜門的なイベントとお話がありましたが、最近ライブハウスで活動しているオススメの若手バンドっていますか?
RYOSUKE:オススメでバンド名を挙げるのはちょっと控えますが(笑)。僕のレーベルにいるTHE FOREVER YOUNGとINFOGの現場に行ったりするとこれからのバンドに触れることも稀にあるんですけど、最近だとさっきも話をしたACBで定期的に『現場主義』っていうイベントをやってくれてるイベンター…というかうちのレーベルの元ガチキッズのおかげで全国の若いバンドと触れることができてて。その中にはバンドはライブ的にはまだまだだけど人間的に会話できるハートがある子たちもけっこういるので、今回の『DOTHEUNITE』のBARステージを“現場主義ステージ”ってのにして、『現場主義』で頑張ってるバンドをそのイベントを仕切ってるイベンターに選んでもらって出てもらうようにしてて。まあ今回は英詩のメロディック縛りなので、この5バンドですけど他にも楽しみなバンドいますよ。なのでロフトのBARステージのバンドにも注目してほしいし、これからのACBの『現場主義』ってイベントも気にかけてもらえたら嬉しいなと思います。
──今回のイベントはBARステージのバンドも見どころいっぱいですね! 『DOTHEUNITE』を通して、若い世代のバンドがどんどんシーン盛り上げていってほしいですね。でも最近のバンドって落ち着いてるというか、打ち上げとかもあんまりやらなくなったりしてません?
RYOSUKE:打ち上げについては僕の先輩もそうでしたけど、僕ら世代もだいぶ荒かった時代があったので(笑)。今はいい子が多いなあとは感じますけど。昔ACBでライブをやったときはLOFTの隣にある江戸一っていう居酒屋を使って必ず打ち上げをしていて…何回出禁になったことか(笑)。すげー謝りに行ったもんね。
──(笑)
RYOSUKE:それがないから嫌だっていうことではないですけど、なんかマンパワーを感じる子があまりいないというか。そもそも今、中学や高校に不良っているんですかね? しめるとこはしめてて、どかーんと行くとこは行くみたいな。まあ、おとなしいですよね…。