オリジナルだからこその役得を感じています
――制作での苦労話をお伺いしてきましたが、オリジナルだからこそできた面白さ・良さはありましたか。
安藤:それはLOFT/PLUS ONEを出せたことです。
――ありがとうございます。
安藤:あとは、自分の考えや思いをストレートに出せることですね。そこに怖さがないわけではないですが、オリジナルだからこそ出来る部分でもあり、やりがいも感じています。作品のなかのあらゆる疑問の最終的な答えを自分で作らなければいけない点は、難しさと面白さを兼ね備えた部分になります。
――色んな文化が入る作品という事もあり、音楽も大事な要素なのではと思います。音に関しても安藤監督の中にしかないものですが、音楽制作はどういった形で進めていったのでしょうか。
安藤:音楽に関しては私の好きなものを詰め込ませていただきました。私が “YMO”が好きなこともあってテクノを取り入れた楽曲で、秋葉原が舞台という事もあってチップチューンを意識した楽曲を作っていただいています。OPはロボットアニメらしい楽曲にしていただけましたし、EDはアイドルソングになっています。自分の理想を形にしていただけて、オリジナルだからこその役得を感じています。
――キャストのみなさんにはどういう形で世界観を伝えているのでしょうか。
安藤:スタッフ間での共有で話したことと重複しますが、世代が違うと同じ文化でもメインで触れた作品が違って言語が変わってくるので、現場で身振り手振りを交えて伝えています。
――熱のこもったディレクションがあったということですね。
安藤:そこはスタッフとのやり取りの際に分かっていたことなので、特に大変だったという事はなかったですね。
――キャストを選ぶ際にキャラクターの属性に合わせて、キャラクターとキャストが同じ趣味を持つ方を選ばれたりしたのでしょうか。
安藤:最初は皆さんの属性・趣味を元にして選ぶ事も考えましたが、そうすると演技していただく方の声質・演技とキャラクターが離れてしまうので、声・演技のイメージとキャラクターに合う方という事で選ばせていただきました。
――そうですね。趣味が合うから、キャラクターと声・演技が合うわけではないですからね。
安藤:ただ、杉田(智和)さんだけはキャラクターのオタク要素との親和性もあって選ばせていただいてます。
――この作品をやっていく中で、面白いなと思った文化はありましたか。
安藤:アイドルです。『逆転世界ノ電池少女』に入る前は全然詳しくなかったですけど、今はハマっています。
――安藤監督が感じる、サブカルとは何ですか。
安藤:表現として正しいか分からないですけど、軽薄な宗教ですね。
――いい表現ですね。何となくわかる気がします。
安藤:ハマると宗教という言い回しが良くないような気がしますが、好きになったら押していいし飽きたら次に移ってもいいんです。
――エンタメはそれぐらいでとらえてくれればいいんです。好きな間はいくらでも押していいし、飽きたら無理しなくてもいいですから。
安藤:複数掛け持ちしてもいいわけですから、八百万です。そこが実はこの作品が問うている、根っこの1つになっている部分でもあります。
――期せずして作品の深い部分にふれてしまったということなんですね、詳しいことは放送を観ることで楽しみにしています。
安藤:ぜひ!
――企画スタートから7年走り続けてきたという事ですが、その7年は長かったですか・短かったですか。
安藤:長かったです。オリジナルなので時間はかかるだろうと思っていましたが、ココまでとは想像していなかったです。上江洲さんとご一緒した『クズの本懐』より前から動いていた企画ですから、あとから始まった作品が先に放送されていることになりますね。それでも、こうやって作品として世に出せることになってよかったと感じています。
――そういった不安もあったんですね。放送もこれから続いていく形ですけど、いまの心境は如何ですか。
安藤:放送前に、第1話の先行配信をした際の感想は良かったので、ひとまずホッとしています。とはいえ、TV放送は続いていくので、これからどうなるかの不安は大きいです。今年は劇場作品も含めてロボットアニメが多いんですよね。
――みんなやりたかった・観たかったという事ですよね。ゲームになりますが『ロボット大戦』も30周年を迎えますし。
安藤:この作品もロボットが出ているので、参戦したいですね。そちらからのお誘いもお待ちしています。
――ぜひ、出してもらいましょう。この作品に込められている安藤監督の業を種火にして大きな炎としてみんなで盛り上がってもらって。
安藤:みなさんにその夢を叶えるために後押しをしていただきたいです。とはいえ今は、まずは形になってみなさんに届けられることがまずは嬉しいです。オリジナルを作れたという事でこれを最後の作品にしてもいいくらいです。
――それはやめてください。
安藤:分かりました(笑)。一度、完全燃焼することでさらに一歩前進することが出来ると思っています。まずは全力を傾けた『逆転世界ノ電池少女』制作に邁進していくので、楽しんでいただければありがたいです。
©伽藍堂/「逆転世界ノ電池少女」製作委員会