活動制限がある中での発想の転換
──で、この1年半、有観客ライブ、配信ライブ、ソロのアンプラグドのライブとやりましたよね。
NICKEY:今までやったことないことをやりました。配信はかなり勇気がいったんです。配信ライブっていろんなことが気になるから。正直、通常のライブより疲れちゃう(笑)。
──配信はアーカイブとして何度も観ることができて、私たちは嬉しいけど、本来のライブじゃあり得ないことだしね。
NICKEY:ねぇ。ライブって一瞬だからいいってとこもありますよね。だから最初、あたしは配信をやるのは反対で。でもとにかくやってみようって。今年の初めにウォリアーズのライブをロフトで、その後レコーディングスタジオzizzで『zizzセッション』としてアンプラグドで2回、配信ライブをやったんです。特にレコーディングスタジオでのアンプラグドは初めてで、ステージは狭いしライティングもそんなにできない。その中でどうやってカッコ良く見せられるかなって思ったら、立って歌っちゃったりね。床にも座ったり(笑)。椅子に座って聴かせるのもステキなんだけど自分のキャラじゃないし。立って動いてライブ感を楽しんでもらえたらなって。
──凄く良かったですよ。zizzの雰囲気も、スタジオというより、なんだろ、バーでもないし部屋でもないし独特な空間で。フライヤーやポスターが貼ってあったり装飾もDIYって感じでしたよね。
NICKEY:そうそう。DIYですよ。家からスタンドなんか持ってっちゃってね(笑)。配信をやって良かったのは、全国の人が観られるから。今まで観たことない人、観に行けない人、久しぶりに観る人、そういう人たちに観てもらえるのはとても良かった。今までずっとライブに足は混んでくれてた人もコロナになってライブに行けないだろうしね。活動を制限しなければならなくなって、その中でもいろんなやり方、いろんな方法があるなって。いろんなことを考えてアイディアを出して。発想の転換みたいなことができて、それは良かったなって思ってます。
──得意ですよね、アイディア出すのは。
NICKEY:直感は得意なんです(笑)。
──そしていよいよウォリアーズの新作『TOKYO DOLLS』。ウォリアーズで音源を出そうっていうのは決めていて?
NICKEY:そうですね。去年はソロをリリースしたので今年はウォリアーズだって。メンバーチェンジもしたので、ここで今のウォリアーズを聴いてほしいなって。
──改めてメンバーを教えてください。
NICKEY:ドラムは以前からやってくれているTHE STREET BEATSの牟田昌広。ベースのKATSUJIとは5年ぐらい一緒にやってる。ギターが新メンバーの大口知彦。The STRUMMERSとHOT&COOLのカッコいいギタリストです。この4人と、前回の『ONE FROM THE HEART』で補佐的というか足りないとこを補ってくれる感じでキーボードの礒江俊道が参加してくれたんだけど、今回はもっとガッツリと。礒江さんは配信ライブをやったzizzスタジオの人で、キーボードだけじゃなくエンジニアとしても参加してくれているしレコーディングももちろんzizzで。あたしは昔はウォリアーズにキーボードは必要ないなって思ってたけど、今回はロックンロール・ナンバーがあるのでぜひぜひお願いしますって。
──ロックンロールにはキーボードやビアノは欠かせないもんね。
NICKEY:そうそう。礒江さんのキーボード、凄くいいんですよ、大好きです。
──ロックンロールもある今作は新境地! って思ったんだけど、実は『太陽はひとりぼっち』でも森重さんとロックンロールやってたし。ちゃんと繋がってるんだよね。ずっと変わらずパンクロックでパンククィーンなんだけど、実は常に変化をしている。だからいつも新鮮。
NICKEY:わー、凄く嬉しいです。
──前は必要ないなって思ってたキーボードをだんだん入れるようになったのは、曲が変わっていったから?
NICKEY:そうですね。曲ですよね。オーソドックスなパンクナンバーだったらキーボードは必要ないけど、どんどん広がってきたので。『ONE FROM THE HEART』では大好きなブロンディのような「VELVET LIPS」でキーボードを入れることによってよりポップに、より曲の良さを出せたし。礒江さんに出会えたのが大きいです。礒江さんのキーボードだからっていうのもあるんですよ。
絶対自分に合わないと思った曲を歌える発見
──曲作りのパートナーは主にCROSSさんですよね。
NICKEY:『Talks to Rainbows』(2018年)のときからCROSSの曲が増えて。ソロもそうだしウォリアーズでも。どんどんマッチしていくって実感してる。あたしに合うようにを考えて作ってくれてるなって。ただね、あたしは最初にイヤだなって思った曲は絶対歌いたくない。逆に1回聴いただけでも絶対あたしに合う、絶対歌いたいって曲もある。今回の「CANCEL EVERYTHING~気まぐれにアイシテ~」は最初は絶対イヤ、絶対あたしに合わないって思った曲。今まで全く歌ったことのないタイプだし。
──ミディアムで煌びやかなロックンロールだよね。
NICKEY:そうそう。ちょっとブルース寄りっていうかストーンズっぽいかな。CROSSはあたしにハマるって思ったらしいんだけど。ちょっとこれはあたしには合わない、イヤだって言ってたんです。
──でも完成した。
NICKEY:そうなんです。最初はフフンって適当にメロディを歌ってて、歌詞をつけて。あたしは映画が好きだからアクトレスなイメージを出しつつ自分のイメージも出そうって歌詞を考えてたら、なんかけっこう面白い。バンドで音を出したら、リズム隊がこういう感じは得意なんでバシッとハマった。自分がこういう感じの曲を歌えるのも凄い発見で。
──イヤだからやらないじゃなく、やっていったらどんどん。
NICKEY:どんどん楽しくなっちゃった(笑)。歌詞は映画の中のような感じと、あとあたしの気持ちをそのまま出して。その両面がバシッとハマッてると思います。凄い気まぐれな、勝手な人の歌詞です(笑)。やっばりね、頑張ってるんだけどコロナがあって思うように活動できないし、もう全部イヤ! って(笑)。あたしはだいたいがポジティブなんだけど、もうイヤ! ってときもやっばりあるんですよ。全てキャンセルしちゃいたい! って。そんな気持ちを歌に込めてます(笑)。全てキャンセルするけど許してくれるかな? って(笑)。
──いいねー(笑)。CROSSさんはホントいい曲を作ってくるよね。
NICKEY:ホントいい曲。ソロとウォリアーズ、違うタイプを作ってくるし、あたしのイメージを考えてくれるし。『ONE FROM THE HEART』からどんどんいい感じになってる。『TOKYO DOLLS』は『ONE FROM THE HEART』とまた違ったバラエティがあると思うし。また違うイメージなんじゃないかな。カラフルな感じで。あたしは凄く気に入ってる。
──カラフルなのと同時にタフにもなってる、ロックンロールだからかな。「TOKYO DOLLS~悪徳のジャングル~」はNEW YORK DOLLSからだよね。
NICKEY:もちろん!
──カラフルでポップだけど毒々しさもある。パンクナンバーももちろんあって。1曲目の「BROKEN WORLD」はスピード感あるパンクロック。
NICKEY:今作唯一のパンクナンバーかも。
──イントロからしてカッコイイ。
NICKEY:ね。ちょっとスタークラブ的な。
──攻めの曲だよね。
NICKEY:コロナになって状況が変わってきてるのもあって、壊れた世界観っていうのを出したかったんだ。最初にメロディを聴いたとき、あたしの声質にも凄い合ってるメロディだなって。それをバンドでやったらグングンとパンクナンバーになっていった。凄いいいですよね。
──“PINHEADのポリティシャン ひとり叫んでる”って歌詞が意味深。
NICKEY:政治や権力者に対して言ってる、唯一政治的な、政治的ってことはないか、そういう曲です。あんまりにもあんまりなんでね。