新鮮なものを見つけていけるのがパンクロック
──カッコイイです。5曲目のバラード「MARCH ON THE STREET」も現代社会…、社会というか、現代に生きる私たちを、前へと向かわせてくれるような曲。
NICKEY:そうですね。前作のパンクロックで応援歌を歌いたいって思った「ONE FROM THE HEART」の続きみたいに思っていただければ。路上に生きる人へ向けて…、なんていうかな…、パンクロックって路上にある、路上から生まれたものじゃないですか。ライブハウスだってそう。そういうものを知ってる人たちの行進。CROSSが前々から自分で歌おうって温めてた曲らしいんだけど、これはあたしが絶対歌いたい! って取っちゃったの(笑)。最初に聴いたとき、これはデヴィッド・ボウイの「すべての若き野郎ども」だ! って。
──うんうん。ギターの響きも凄くいい。
NICKEY:そこにさらに、「レイジー・クレイジー・ブルース」とか「ティーンエイジ・キックス」とか自分の好きな曲のタイトルを歌詞に入れたり(笑)。若い頃に出会って胸に突き刺さった音楽とか、自分が大切にしてきたものを守りたいっていう。その大切なものは世間の人には分からないようなものでもね。だからパンクスやロックンローラーたちの行進であり、路上から生まれたものをずっと大切にしてきた人たちの行進の曲。夢から醒めたディヴィッドは街から出ていっちゃったけど、私たちはここに残ってやるべきことがあるでしょっていう。そういう曲。
──泣ける。路上から卒業なんてしないっていう。
NICKEY:そうそう。あと遠藤さんは実際にデモに出かけてたじゃないですか、自分の考えで。そういう遠藤さんのことが思い浮かんできて。たぶん繋がってるんじゃないかって。
──嬉しいなぁ。私は社会が良くなるように願いを込めてデモに行くわけだけど、それって大切なものを守りたいからで、私にとってそれはライブハウスやパンクロックなのかもしれないね。
NICKEY:ですよね。きっと大切なものは同じなんだと思う。
──あとソロの『太陽はひとりぼっち』と「LOVE×HURTS」に収録の「EMPTY STREET~廃墟の街から~」とも繋がってるよね。
NICKEY:そうです。あたしはストリートで歌い続けるんですよ。
──うんうん。で、最後のボ・ディドリー的なギターがブイブイ鳴ってる「BODYGURD」。この曲のクレジットのSatoru Kamiyamaさんというのは?
NICKEY:「BODYGURD」はKamiyamaさんが作った曲なんです。KamiyamaさんはCROSSの後輩で、昔から自分のバンドで歌っている曲なんだそうです。CROSSも大好きな曲で、「大口と歌ったら面白いんじゃない?」って。大口くんは歌えるし、面白いかもって。原曲は男目線の歌詞だから女目線の歌詞に変えて。歌ってみたら演奏も含めてバッチリ。ライブでもやるたびに面白くなっていく。Kamiyamaさんも凄い喜んでくれて。今作も予約して買ってくれたんですって(笑)。
──そうやって曲が繋がって生き続けていくのって、いいですよね~。
NICKEY:ね~。Kamiyamaさんは自分のライブでずっと歌ってると思いますけど、他の人が歌ってくれることを喜んでくれていて。凄いポップになったって。
──同じ曲でもやる人によって変わっていく面白さ。
NICKEY:面白いですよね。今回は新しい発見がいっぱいあったなって。大口くんと掛け合いみたいにして歌うのも発見だし。今までウォリアーズは男性の掛け声みたいなコーラスはあったけど、ボーカルはなかったですから。
──パンクロックの魅力って、そういうとこかもしれないね。
NICKEY:そうそう。シンプルなのに曲によってもいろんな発見があったり、同じ曲でも発見があったり。常に新鮮なんですよ! 新鮮なものを見つけていけるのがパンクロックなのかもしれないです。
──10代の頃と今、同じ曲にも発見があるし。
NICKEY:あります。年齢が変わると違って聴こえるし、メンバーが変わると全然違うし。あたしのボーカルも声の出し方ひとつで変わっていくし。
自分に正直に、無理する必要なんてない
──今作のボーカルも声の出し方がまた違って凄い新鮮。今のメンバーの面白さってどういうところ?
NICKEY:このメンバーでライブをまだ4本しかやってないんですよ。スタジオもそんなに入れなかったし。少しずつしっくり回り始めたなって段階。新作リリースのインタビューでこんなこと言っちゃダメかもね(笑)。でももっと馴染んだらもっと良くなるって確信してるんですよ。一緒にやって間もない大口くんのカッコ良さ、ワイルドさ、凄く好き。ウォリアーズは回数を重ねればどんどん良くなります。だってライブ4回しかやってないのに、かなり凄いんだから(笑)。
──同じ時代を生きてきて同じ空気感を知ってるっていうのは大きいかもね。
NICKEY:ホントにそう。なんか分かっちゃうし、楽しいですよね。
──パンクロックからスタートしたバンドだから、キャリアを重ねたからって落ち着いた音楽に移行しなきゃなんてこともないし。
NICKEY:ホントですよね。やりたいことやればいいし。自分に正直に、無理する必要もないし。
──NICKEYさんはずっと可愛くてカッコイイけど、全然無理してない感じだもんね。ライブはカッコイイけどMCはまったくの自然体だし(笑)。
NICKEY:なんか、MCは素ですよね(笑)。昔、凄い気取ってMCしてた時代があったんです。凄いカッコつけて(笑)。実は人前で喋るのが苦手でMCなんか冗談じゃないって思ってたんだけど、やっぱりやらなきゃいけないし、だから気取るしかなくて。それがもうイヤになっちゃって、もう普通にやっちゃおうって。普段喋ってる感じでいいでしょって(笑)。
──NICKEYさんのライブからは、「みんなこっちおいでよ、みんなも好きに自由にやりなよ」「オシャレしたら楽しいしカッコ良くなるよー」って、別にそんなMCはしてないけど、そういうメッセージを感じます。ライブに来た人、CDを聴いた人に元気になってもらいたいっていうのはあるよね。
NICKEY:うん。それは昔からあります。ただどうやって伝えていいか分からなくて…。そのへんの伝え方っていうか、あたしの気持ちの持ち方がちょっと変わっていったかもしれないです。以前は特に女の子たちに元気になってほしいって思ってて。女の子たち、「もういい年だから」とか言う人が多くて。「私なんて」「私なんて」って言葉がだんだん増えていくような感じがしてね。あたしはそういう女の子たちに、まだ30才ぐらいで何言ってるの? って。全然元気で頑張れるよって伝えたかった。今は、それこそ年のせいなのか時代のせいなのか分からないけど、無理はしなくていいよって伝えたいんですよ。私も無理してないし、女子たちにも無理してほしくないし。
──だから「CANCEL EVERYTHING」ができたんだ(笑)。
NICKEY:そうそう(笑)。昔は、我慢してでもキャンセルしない生き方、それがカッコイイ生き方だって思ってた。今は我慢なんかする必要なくて、イヤなものはイヤって言って全然いいよって。元気になってもらいたいのは変わらないんですけど、なんか、変わってきましたね。自然体がいいなって。周りなんか意識しないで、自分が楽しいことをやればいいよって。
──ホントそう思う。そういう思いが、ちゃんと「CANCEL EVERYTHING」って曲になってるのも素晴らしい(笑)。
NICKEY:でもね、我慢なんかしないし無理なんかしないわって歌ってるのに、大口くんに聴かせたときに、「NICKEYさん、凄い生意気そうに歌ってるじゃないですか」って言われて(笑)。
──やっぱクィーンだから(笑)。でもホント、メンバーが、音がイキイキと楽しんでる感じでとてもいいです!
NICKEY:ライブも楽しそうですよ。あたしも楽しいし、横見るとニコーって笑ってる(笑)。ワクワクしてないとダメですよね。意識的にワクワクするっていうんじゃなくて、ワクワクしちゃう! みたいな。いつまでもそういう感覚でいたいし、今、そういう感覚を凄く実感してるんです。