約3年振りにweb Rooftopに登場となるみるきーうぇいが、東京のホームとして慕っている新宿ロフトにて初のワンマンライブを開催する。
コロナ禍によって思うような活動ができなくても、自身の恋愛を楽曲に昇華することによって「過去」を葬り、悲観的にならずに「未来」を見据え活動している姿はとても前向きで頼もしく感じたインタビューだった。そんな彼女に「今」の心境や新譜「ありがとうクズ男」に関して、大いに語っていただきました。(interview:樋口寛子/新宿ロフト)
「いい加減ライブをやりたい!」「ファンの皆さんにリアルに会いたい!」と思ったのがきっかけとなりました
──早速久しぶりにお話をお伺いさせていただきます。先日、大阪のホームであるライブハウス南堀江knaveで「ありがとうクズ男」大阪編を開催されたばかりですが、こちらはどんなライブになりましたか。
伊集院:ファンの皆さんが、声を出せない代わりにいつも以上に、拍手をしたり拳を上げることで、気持ちをこちらに届けようとしてくれて。こういう状況下ですが、とても一体感のあるライブで盛り上がり嬉しかったです。ワンマンは特に皆でライブを作る感じを思い出せたのでとても幸せでした。
──そして今週には新宿ロフトでの初のワンマンライブ「ありがとうクズ男」東京編が開催されますね。
伊集院:東京でのワンマンも久々なので緊張はあれど、大阪ワンマンでとても前向きなパワーをファンの皆からいただいたので、今からライブが早くしたくてウズウズしています。
──コロナ禍で思うような活動ができない中で2年振りにワンマンを実施するとのことなのですが、「ワンマンをやろう!」と思ったきっかけは何だったのでしょうか。
伊集院:昨年の春に全てのライブがコロナ禍でなくなってしまい、以降ライブが決まっても延期みたいな状況が続いていたので、「いい加減ライブをやりたい!」「ファンの皆さんにリアルに会いたい!」と思ったのがきっかけとなりました。
──今回のワンマンライブのサポートメンバーはどんな方にサポートしていただいているのでしょうか。
伊集院:この1年程、みるきーうぇいのライブサポートしてくださっているドラマーのハマさんとHOWL BE QUIETからベースの松本拓郎君にサポートしていただきます。今回お初なのでとても楽しみです。
──コロナ禍で活動が思うようにできなかった分、今回のツアーで思う存分発揮ができそうですね。
伊集院:アッパー系でせめていけたらなと思います。
暗いだけじゃない。尖っているけどちょっと笑える曲っていうのが今までなかったので、笑ってくれるような曲になればなと思います
──今回の新譜「ありがとうクズ男」はみるきーうぇいにとってどんな1曲になりましたか。
伊集院:世間がこんな感じじゃなければ、最後のサビは皆で大合唱したかったのですが、そうもいかないので心の中で歌ってください、とお願いしていて(笑)。皆笑顔で手を上げてくれているので、切ないけどアッパー系メンヘラらしい清々しい曲になったなと思っています。
──その他、収録されている「全部どうでもいい」「しぬとき傍にいて」はどんな曲でしょうか。
伊集院:「全部どうでもいい」は1回目の緊急事態直前に作った曲です。あの頃、世界が一気に変わってしまいましたが、私の頭の中は案外恋愛でまみれていて、そんなことを率直に歌った曲です。「しぬとき傍にいて」は「ミッドナイトスワン」という映画が大好きになったので、その映画の主人公二人について歌いました。
──収録されている3曲は以前からあった曲ですか。
伊集院:「ありがとうクズ男」は1年位前にできました。「全部どうでもいい」は昨年の夏頃にはできていて。発売するかどうかが中々決まらなかったので、いい加減出すぞという気持ちで出しました。「しぬとき傍にいて」は今年にできた曲です。今までにない感じというか、ミドルバラードみたいな曲が少なかったので、ミドルバラード作りたいなと思って挑戦した曲で新鮮かなと思います。
──ミドルバラードを作ってみようと思ったきっかけは何だったのでしょうか。
伊集院:元々、ミドルバラードの曲を作るのが苦手だったんです。自分的には早い曲が好きなのですぐに作ることができるのですが、ミドルバラードには謎の苦手意識があったので、今までミドルバラードの曲を作っていなかったんです。でもこのご時世、中々外出も思うようにできないし、自分の苦手分野を克服したいなと思ってミドルバラードの曲を作りまくっていた時期がありました。その中でこれが一番良いかなと思った1曲でもあります。
──今までみるきーうぇいを聴いていたお客さんも新しいチャレンジを楽しんでいただけそうな内容ですね。
伊集院:楽しみにしてもらえたら嬉しいです。
──そして「ありがとうクズ男」というタイトルがまた強烈なタイトルですが、こちらは実生活からヒントを受けたのでしょうか。
伊集院:完全に実体験が元になっている曲で、たまにSNSで言っていますけどその総集編というか(笑)。元カレのことがネタになっている感じですが、ただの悪口みたいな感じの曲ではなく、「ありがとう」という気持ちがありきです。でも「あなたクズだったよね」って愛のある曲に仕上がっているので楽しみにしていて欲しいです。
──おっしゃっているように自分も元彼への「感謝」を感じます。新譜をライブでお披露目して皆さんの反響はいかがでしょうか。
伊集院:クズやなーというのをよく言われるので、笑ってくれたら嬉しいな(笑)。そういう点でもちょっと新しいかな。暗いだけじゃない。尖っているけどちょっと笑える曲っていうのが今までなかったので、笑ってくれるような曲になればなと思います。コロナ禍直前に作ったので、最後皆んなで歌いたい所があったのですが、そこはできないので、配信で見る人は家で歌ってくれたら嬉しいし、会場では心の中で一緒に歌ってくれたら嬉しいなと思っています。
──各楽曲、歌詞はスムーズにできましたか?
伊集院:最初、表に出せないようなその人の特徴を全部書きすぎの曲を作って、友達にしか聴かせられない曲を友達とネタで作っていたのですが、これ面白いからちゃんと人に聴かせられる、身内ネタなしのちゃんとしたJ-ROCKで、みるきーうぇいのきれいな曲を作ろうと思ったその昇華版ですね。ネタで作っていた曲が上位互換できた感じでした。
──ジャケット制作はどんなイメージで制作されたのでしょうか。
伊集院:「ありがとうクズ男」という楽曲タイトルでもあるように、ゴミ箱に良い思い出も悪い思い出も全て詰まっている感じで作ったジャケットです。
──「ありがとうクズ男」はミュージックビデオも公開されましたよね。どんなイメージでMVを制作したのでしょうか。
伊集院:監督さんと打ち合わせしたとき、最初はイケメンのクズ男と私が居酒屋で話している映像を予定していたのですが。監督のハレラマさんが「リアルおままごと」の案を持ってきて。終わった恋は確かにおままごとみたいなものだなと共感して、クズ男はあえて出てこないMVになりました。わかりやすいクズ男が出てこないことで切なくなったので正解だったなあと思っています。
前向きに知ってもらえるチャンスだと捉えています
──新譜「ありがとうクズ男」は通販と配信、ライブ会場で販売するとのことですが、最近の音源の広がり方の傾向は、今の言葉で言うと配信でどれだけバズれるかという所がありますよね。それに対してどう思いますか?
伊集院:自分の音源がネットでちょっとだけ広まった所があって。例えば2014年に出した「カセットテープとカッターナイフ」のMVが今でも再生数が高くて。自分がその恩恵を受けているのですが、CDで出会ってくれた人たちのこともとても嬉しかったです。今は店頭で知ってもらえる機会が少なくなってきているので、今までと変わらずネットでも発信して大きくしていきたいなという所が強いですね。
──携帯1台あれば世界の音楽を知れるような環境なので、知ってもらえる機会が増えましたよね。
伊集院:店で知る機会は減ったけれど、寧ろネットで知る機会が増えたと思うし、サブスクも殆どの人が登録している位なので、前向きに知ってもらえるチャンスだと捉えています。
──コロナ禍で活動が制限されてしまったこともあるかと思いますが、どんな風に過ごしていましたか。
伊集院:引っ越しをしました(笑)。以前、住んでいた自宅が音をあまり鳴らせなく、隣の部屋の方から壁ドンをくらっていた程で(笑)。また宅録でやりたいことも多くなり、引越しをして良かったです。引っ越して心境の変化もあり、音もストレスなく鳴らせるのは良かったです。
──コロナ禍になって1年間でみるきーうぇいの活動方針に変化ってありましたか?
伊集院:宅録ができるようになったことが一番良かったなと思っていて。それこそ練習も勿論増えるし、バンドマン的な所でいうと、自分のできていない所やできている所も録音したら分かるし、スタジオで録らなくても良い素材もあるなと思っていて。自宅で良い音が録れる環境を作れたので、もちろん変な音源は出せないですけど、宅録のクオリティを上げられる時代になってきたなと思っています。ライブ的な所で言うと、ライブがコロナ禍前よりできなくなっている中で、自主イベントはやっていきたいし、たまに対バンイベントに出演しつつ、基本的には自分達発信のイベントや配信を含めてやっていきたいなという気持ちは逆に強まりましたね。
──コロナ禍前と今と比べたら、ミュージシャンもある意味、時間ができるじゃないですか。時間ができる分、考える時間ができるので、これからのことを考えるのか、コロナが明けたら「こうしてやる!」や渦中の中で「何ができるか」ということを常に考えていける方、どんどんネガティブになる方と色々といらっしゃるかと思いますが、伊集院さんは、活動方針を前向きに考えている感じですね。
伊集院:我ながら意外だったのですが、今までしんどいことがあった分、あの時こうやって越えたから、あの時辛かったけどどうにか生き延びたから、今回も「どうにか生き延びないと!」という気持ちが強くなっている感じは自分でも感じますね。
──伊集院さんは状況を前向きに捉えて音楽を発信している印象があるので、今回のワンマンツアーの発表を聞いた時は「ついに動くか!」と思い、とても嬉しかったです。
伊集院:こんな世間の状況なので、好き勝手はできない分、「このまま何年続くんだろう」と思った時に、待ちの姿勢じゃ無理やなと思いました。完璧に安全な状況とは言えないですけど、万全の体制で動いていきたいなと思います。